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岡部先生資料(レポート) (12 ページ)

公開元URL https://www.lifescience.mext.go.jp/2022/10/4041102.html
出典情報 ライフサイエンス委員会 脳科学作業部会(第4回 11/2)《文部科学省》
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3-3. 大規模情報処理・シミュレーションによる情報処理モデル
マーモセット全脳レベルでの回路情報がデータベース化されることで、最も大きな期待が
かかるのが、数理科学・計算機科学を活用した情報処理モデルの開発である。革新脳事業で
も研究開発のゴールとして設定し、複数の数理研究グループが技術開発、モデル構築、モデ
ルを応用した回路活動の予測等について研究を進めた。このような研究は個別テーマの達
成という観点からは十分な成果を得たが、複数の研究グループ間の連携による統合的な全
脳モデルの提唱には到達していない。脳研究においては全脳レベルでの情報処理モデルの
開発についてはこれまでも試みがなされているが、多くは理論的な枠組みから出発したも
のであり、必ずしも動物の脳神経回路のデータを基盤としたモデルとはなっていない。国外
の大型脳研究事業においても、網羅的・包括的な脳データの取得がいずれも目標として掲げ
られているが、開始後 10 年を経過して全脳レベルでの情報処理モデルの提案には至ってい
ないのが現状である。今後の国内の戦略的脳研究においては、数理科学、計算機科学、デー
タサイエンスを活用した情報処理研究が必須の要素となることは当然である。一方でゴー
ル設定とそれに至る研究のマネージメントについては十分な検討が必要になる。

脳研究ではゲノム研究が扱う遺伝子情報とは異なり、得られるデータ・情報が複雑・多様で
あり、まずデータサイエンスによる一次データの処理、加工、集積などの過程を高度化・効
率化する必要がある。次にデータを統合し、モデル開発に必要となる計算原理やハードを提
供するための計算機科学の適用が必要である。この二つのステップが解決したとしても、最
終的に脳の情報処理を説明するには数理科学者が新しいモデルを提案する必要があり、こ
のような多階層の研究アプローチの中でどの部分に焦点を当てて戦略目標を設定するのか
が事業の成否に大きく影響する。アメリカの Brain Initiative は一細胞レベルでの遺伝子発
現データの収集とデータベース化に多くのエフォートを割く方向に舵を切っているが、こ
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