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費-1参考2○費用対効果評価専門組織からの意見について (29 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000182080_00013.html
出典情報 中央社会保険医療協議会 費用対効果評価専門部会(第62回 7/12)《厚生労働省》
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(unrelated medical cost) とに分類できる。例えば、高血圧治療に

(a)-2 モデルの構造・仮定に起因する不確実性は、健康状態や治

よって心血管疾患や脳卒中が減少すると、期待余命が延長して、非

療プロセスのモデル化法、モデルに組み込むパラメータの選択、観

関連医療費 ( 例えば認知症や糖尿病、腎透析など ) が増大する可能性

察期間を超えて長期的な予後を予測するための仮定等によって生じ

がある。このような非関連医療費は原則として費用に含めないこと

る。感度分析等によって評価する。

としている。

(b) パラメータの不確実性は、パラメータの推定値が持つ不確実
性によって生じる。例えば、ある臨床試験の中で 100 人中 10 人に
イベントが起こったとしても、真のイベント発生率 ( 母イベント発
生率 ) は 10/100=0.1 ではないかもしれない。このような統計的推測

費用効果分析

に起因する不確実性に対処するには、通常の感度分析に加えて PSA
を行うことも有用である。

医療技術の経済評価は下記の 4 パターンに分類されることが多
い。(a) アウトカムを同等とおいて費用のみを検討する 「費用最小
化分析 (Cost-minimization analysis: CMA)」、(b) QALY 以外の種々の
アウトカム指標 ( 生存年、イベント回避など ) を用いる「費用効果分
析 (Cost-effectiveness analysis: CEA)」、(c) QALY を用いる「費用効
用分析 (Cost-utility analysis: CUA)」、(d) アウトカムを金銭化して評
価する 「費用便益分析 (Cost-benefit analysis: CBA)」。

マッピング
選好にもとづく尺度による測定値が存在しない場合、患者報告ア
ウトカム (PRO) での測定結果から、費用効果分析で使用する QOL

しかし、CMA、CEA、CUA は費用とアウトカムを別々に推計す

値を算出することが有用な場面もある。このような尺度間のスコア

るという点では、同種の分析であるとも考えられるので、本ガイド

変換をマッピング (mapping) と呼ぶ。他のデータが存在しないとき

ラインではこれらの手法をまとめて費用効果分析と呼んでいる。

などにマッピングは次善の手法として許容されうるものの、統計学
的な妥当性などを十分に検討した上で実施すべきである。

不確実性
費用効果分析を行う上では、様々な分析の不確実性 (uncertainty)
がともなう。

メタアナリシス
システマティックレビューで得られた結果を統計的手法によって

異質性 (heterogeneity) は、広義の不確実性の一種であり、比較

統合し、統合した値やその信頼区間を求める手法である。異質性が

対照技術や診療パターン、対象患者等が一意に定まらない状況を指

小さい場合は、固定効果モデル、異質性が大きい場合は変量効果モ

す。これは、次に説明する狭義の不確実性とは異なり、統計学や医

デルやベイズモデルを用いるのが一般的である。結果はフォレスト

療経済学上の技術的な問題ではなく、現実が多様であることに起因

プロットを用いて表記する場合が多い。治療間の対比較ではなく、

する。このような異質性が存在する場合は、複数のシナリオ設定に

複数の治療の比較を行う場合は、ネットワークメタアナリシスと呼

基づいた感度分析を行うことを推奨している。

ばれる手法が用いられる ( →間接比較 )。

狭義の不確実性は、大きく (a) モデルの不確実性と (b) パラメータ
の不確実性に分けることができる。前者のモデルの不確実性は、さ
らに (a)-1 方法論上の不確実性や (a)-2 モデルの構造・仮定等に起因
するものがある。
(a)-1 方法論上の不確実性は、割引率や生産性損失の推計方法、

優位 ・ 劣位

QOL 値の測定方法等が理論的には一意に定められないために生じ

評価対象技術が比較対照技術と比して費用が安く効果も同等以上

る。これらを避けるためには、標準的な共通の手法に従って分析を

である場合、その医療技術は「優位 (dominant)」であるという。一

行うことが重要であるが、割引率など結果に大きな影響を与える場

方、評価技術が比較対照技術と比較して費用が高いが効果は同等以

合には、一次元感度分析によってその不確実性の大きさを評価す

下である場合、その医療技術は「劣位 (dominated)」と呼ばれる。

る。

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