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参考資料2 高病原性鳥インフルエンザウイルスA(H5N1)感染事例に関するリスクアセスメントと対応 (13 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56908.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 新型インフルエンザ対策に関する小委員会(第23回 4/17)《厚生労働省》 |
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国立健康危機管理研究機構
高病原性鳥インフルエンザウイルス A(H5N1)感染事例に関するリスクアセスメントと対応
るような変化は見られない。また、PB2 の M631L 変異があり、これは 2024 年 4 月までに
乳牛から検出されたウイルスの 99%で確認されている哺乳類への適応に関わるアミノ酸変異
と同じもので、ミシガン州の最初のヒト感染例でも確認された(CDC, 2024i)。一方、この配
列にはテキサス州の症例のウイルスに見られた PB2 E627K 変異は確認されなかった(CDC.
2024g)。
2024 年 12 月 13 日に CDC から報告されたルイジアナ州初のヒト感染例で検出された
HPAIV(H5N1)は、D1.1 遺伝子型と特定された(CDC.2024j)。患者口腔咽頭スワブを含
む検体中のウイルスの HA に、ヒト型レセプターへの結合に関与する変異(A134V、 N182K、
E186D)が低頻度で認められた。これらの変異は、ヒトから分離された HPAIV(H5N1) では
まれであるが、これまでにも他国での過去の HPAIV(H5N1)症例で報告されており、たいて
いは重症感染例で見られるものである。このうち、E186D は、患者内で複製される過程で出
現したことが示唆されており、カナダのブリティッシュコロンビア州で重症のヒト症例から採取
された検体中のウイルスでも確認されている(PHAC. 2024)。なお、NA、M、PA 遺伝子に
抗ウイルス薬に対する感受性を低下させる既知の、あるいは疑われるマーカーに関連する変
化は見られなかった(CDC, 2024j)。
2025 年 1 月 28 日に UKHSA から報告された養鶏場従業員 1 例から検出されたウイル
スは、英国の鳥類で流行しているウイルスである DI.2 遺伝子型であり、PB2 の I292V 変異
があった。しかしながら、当該変異は、鳥類から分離された株でもよく見られるものである
(ECDC. 2025b)。
テキサス州で発生したヒトの症例に由来する B3.13 ウイルスを含む Clade 2.3.4.4b の
HPAIV(H5N1)を用いたフェレットの感染実験では、直接接触によるフェレット間の伝播は
様々であるが、呼吸器飛沫を介した伝播はほとんど見られないか、非効率的であることが示さ
れている(CDC. 2024k,Pulit-Penaloza et al.. 2024, Eisfeld AJ et al.. 2024,
Restori KH et al.. 2024,Pulit-Penaloza JA et al.. 2024)。 また、遺伝子型 B3.13
で は な い が 、 チ リ で 重 篤 な 症 状 を 示 し た ヒ ト か ら 分 離 さ れ た Clade2.3.4.4b の
HPAIV(H5N1)は、眼球に感染させたフェレットに重篤な疾患を引き起こし、直接接触によっ
て他のフェレットへもウイルス感染を起こすことができた(Belser JA et al.. 2024)。
オハイオ州で牛から分離された Clade 2.3.4.4b の HPAIV(H5N1) (遺伝子型 B3.13)
をカニクイザル(ヒト感染モデル)の鼻腔内または気管内に接種した動物実験では、それぞれ軽
度および重度の呼吸器疾患を引き起こした。また、経口接種では感染は限定的であり、不顕性
感染にとどまることが明らかになった (Rosenke K et al.. 2025)。
上述した鳥類や哺乳類から分離された Clade 2.3.4.4b の HPAIV(H5N1)に認められる、
哺乳類適応やヒト型受容体への結合能に関与する可能性のあるアミノ酸変異によるヒト感染
への直接的な影響についてはよく分かっていない。現在までのところ、Clade 2.3.4.4b の
HPAIV(H5N1)の効率的なヒトーヒト感染は報告されておらず、ウイルス学的および疫学情
©National Institute of Infectious Diseases, Tokyo, Japan, 2023-2024
©Japan Institute for Health Security, Tokyo, Japan, 2025
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高病原性鳥インフルエンザウイルス A(H5N1)感染事例に関するリスクアセスメントと対応
るような変化は見られない。また、PB2 の M631L 変異があり、これは 2024 年 4 月までに
乳牛から検出されたウイルスの 99%で確認されている哺乳類への適応に関わるアミノ酸変異
と同じもので、ミシガン州の最初のヒト感染例でも確認された(CDC, 2024i)。一方、この配
列にはテキサス州の症例のウイルスに見られた PB2 E627K 変異は確認されなかった(CDC.
