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参考資料3 令和5年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(厚生労働科学特別研究事業)「日本専門医機構における医師専門研修シーリングによる医師偏在対策の効果検証」総括研究報告書 (90 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_46922.html |
出典情報 | 医道審議会 医師分科会 医師専門研修部会(令和6年度第3回 12/13)《厚生労働省》 |
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【補足資料 4】海外調査報告
1.ドイツ
ドイツでは健康保険への加入が義務付け
られており、法定健康保険(SHI)制度、ある
いは民間健康保険(PHI)制度によって提供さ
れる。ドイツの医療制度のガバナンスは複雑
で分権的である点に特徴がある。連邦レベル
と州レベルに分かれ、さらに共同体的な自治
組織も存在する。連邦政府(連邦保健省など)
が全体的な法的枠組みを定める一方、州政府
は病院計画や公衆衛生サービスに責任を持
つ。しかし、SHI 制度では共同体的組織(連
邦共同委員会や連邦保険医協会など)に決定
権が委ねられている。連邦共同委員会
(Gemeinsamer Bundesausschuss:G-BA)には、
疾病金庫、病院、その他提供者の団体が集ま
り、詳細な規則を定めている。連邦共同委員
会は、SHI 制度における共同自治システム内
の最高意思決定機関である。外来医療、歯科
医療、病院医療に関するすべての決定は、連
邦共同委員会の本会議を通じて行われる。ま
た、新技術、医薬品、医療機器を包括給付費
用に含めるかどうかの決定、価格設定と償還
契約の交渉、医療水準 に関する定義も行う。
医療制度における公衆衛生、外来・入院、
長期療養の各セクターは、それぞれ異なる法
律の適用を受け、組織、財政、償還の面で分
離されている。このうち、基本的に、外来は
保険医が担い(保険医診療)、入院は病院が担
う(病院診療)制度となっており、財源等が
異なる。なお、保険医診療は、家庭医診療と
専門医診療とに区分される。
こうした医療制度の下、ドイツの医師免許
については連邦医師法(Bundesärzteordnung:
BÄO)第 3 条に規定されており、連邦政府が
所掌している。同法の第 3 条第 1 項第 4 号で
は、医師免許を取得するため の要件として、
最短 8 か月、最長 12 か月の病院などでの臨
床研修を含む、最低 5,500 時間、最短 6 年間
の大学医学教育の後、同法に定める医師試験
に合格することが必要となっている。大学医
学教育や医師試験等の詳細については、連邦
保健省の医師免許令(ÄApprO 2002)で規定さ
れている。
ドイツでは基本的に診療科を自由に標榜
することはできない。診療科や専門医、重点
診療域などの名称を標榜するためには、州医
師会が卒後教育として行う専門臨床研修を
修了し試験に合格することが求められる。こ
の専門臨床研修は 5~6 年間であり、わが国
- 90 -
の初期臨床研修と専門研修のように分かれ
てはいない。また、専門医取得を考える医師
は、それぞれ希望する病院の診療科に応募す
ることができる。つまり、この段階で医師偏
在対策としての定員枠調整が行われている
わけではない。
専門研修病院の認定や専門医試験の実施、
資格の交付などは各州医師会が担っており、
連邦医師会では学会など各診療科専門団体
との協議等により標準プログラムをとりま
とめ各州医師会に提示するといった取組を
行っている。卒後研修を修了すると医師は医
籍登録を行い、保険医の許可申請を行うこと
ができる(社会法典第 5 編 95 条 2 項)。申請
を受け付けた許可委員会が申請者の開業希
望地について審査し許可を与える。この許可
委員会のメンバーは、州保険医協会、疾病金
庫州連合会及び代替金庫の代表者である。許
可を受けた医師は、当該地域の保険医協会の
会員となることが必要であり、保険医として
保険診療に従事することとなる。
病院の診療科や医師数は病院の裁量で決
定されるが、開業医に関しては需要計画制度
による制約がある。この需要計画は、連邦共
同委員会が定める基準に基づき、州保険医協
会が疾病金庫州連合会及び代替金庫(州委員
会)の同意を得て、策定するものである。需
要計画では、州内の市や郡等に応じた「計画
区域」が設定され、この計画区域と専門医の
診療科に応じて設けられている「医師グルー
プ(Arztgruppen)」ごとに医師と住民の人数の
比率が定められる。実際の比率が定められた
比率の 110%を上回る計画区域は過剰区域と
認定され保険医の許可が制限される。過剰認
定は、州委員会が行う。一方、過少区域とさ
れた計画区域については、保険医協会が当該
地域の開業医に経済的補償を行うなど優遇
措置を設けているが、それでも解消されない
場合は、州委員会が他地域の開業許可制限を
行うよう許可委員会に対し命じなければな
