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(資料5-2)「精神医療審査会について」(田村構成員提出資料) (25 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24234.html |
出典情報 | 地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会(第6回 3/3)《厚生労働省》 |
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Ⅳ.考察
1.自治体間での差異
本調査は、全国都道府県並びに政令指定都市の精神保健福祉センターの審査会事務局 67
ヶ所のうち 62 自治体より調査協力を得ており、回収率は 92.5%ときわめて高く、本報告書
の結果は全国的な現状をほぼ網羅しているものと考えられる。
調査結果より、約半数(51.61%)の自治体において、医療保護入院届等の書類審査にお
いて、事前審査は行わず、当日の審査のみであるという実態が明らかになった。本人の意思
に基づかない強制入院である医療保護入院等の適否を判断する書類審査において、短時間
で限られた人数で膨大な量を審査している実情が推察される。書類審査の総審査件数のう
ち、
「現形態が適切」は 98.64%を占める実情も示されている。また、1合議体で審査する
医療保護入院届の審査件数は年間で 206〜2,921 件、医療保護入院定期病状報告書の審査件
数は 48~4,752 件と自治体間で大きな開きがあることから、入院した地域によって審査の
量・質ともに差異が生じていることも推察される。本調査のプレ調査として協会が調査実施
した調査結果(公益社団法人日本精神保健福祉士協会,2018)の結果においても、こうした
審査会における自治体間での差異が確認されており、本報告書の結果はそれをさらに裏付
けるものでもある。本調査における審査会運営の課題に関する自由記述の中には、各分野の
委員や予備委員の確保の困難さを抱えマンパワー不足にある自治体の状況や、審査件数に
対する委員一人ひとりの負担が高い状況等に苦悩する自治体の状況も記述されていた。ま
た、自治体によっては、審査件数が多く定型的な部分のチェックになりやすい状況や退院支
援の視点を含めた審査については形骸化しやすい状況、機関としての独立性(第三者機能)
が担保されづらい状況などの権利擁護機能の限界や課題を感じている自治体も確認された。
運営上の課題として、「権利擁護の礎」としての審査会の機能や質の担保がされづらい実態
であることは明らかであろう。
審査会の運営にあたっては、
「精神医療審査会運営マニュアル」はあるものの、細かな運
用については各自治体の裁量によるため、先行実施したプレ調査(公益社団法人日本精神保
健福祉士協会,2018)や本調査で確認されたような審査会の業務内容や運営体制・方法、合
議体の体制や権利擁護の機能の面で自治体間での大きな差異が生じている可能性が示唆さ
れる。事前審査の有無や短期再請求への対応についても、各自治体の事務の流れや対応方法
に違いがあり、その「基本」や「前提」としていることが自治体により違う状況も推察され
る。こうした状況を解消するため、精神医療審査会運営マニュアルの見直しも必要であると
考えられる。本報告書における調査結果に関しては、細かな状況等が把握しきれていない可
能性や、やや不明瞭な部分があることを否めない。また、コロナ禍の状況を含め、昨今の情
勢に対応すべき課題についての検討も必要になっている。審査会が権利擁護機能を担保し
発揮するうえで、現行法においては課題も多く、制度の見直しも含めた地域・圏域を超えた
検討が必要であろう。
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1.自治体間での差異
本調査は、全国都道府県並びに政令指定都市の精神保健福祉センターの審査会事務局 67
ヶ所のうち 62 自治体より調査協力を得ており、回収率は 92.5%ときわめて高く、本報告書
の結果は全国的な現状をほぼ網羅しているものと考えられる。
調査結果より、約半数(51.61%)の自治体において、医療保護入院届等の書類審査にお
いて、事前審査は行わず、当日の審査のみであるという実態が明らかになった。本人の意思
に基づかない強制入院である医療保護入院等の適否を判断する書類審査において、短時間
で限られた人数で膨大な量を審査している実情が推察される。書類審査の総審査件数のう
ち、
「現形態が適切」は 98.64%を占める実情も示されている。また、1合議体で審査する
医療保護入院届の審査件数は年間で 206〜2,921 件、医療保護入院定期病状報告書の審査件
数は 48~4,752 件と自治体間で大きな開きがあることから、入院した地域によって審査の
量・質ともに差異が生じていることも推察される。本調査のプレ調査として協会が調査実施
した調査結果(公益社団法人日本精神保健福祉士協会,2018)の結果においても、こうした
審査会における自治体間での差異が確認されており、本報告書の結果はそれをさらに裏付
けるものでもある。本調査における審査会運営の課題に関する自由記述の中には、各分野の
委員や予備委員の確保の困難さを抱えマンパワー不足にある自治体の状況や、審査件数に
対する委員一人ひとりの負担が高い状況等に苦悩する自治体の状況も記述されていた。ま
た、自治体によっては、審査件数が多く定型的な部分のチェックになりやすい状況や退院支
援の視点を含めた審査については形骸化しやすい状況、機関としての独立性(第三者機能)
が担保されづらい状況などの権利擁護機能の限界や課題を感じている自治体も確認された。
運営上の課題として、「権利擁護の礎」としての審査会の機能や質の担保がされづらい実態
であることは明らかであろう。
審査会の運営にあたっては、
「精神医療審査会運営マニュアル」はあるものの、細かな運
用については各自治体の裁量によるため、先行実施したプレ調査(公益社団法人日本精神保
健福祉士協会,2018)や本調査で確認されたような審査会の業務内容や運営体制・方法、合
議体の体制や権利擁護の機能の面で自治体間での大きな差異が生じている可能性が示唆さ
れる。事前審査の有無や短期再請求への対応についても、各自治体の事務の流れや対応方法
に違いがあり、その「基本」や「前提」としていることが自治体により違う状況も推察され
る。こうした状況を解消するため、精神医療審査会運営マニュアルの見直しも必要であると
考えられる。本報告書における調査結果に関しては、細かな状況等が把握しきれていない可
能性や、やや不明瞭な部分があることを否めない。また、コロナ禍の状況を含め、昨今の情
勢に対応すべき課題についての検討も必要になっている。審査会が権利擁護機能を担保し
発揮するうえで、現行法においては課題も多く、制度の見直しも含めた地域・圏域を超えた
検討が必要であろう。
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