2024g)。
2024 年 12 月 13 日に CDC から報告されたルイジアナ州初のヒト感染例で検出された
HPAIV(H5N1)は、D1.1 遺伝子型と特定された(CDC.2024j)。患者口腔咽頭スワブを含
む検体中のウイルスの HA に、ヒト型レセプターへの結合に関与する変異(A134V、 N182K、
E186D)が低頻度で認められた。これらの変異は、ヒトから分離された HPAIV(H5N1) では
まれであるが、これまでにも他国での過去の HPAIV(H5N1)症例で報告されており、たいて
いは重症感染例で見られるものである。このうち、E186D は、患者内で複製される過程で出
現したことが示唆されており、カナダのブリティッシュコロンビア州で重症のヒト症例から採取
された検体中のウイルスでも確認されている(PHAC. 2024)。なお、NA、M、PA 遺伝子に
抗ウイルス薬に対する感受性を低下させる既知の、あるいは疑われるマーカーに関連する変
化は見られなかった(CDC, 2024j)。
2025 年 1 月 28 日に UKHSA から報告された養鶏場従業員 1 例から検出されたウイル
スは、英国の鳥類で流行しているウイルスである DI.2 遺伝子型であり、PB2 の I292V 変異
があった。しかしながら、当該変異は、鳥類から分離された株でもよく見られるものである
(ECDC. 2025b)。
テキサス州で発生したヒトの症例に由来する B3.13 ウイルスを含む Clade 2.3.4.4b の
HPAIV(H5N1)を用いたフェレットの感染実験では、直接接触によるフェレット間の伝播は
様々であるが、呼吸器飛沫を介した伝播はほとんど見られないか、非効率的であることが示さ
れている(CDC. 2024k,Pulit-Penaloza et al.. 2024, Eisfeld AJ et al.. 2024,
Restori KH et al.. 2024,Pulit-Penaloza JA et al.. 2024)。 また、遺伝子型 B3.13
で は な い が 、 チ リ で 重 篤 な 症 状 を 示 し た ヒ ト か ら 分 離 さ れ た Clade2.3.4.4b の
HPAIV(H5N1)は、眼球に感染させたフェレットに重篤な疾患を引き起こし、直接接触によっ
て他のフェレットへもウイルス感染を起こすことができた(Belser JA et al.. 2024)。
オハイオ州で牛から分離された Clade 2.3.4.4b の HPAIV(H5N1) (遺伝子型 B3.13)
をカニクイザル(ヒト感染モデル)の鼻腔内または気管内に接種した動物実験では、それぞれ軽
度および重度の呼吸器疾患を引き起こした。また、経口接種では感染は限定的であり、不顕性
感染にとどまることが明らかになった (Rosenke K et al.. 2025)。
上述した鳥類や哺乳類から分離された Clade 2.3.4.4b の HPAIV(H5N1)に認められる、
哺乳類適応やヒト型受容体への結合能に関与する可能性のあるアミノ酸変異によるヒト感染
への直接的な影響についてはよく分かっていない。現在までのところ、Clade 2.3.4.4b の
HPAIV(H5N1)の効率的なヒトーヒト感染は報告されておらず、ウイルス学的および疫学情
©National Institute of Infectious Diseases, Tokyo, Japan, 2023-2024
©Japan Institute for Health Security, Tokyo, Japan, 2025
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