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岡部先生資料(レポート) (13 ページ)

公開元URL https://www.lifescience.mext.go.jp/2022/10/4041102.html
出典情報 ライフサイエンス委員会 脳科学作業部会(第4回 11/2)《文部科学省》
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れは「技術開発‐データ収集‐データサイエンスを活用した情報統合」をつなぐ研究開発が
既存の方法論の枠内で実現が可能であることと、得られたデータが蓄積型のリソースとな
ることを考慮した戦略であろう。一方で Brain Initiative ではデータ蓄積の次のステップで
ある「異なるモダリティーの脳情報の統合とモデル開発」に向かう戦略は明確でない。ゲノ
ム研究の様に得られたデータが一次情報として医学研究に直接応用できる場合とは異なり、
脳の遺伝子発現データ情報を直接精神・神経疾患の病態に連結することはできず、未解決な
課題として残ってしまう可能性が高い。一方でEUが主導する Human Brain Project は多様
なモダリティーの脳情報にアクセスすることが出来る統合型のデータベース EBRAINS を
大きな目玉としている。Human Brain Project では脳情報のデジタル化とそれを集約したデ
ータ基盤構築を当初より一つの目標としており、EBRAINS はその実現を目指す活動となっ
ている。この活動は Brain Initiative よりも多様な脳情報の統合とその人工知能研究への応
用を目指している点で単なるデータサイエンスの応用を超える内容となっているが、脳情
報処理モデルの提案に至るロードマップは明確ではない。
以上のアメリカとEUの大型脳研究の現状を踏まえると、日本における全脳レベルの神経
回路情報を活用した研究では、データ取得の過程から最終ゴールに至るまでのロードマッ
プをより詳細に規定した上での研究事業とすることが望ましい。より具体的にはもし革新
脳事業で得られたデータ、リソースを基盤とするのであれば、大脳皮質、特に前頭葉の神経
回路データを用いて、特定の行動タスクにおける神経細胞活動を大規模に記録し、メゾスケ
ールでの神経回路活動が表現する情報の解読を目指すべきであろう。
「回路構造‐タスクと
関連付けられた大規模細胞活動‐細胞活動を説明する情報処理モデルの構築」という具体
性のある研究課題を設定し、研究当初から動物実験で得られるデータを数理科学者、データ
サイエンティストが解析・評価してフィードバックする体制を形成することが必須となる。
このような研究のサイクルが生まれれば、データ取得とモデル構築の間の連携も加速する。

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