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資料3 (1 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30366.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 会感染症部会(第69回 1/23)《厚生労働省》 |
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資料3
今後の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策における
倫理的法的社会的課題(ELSI)の観点からの提言
武藤香織 1、磯部 哲 2、井上悠輔 1、大北全俊 3
児玉 聡 4、田代志門 5、田中幹人 6、奈良由美子 7、横野 恵 8
1
東京大学医科学研究所、2 慶應義塾大学大学院法務研究科、3 東北大学大学院医学系研究科
4
京都大学大学院文学研究科、5 東北大学大学院文学研究科、6 早稲田大学政治経済学術院
7
放送大学教養学部、8 早稲田大学社会科学部
要旨
1. 本稿の目的は、感染症疫学・医療の専門家有志による「新型コロナウイルス感染症対策
に関する見解と感染症法上の位置付けに関する影響の考察(令和 5 年 1 月 11 日)
」を
踏まえて、倫理的法的社会的課題(ELSI)の専門家有志より提言することである。
2. 公衆衛生倫理の主要な原則のひとつに、
「侵害の最小化(least infringement)」あるい
は「強制的な手段の最小化(least restrictive or coercive means)
」がある。我々は
他者に感染させないための措置の対象から COVID-19 を速やかに外す必要があると考え
る。ただし、入院を必要としうる人への医療を保障することは、些かも疎かにすべきで
はない。
3. COVID-19 に対する措置を減らす過程において、国として許容できる、あるいは許容で
きない死者数の目標設定は、回避すべきである。
4. 面会や付き添いを含む様々な活動が速やかに再開・定着できるよう、実態調査の実施や
指針の策定も含めて、国や都道府県が連携して尽力されることを希望する。
5. 今後、人々が主体的に実践できる健康習慣として推奨できる行動を専門家が取捨選択
したうえで、国や都道府県が明確に啓発を行う必要がある。その際、人々の間で根付い
てきた、現時点で有効とは言い難い対策等について、国や都道府県としても関心を払
い、実態を把握すべきである。こうしたプロセスへの移行に際しては、継続的なリスク
コミュニケーションを行うことが望ましい。
6. 新たな健康習慣を人々に啓発するにあたり、対策の実施を個人の責任のみに帰す事態
に陥らないように留意すべきである。社会的経済的に脆弱な立場に置かれた人々に最
大限の配慮をしたうえで、人々が健康習慣を守りやすい環境整備、体調不良の際に休み
やすく復帰しやすい環境整備に尽力すべきである。
7. 国や都道府県の対策部門において、公衆衛生倫理の訓練を受けた複数の専門家からな
るチームに、定期的にシナリオの立案と助言に平時から参加できる体制の整備を検討
して頂きたい。このような体制と手続きの試行を通じた整備は、リスクコミュニケーシ
ョンにおいても同様に求められる。
1
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今後の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策における
倫理的法的社会的課題(ELSI)の観点からの提言
武藤香織 1、磯部 哲 2、井上悠輔 1、大北全俊 3
児玉 聡 4、田代志門 5、田中幹人 6、奈良由美子 7、横野 恵 8
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東京大学医科学研究所、2 慶應義塾大学大学院法務研究科、3 東北大学大学院医学系研究科
4
京都大学大学院文学研究科、5 東北大学大学院文学研究科、6 早稲田大学政治経済学術院
7
放送大学教養学部、8 早稲田大学社会科学部
要旨
1. 本稿の目的は、感染症疫学・医療の専門家有志による「新型コロナウイルス感染症対策
に関する見解と感染症法上の位置付けに関する影響の考察(令和 5 年 1 月 11 日)
」を
踏まえて、倫理的法的社会的課題(ELSI)の専門家有志より提言することである。
2. 公衆衛生倫理の主要な原則のひとつに、
「侵害の最小化(least infringement)」あるい
は「強制的な手段の最小化(least restrictive or coercive means)
」がある。我々は
他者に感染させないための措置の対象から COVID-19 を速やかに外す必要があると考え
る。ただし、入院を必要としうる人への医療を保障することは、些かも疎かにすべきで
はない。
3. COVID-19 に対する措置を減らす過程において、国として許容できる、あるいは許容で
きない死者数の目標設定は、回避すべきである。
4. 面会や付き添いを含む様々な活動が速やかに再開・定着できるよう、実態調査の実施や
指針の策定も含めて、国や都道府県が連携して尽力されることを希望する。
5. 今後、人々が主体的に実践できる健康習慣として推奨できる行動を専門家が取捨選択
したうえで、国や都道府県が明確に啓発を行う必要がある。その際、人々の間で根付い
てきた、現時点で有効とは言い難い対策等について、国や都道府県としても関心を払
い、実態を把握すべきである。こうしたプロセスへの移行に際しては、継続的なリスク
コミュニケーションを行うことが望ましい。
6. 新たな健康習慣を人々に啓発するにあたり、対策の実施を個人の責任のみに帰す事態
に陥らないように留意すべきである。社会的経済的に脆弱な立場に置かれた人々に最
大限の配慮をしたうえで、人々が健康習慣を守りやすい環境整備、体調不良の際に休み
やすく復帰しやすい環境整備に尽力すべきである。
7. 国や都道府県の対策部門において、公衆衛生倫理の訓練を受けた複数の専門家からな
るチームに、定期的にシナリオの立案と助言に平時から参加できる体制の整備を検討
して頂きたい。このような体制と手続きの試行を通じた整備は、リスクコミュニケーシ
ョンにおいても同様に求められる。
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