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資料1-2-1診断基準等のアップデート案(第49回指定難病検討委員会資料) (59 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25626.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第49回 5/16)《厚生労働省》 |
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11 重症筋無力症
○ 概要
1.概要
重症筋無力症(MG)は、神経筋接合部のシナプス後膜上の分子に対する臓器特異的自己免疫疾患で、
筋力低下を主症状とする。本疾患には胸腺腫や胸腺過形成などの胸腺異常が合併する。自己免疫の標的
分子はニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)が 85%、筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)が
5-10%とされている。LDL 受容体関連蛋白 4(Lrp4)を標的とする自己抗体も明らかになってきているが、他
にも陽性になる疾患があり、その意義については検討を要する。臨床症状は骨格筋の筋力低下で、運動の
反復により筋力が低下する(易疲労性)、夕方に症状が増悪する(日内変動)などを特徴とする。主な症状
は、眼瞼下垂、複視などの眼症状、四肢・頸筋の筋力低下、構音障害、嚥下障害で、重症例では呼吸障害を
来す。
2.原因
神経筋接合部のシナプス後膜に存在する分子、AChR や MuSK に対して患者体内で自己抗体が作られ、
この抗体により神経筋伝達の安全域が低下することにより、筋力低下、易疲労性があらわれる。抗 AChR
抗体価と重症度は患者間で必ずしも相関しない。同一患者内では、抗体価と臨床症状に一定の相関が見
られる。軽症例や眼筋型では AChR や MuSK に対する自己抗体が陰性のこともある。本疾患と胸腺異常
(過形成、胸腺腫)との関連性については、まだ十分には解明されていない。
3.症状
眼症状として眼瞼下垂や、眼球運動障害による複視が見られる。四肢の筋力低下は近位筋に強く、整髪
時あるいは歯磨きにおける腕のだるさ、あるいは階段を昇る時の下肢のだるさを認める。四肢筋の筋力低
下よりも、嚥下障害や構音障害が目立つこともある。これらは軟口蓋、咽喉頭筋、舌筋の障害による。多様
な症状が認められるが、一般的に眼症状(眼瞼下垂、複視)が初発症状となることが多い。重症例では呼
吸筋麻痺により、低換気状態となる。
4.治療法
(1)胸腺腫合併例は、原則、拡大胸腺摘除術が治療の第一選択となる。重症例では MG 症状を改善させた
うえで手術を行う。胸腺腫が周囲臓器へ浸潤している場合には、放射線療法や化学療法を併用する。
(2)胸腺腫非合併例における胸腺摘除術の適用は、以下のように考えられる。
抗 AChR 抗体陽性の患者は以下の基準を満たせば、胸腺摘除術を治療の選択肢とする。術式は通常
胸骨正中切開による拡大胸腺摘除術を行うが、内視鏡的手術でも同等の成績を期待できる医療施設
においては、内視鏡的手術を行ってもよい。
A. 全身型である。
B. 罹病期間は 5 年以内であることが望ましい。
(3)抗 MuSK 抗体陽性患者への胸腺摘除術は推奨されていない。
(4)65 歳を越える抗 AChR 抗体陽性患者に対する拡大胸腺摘除術の有効性に関してはまだ十分に明らか
になっていない。
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○ 概要
1.概要
重症筋無力症(MG)は、神経筋接合部のシナプス後膜上の分子に対する臓器特異的自己免疫疾患で、
筋力低下を主症状とする。本疾患には胸腺腫や胸腺過形成などの胸腺異常が合併する。自己免疫の標的
分子はニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)が 85%、筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)が
5-10%とされている。LDL 受容体関連蛋白 4(Lrp4)を標的とする自己抗体も明らかになってきているが、他
にも陽性になる疾患があり、その意義については検討を要する。臨床症状は骨格筋の筋力低下で、運動の
反復により筋力が低下する(易疲労性)、夕方に症状が増悪する(日内変動)などを特徴とする。主な症状
は、眼瞼下垂、複視などの眼症状、四肢・頸筋の筋力低下、構音障害、嚥下障害で、重症例では呼吸障害を
来す。
2.原因
神経筋接合部のシナプス後膜に存在する分子、AChR や MuSK に対して患者体内で自己抗体が作られ、
この抗体により神経筋伝達の安全域が低下することにより、筋力低下、易疲労性があらわれる。抗 AChR
抗体価と重症度は患者間で必ずしも相関しない。同一患者内では、抗体価と臨床症状に一定の相関が見
られる。軽症例や眼筋型では AChR や MuSK に対する自己抗体が陰性のこともある。本疾患と胸腺異常
(過形成、胸腺腫)との関連性については、まだ十分には解明されていない。
3.症状
眼症状として眼瞼下垂や、眼球運動障害による複視が見られる。四肢の筋力低下は近位筋に強く、整髪
時あるいは歯磨きにおける腕のだるさ、あるいは階段を昇る時の下肢のだるさを認める。四肢筋の筋力低
下よりも、嚥下障害や構音障害が目立つこともある。これらは軟口蓋、咽喉頭筋、舌筋の障害による。多様
な症状が認められるが、一般的に眼症状(眼瞼下垂、複視)が初発症状となることが多い。重症例では呼
吸筋麻痺により、低換気状態となる。
4.治療法
(1)胸腺腫合併例は、原則、拡大胸腺摘除術が治療の第一選択となる。重症例では MG 症状を改善させた
うえで手術を行う。胸腺腫が周囲臓器へ浸潤している場合には、放射線療法や化学療法を併用する。
(2)胸腺腫非合併例における胸腺摘除術の適用は、以下のように考えられる。
抗 AChR 抗体陽性の患者は以下の基準を満たせば、胸腺摘除術を治療の選択肢とする。術式は通常
胸骨正中切開による拡大胸腺摘除術を行うが、内視鏡的手術でも同等の成績を期待できる医療施設
においては、内視鏡的手術を行ってもよい。
A. 全身型である。
B. 罹病期間は 5 年以内であることが望ましい。
(3)抗 MuSK 抗体陽性患者への胸腺摘除術は推奨されていない。
(4)65 歳を越える抗 AChR 抗体陽性患者に対する拡大胸腺摘除術の有効性に関してはまだ十分に明らか
になっていない。
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