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資料1-2-7診断基準等のアップデート案(第49回指定難病検討委員会資料) (28 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25626.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第49回 5/16)《厚生労働省》 |
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107 若年性特発性関節炎
○ 概要
1.概要
16 歳未満に発症した、原因不明の6週間以上持続する慢性の関節炎である。自己免疫現象を基盤とし、
進行性・破壊性の関節炎を認め、ぶどう膜炎(虹彩炎)、皮疹、肝脾腫、漿膜炎、発熱、リンパ節腫脹などさ
まざまな関節外症状を伴う。全身症状の強い全身型と、全身症状のない関節型がある。
2.原因
原因は不明であるが、個体側の要因(HLA 等)と環境因子の双方が関与し、自己免疫現象を惹起すると
考えられる。特に全身型では IL-1・IL-18・IL-6など炎症性サイトカインの産生増加が病態の中心と考えら
れ、過剰形成された IL-6/IL6 receptor(R)複合体が標的細胞表面の gp130 に結合し、種々の生体反応を
惹起する。関節局所では炎症細胞の浸潤と炎症性サイトカインの増加が見られ、滑膜増生や関節軟骨や
骨組織の破壊を認める。また、機序は不明であるがぶどう膜炎を合併する例が約5~10%あり、抗核抗体
(ANA)陽性例に認めやすいことから、眼内局所における自己免疫応答の関与が示唆されている。
3.症状
全身型では発症時に強い全身性炎症所見を伴い、数週以上にわたり高熱が持続し、紅斑性皮疹、全身
のリンパ節腫脹、肝脾腫、漿膜炎(心膜炎、胸膜炎)などを認める。
関節型では関節痛、関節腫脹、関節可動域制限、朝のこわばりなど関節症状が主体であるが、時に発
熱など全身症状を伴う。進行すると関節強直や関節脱臼/亜脱臼などの関節変形を伴い、関節機能障害
を残す。長期の炎症は栄養障害や低身長の原因となる。ぶどう膜炎は半数が無症状だが、有症者では視
力低下、眼球結膜充血、羞明、霧視を訴える。関節炎の活動性とは無関係に発症し、ぶどう膜炎が先行す
る例もある。成人期に至った患者の半数に関節変形や成長障害(下肢長差や小顎症)が見られ、日常動作
困難や変形性関節症・咬合不全など二次障害の原因となる。関節機能障害も約半数にみられ、約3%は車
イス・寝たきり状態となる。ぶどう膜炎発症者では、約 10 年で 60%に虹彩後癒着、緑内障、白内障、帯状
角膜変性症などの眼合併症を発症する。また、第二次性徴遅延や卵巣成熟不全も一般発症率より高率と
される。
4.治療法
関節痛に対して非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)や少量ステロイドの短期併用が用いられる。全身型では
副腎皮質ステロイドへの依存性が極めて高く、メチルプレドニゾロンパルス療法など高用量ステロイド治療
や血漿交換が用いられる。関節炎治療の中心は免疫抑制薬(第一選択:メトトレキサート)による寛解導入
であるが、半数は難治性で関節破壊の進行がある。ステロイド抵抗性・頻回再発型の全身型患者では、ト
シリズマブが用いられる。保険適用のトシリズマブ(抗 IL-6 受容体モノクローナル抗体)が用いられる。トシ
リズマブで効果不十分・不耐の患者では同じく保険適用のカナキヌマブ(抗 IL-1 モノクローナル抗体)を用
いる事が出来る。関節型の難治例に対しては、その他の免疫抑制剤抑制薬(タクロリムス、サラゾスルファ
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○ 概要
1.概要
16 歳未満に発症した、原因不明の6週間以上持続する慢性の関節炎である。自己免疫現象を基盤とし、
進行性・破壊性の関節炎を認め、ぶどう膜炎(虹彩炎)、皮疹、肝脾腫、漿膜炎、発熱、リンパ節腫脹などさ
まざまな関節外症状を伴う。全身症状の強い全身型と、全身症状のない関節型がある。
2.原因
原因は不明であるが、個体側の要因(HLA 等)と環境因子の双方が関与し、自己免疫現象を惹起すると
考えられる。特に全身型では IL-1・IL-18・IL-6など炎症性サイトカインの産生増加が病態の中心と考えら
れ、過剰形成された IL-6/IL6 receptor(R)複合体が標的細胞表面の gp130 に結合し、種々の生体反応を
惹起する。関節局所では炎症細胞の浸潤と炎症性サイトカインの増加が見られ、滑膜増生や関節軟骨や
骨組織の破壊を認める。また、機序は不明であるがぶどう膜炎を合併する例が約5~10%あり、抗核抗体
(ANA)陽性例に認めやすいことから、眼内局所における自己免疫応答の関与が示唆されている。
3.症状
全身型では発症時に強い全身性炎症所見を伴い、数週以上にわたり高熱が持続し、紅斑性皮疹、全身
のリンパ節腫脹、肝脾腫、漿膜炎(心膜炎、胸膜炎)などを認める。
関節型では関節痛、関節腫脹、関節可動域制限、朝のこわばりなど関節症状が主体であるが、時に発
熱など全身症状を伴う。進行すると関節強直や関節脱臼/亜脱臼などの関節変形を伴い、関節機能障害
を残す。長期の炎症は栄養障害や低身長の原因となる。ぶどう膜炎は半数が無症状だが、有症者では視
力低下、眼球結膜充血、羞明、霧視を訴える。関節炎の活動性とは無関係に発症し、ぶどう膜炎が先行す
る例もある。成人期に至った患者の半数に関節変形や成長障害(下肢長差や小顎症)が見られ、日常動作
困難や変形性関節症・咬合不全など二次障害の原因となる。関節機能障害も約半数にみられ、約3%は車
イス・寝たきり状態となる。ぶどう膜炎発症者では、約 10 年で 60%に虹彩後癒着、緑内障、白内障、帯状
角膜変性症などの眼合併症を発症する。また、第二次性徴遅延や卵巣成熟不全も一般発症率より高率と
される。
4.治療法
関節痛に対して非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)や少量ステロイドの短期併用が用いられる。全身型では
副腎皮質ステロイドへの依存性が極めて高く、メチルプレドニゾロンパルス療法など高用量ステロイド治療
や血漿交換が用いられる。関節炎治療の中心は免疫抑制薬(第一選択:メトトレキサート)による寛解導入
であるが、半数は難治性で関節破壊の進行がある。ステロイド抵抗性・頻回再発型の全身型患者では、ト
シリズマブが用いられる。保険適用のトシリズマブ(抗 IL-6 受容体モノクローナル抗体)が用いられる。トシ
リズマブで効果不十分・不耐の患者では同じく保険適用のカナキヌマブ(抗 IL-1 モノクローナル抗体)を用
いる事が出来る。関節型の難治例に対しては、その他の免疫抑制剤抑制薬(タクロリムス、サラゾスルファ
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