らないとされている。
このように、ドイツでは、医療提供体制の
確保は州政府が責任を負い、各州医師会が卒
後教育として専門研修を行っている。また、
専門研修の定員枠という形ではなく、保険医
として専門医が開業する際に、州保険医協会
と疾病金庫州連合会等が地域での需要計画
に基づき、地域内の需要に応じた供給量の確
保という観点から、医師偏在対策を講じてい
るという点に特徴がある。
1.ドイツ
ドイツでは健康保険への加入が義務付け
られており、法定健康保険(SHI)制度、ある
いは民間健康保険(PHI)制度によって提供さ
れる。ドイツの医療制度のガバナンスは複雑
で分権的である点に特徴がある。連邦レベル
と州レベルに分かれ、さらに共同体的な自治
組織も存在する。連邦政府(連邦保健省など)
が全体的な法的枠組みを定める一方、州政府
は病院計画や公衆衛生サービスに責任を持
つ。しかし、SHI 制度では共同体的組織(連
邦共同委員会や連邦保険医協会など)に決定
権が委ねられている。連邦共同委員会
(Gemeinsamer Bundesausschuss:G-BA)には、
疾病金庫、病院、その他提供者の団体が集ま
り、詳細な規則を定めている。連邦共同委員
会は、SHI 制度における共同自治システム内
の最高意思決定機関である。外来医療、歯科
医療、病院医療に関するすべての決定は、連
邦共同委員会の本会議を通じて行われる。ま
た、新技術、医薬品、医療機器を包括給付費
用に含めるかどうかの決定、価格設定と償還
契約の交渉、医療水準 に関する定義も行う。
医療制度における公衆衛生、外来・入院、
長期療養の各セクターは、それぞれ異なる法
律の適用を受け、組織、財政、償還の面で分
離されている。このうち、基本的に、外来は
保険医が担い(保険医診療)、入院は病院が担
う(病院診療)制度となっており、財源等が
異なる。なお、保険医診療は、家庭医診療と
専門医診療とに区分される。
こうした医療制度の下、ドイツの医師免許
については連邦医師法(Bundesärzteordnung:
BÄO)第 3 条に規定されており、連邦政府が
所掌している。同法の第 3 条第 1 項第 4 号で
は、医師免許を取得するため の要件として、
最短 8 か月、最長 12 か月の病院などでの臨
床研修を含む、最低 5,500 時間、最短 6 年間
の大学医学教育の後、同法に定める医師試験
に合格することが必要となっている。大学医
学教育や医師試験等の詳細については、連邦
保健省の医師免許令(ÄApprO 2002)で規定さ
れている。
ドイツでは基本的に診療科を自由に標榜
することはできない。診療科や専門医、重点
診療域などの名称を標榜するためには、州医
師会が卒後教育として行う専門臨床研修を
修了し試験に合格することが求められる。こ
の専門臨床研修は 5~6 年間であり、わが国
- 90 -
の初期臨床研修と専門研修のように分かれ
てはいない。また、専門医取得を考える医師
は、それぞれ希望する病院の診療科に応募す
ることができる。つまり、この段階で医師偏
在対策としての定員枠調整が行われている
わけではない。
専門研修病院の認定や専門医試験の実施、
資格の交付などは各州医師会が担っており、
連邦医師会では学会など各診療科専門団体
との協議等により標準プログラムをとりま
とめ各州医師会に提示するといった取組を
行っている。卒後研修を修了すると医師は医
籍登録を行い、保険医の許可申請を行うこと
ができる(社会法典第 5 編 95 条 2 項)。申請
を受け付けた許可委員会が申請者の開業希
望地について審査し許可を与える。この許可
委員会のメンバーは、州保険医協会、疾病金
庫州連合会及び代替金庫の代表者である。許
可を受けた医師は、当該地域の保険医協会の
会員となることが必要であり、保険医として
保険診療に従事することとなる。
病院の診療科や医師数は病院の裁量で決
定されるが、開業医に関しては需要計画制度
による制約がある。この需要計画は、連邦共
同委員会が定める基準に基づき、州保険医協
会が疾病金庫州連合会及び代替金庫(州委員
会)の同意を得て、策定するものである。需
要計画では、州内の市や郡等に応じた「計画
区域」が設定され、この計画区域と専門医の
診療科に応じて設けられている「医師グルー
プ(Arztgruppen)」ごとに医師と住民の人数の
比率が定められる。実際の比率が定められた
比率の 110%を上回る計画区域は過剰区域と
認定され保険医の許可が制限される。過剰認
定は、州委員会が行う。一方、過少区域とさ
れた計画区域については、保険医協会が当該
地域の開業医に経済的補償を行うなど優遇
措置を設けているが、それでも解消されない
場合は、州委員会が他地域の開業許可制限を
行うよう許可委員会に対し命じなければな
らないとされている。
このように、ドイツでは、医療提供体制の
確保は州政府が責任を負い、各州医師会が卒
後教育として専門研修を行っている。また、
専門研修の定員枠という形ではなく、保険医
として専門医が開業する際に、州保険医協会
と疾病金庫州連合会等が地域での需要計画
に基づき、地域内の需要に応じた供給量の確
保という観点から、医師偏在対策を講じてい
るという点に特徴がある。