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岡部先生資料(レポート) (15 ページ)

公開元URL https://www.lifescience.mext.go.jp/2022/10/4041102.html
出典情報 ライフサイエンス委員会 脳科学作業部会(第4回 11/2)《文部科学省》
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のメリットとデメリットを認識する必要がある。1990 年代にアルツハイマー病のアミロイ
ド斑を構成するペプチドの前駆体としてアミロイドβ前駆体タンパク質(APP)が同定され、
APP とその分解酵素であるγ-secretase のサブユニットであるプレセニリン 1 および2が
家族性アルツハイマー病における原因遺伝子として同定された事から、アミロイドβの産
生と蓄積過程がアルツハイマー病の根本病態であるとする仮説が有力視されて APP の分解
過程や分解産物の除去に介入する治療方法が多く提案されてきた。このような治療方法に
は一定の効果がある可能性が高い一方で、単一の治療戦略の限界を指摘する意見も多い。ア
ルツハイマー病に関連する多様な危険因子をより広い視野から動物モデル等を活用して研
究する事が近年重視されるようになっている。更に変性蛋白質と神経変性疾患との関係も
単純な一対一対応ではない事も明らかになりつつある。脳の炎症・免疫反応、代謝シグナル、
蛋白質分解系、髄鞘の維持、グリアや血管の関与といった要素に着目した病態モデルの提案
とそれに基づいた基礎的研究の推進も必要である。複数の病態に関与する因子の相互作用
と分子パスウェイ、その時間的遷移過程を記述し、不可逆的な状態に移行するメカニズムを
抽出することが求められる。

精神疾患の研究においては統合失調症、双極性障害、大うつ病、発達障害といった病型分類
を「精神疾患の分類と診断の手引き(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders ;
DSM)」に基づいて行うことが標準化しているが、この基準は病因を用いずに操作的な手法
により精神疾患のカテゴリーを規定するという点でその長所も存在する一方で、このカテ
ゴリーを絶対的な基準と見なして生物学的指標を探索していく事の妥当性は必ずしも担保
されていない。NIMH が 2008 年に提唱した NIMH Research Domain Criteria (RDoC)では
DSM 分類にこだわらずに5つの機能ドメイン(不快の感情価、快の感情価、認知、社会性、
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