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07【参考資料2】肺炎球菌コンジュゲートワクチン(小児用)作業チーム報告書 (26 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40343.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会(第25回 5/23)《厚生労働省》 |
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に難渋することもあり、予後不良の可能性も看過できないレベルにあるため、
発熱した乳幼児の診療においては医療体制への負担や親の心理的な負担が大き
い。また、後遺症が残った場合には、医療および両親の負担は非常に大きいも
のとなる。
年間発生数は髄膜炎 150 例、髄膜炎以外の侵襲性感染症で約 1000 例を超える
と推定されている。しかしながら、これらの数値は診断が確定した例に限られ
ているため、実数よりも過小評価されている可能性がある。またこれらの鑑別
診断には多くの医療資源が投資されているし、毎年確実に累積するであろう後
遺症例に対しては個人的な負担と医療のみならず、介護などの社会的な負担が
その生涯にわたって続くため、その影響は多大なものである。
(2)ワクチンに対する評価
これらの侵襲性肺炎球菌感染症に対する対策として、7 価コンジュゲートワク
チンが使用可能であり、これらの接種者における予防効果および安全性はすで
に至る所で証明されており議論の余地を持たない。実際にすでに定期接種とし
て行っている世界の多くの国々においても、侵襲性肺炎球菌感染症はワクチン
導入後に確実に減尐している。
医療経済性については、諸外国でさまざまな分析が既になされているが、分
析の視点や集団免疫効果の有無、接種費用など、変動要素も多い。本邦におい
ては保健医療費支払者の視点で分析を行った場合、ワクチン接種費が高額であ
るため、ワクチン接種によって削減できる保健医療費を上回る。費用効果分析
を行った場合、感染予防によって期待される QALY の獲得年数が 1 人当たり
0.0004QALY と尐ないため、1QALY を追加で獲得するための費用は 4,500 万円以
上となる。これは、ワクチン代の設定によって大きく結果が異なり、ワクチン
接種費を 1 回 6,090 円まで下げることによって、ワクチン接種費と感染予防に
よって削減される医療費が同額となる。一方、社会の視点で分析を行った場合、
予防接種費よりもワクチン投与によって削減できる費用が上回るため、ワクチ
ン投与によって費用削減が期待できる。この削減費用は集団免疫効果(herd
effect)を考慮するとさらに大きな額となる。
集団免疫効果について、米国から高い接種率により、ワクチン接種をした小
児のみならず、ワクチン接種を行っていない成人の侵襲性感染の減尐が見られ
ている。これはワクチン接種を受けた小児の上咽頭に定着する肺炎球菌が減尐
し、その結果、高齢者の感染も減尐したと考えられている(集団免疫効果)。
加えて、7 価コンジュゲートワクチンには、侵襲性感染防止効果に加え、肺炎、
中耳炎に対する効果も見られている。また、従来、発熱した児に対して細菌性
髄膜炎などの重症感染症への不安から実施される傾向のあった抗菌剤の過剰投
25
発熱した乳幼児の診療においては医療体制への負担や親の心理的な負担が大き
い。また、後遺症が残った場合には、医療および両親の負担は非常に大きいも
のとなる。
年間発生数は髄膜炎 150 例、髄膜炎以外の侵襲性感染症で約 1000 例を超える
と推定されている。しかしながら、これらの数値は診断が確定した例に限られ
ているため、実数よりも過小評価されている可能性がある。またこれらの鑑別
診断には多くの医療資源が投資されているし、毎年確実に累積するであろう後
遺症例に対しては個人的な負担と医療のみならず、介護などの社会的な負担が
その生涯にわたって続くため、その影響は多大なものである。
(2)ワクチンに対する評価
これらの侵襲性肺炎球菌感染症に対する対策として、7 価コンジュゲートワク
チンが使用可能であり、これらの接種者における予防効果および安全性はすで
に至る所で証明されており議論の余地を持たない。実際にすでに定期接種とし
て行っている世界の多くの国々においても、侵襲性肺炎球菌感染症はワクチン
導入後に確実に減尐している。
医療経済性については、諸外国でさまざまな分析が既になされているが、分
析の視点や集団免疫効果の有無、接種費用など、変動要素も多い。本邦におい
ては保健医療費支払者の視点で分析を行った場合、ワクチン接種費が高額であ
るため、ワクチン接種によって削減できる保健医療費を上回る。費用効果分析
を行った場合、感染予防によって期待される QALY の獲得年数が 1 人当たり
0.0004QALY と尐ないため、1QALY を追加で獲得するための費用は 4,500 万円以
上となる。これは、ワクチン代の設定によって大きく結果が異なり、ワクチン
接種費を 1 回 6,090 円まで下げることによって、ワクチン接種費と感染予防に
よって削減される医療費が同額となる。一方、社会の視点で分析を行った場合、
予防接種費よりもワクチン投与によって削減できる費用が上回るため、ワクチ
ン投与によって費用削減が期待できる。この削減費用は集団免疫効果(herd
effect)を考慮するとさらに大きな額となる。
集団免疫効果について、米国から高い接種率により、ワクチン接種をした小
児のみならず、ワクチン接種を行っていない成人の侵襲性感染の減尐が見られ
ている。これはワクチン接種を受けた小児の上咽頭に定着する肺炎球菌が減尐
し、その結果、高齢者の感染も減尐したと考えられている(集団免疫効果)。
加えて、7 価コンジュゲートワクチンには、侵襲性感染防止効果に加え、肺炎、
中耳炎に対する効果も見られている。また、従来、発熱した児に対して細菌性
髄膜炎などの重症感染症への不安から実施される傾向のあった抗菌剤の過剰投
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