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岡部先生資料(レポート) (8 ページ)

公開元URL https://www.lifescience.mext.go.jp/2022/10/4041102.html
出典情報 ライフサイエンス委員会 脳科学作業部会(第4回 11/2)《文部科学省》
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は、J-PPMI で取得された縦断的臨床データの解析によりパーキンソン病発症の予測に寄与
する脳内の機能結合を機能的 MRI データから抽出する解析が進展し、被殻-小脳間の機能結
合などが候補マーカーとして同定されつつある。これに対して中核拠点においてはパーキ
ンソン病モデルマーモセットにおいてレム睡眠時の行動の変化が検出されており、ヒト患
者における脳機能結合異常との対応について現在検討が進められている所である。
ヒト臨床データから病態関連神経回路を同定し、その研究成果を動物モデルにおいて検証
する、という枠組みは重要であるが、革新脳事業の前半5年間のマネージメントにおいて、
必ずしも研究グループ間の連携が考慮されておらず、後半5年間の体制においても、当初設
定されたゴールや研究グループの根本的な再編成はなされず、依然として事業内連携が最
適化されなかった、という問題点が存在する。パンデミックにより対面での会議や研究室間
の交流・技術移転が停滞したという問題も存在する。またプログラムスーパーバイザーのマ
ネージメントが適切ではなかった、という批判についても真摯に受け止めたい。
〇大規模情報処理技術と大規模シミュレーションを活用した全脳レベルでの活動データの
解析とヒト脳における情報処理過程についての新しいモデルの提唱
神経回路の全容を示す膨大な回路データから、どのようにして意味のある発見をするのか、
というこれも本質的な課題に対して、革新脳事業がどのようにアプローチするのか、という
問題は本事業の開始当初から継続して議論がなされている所である。さらに病態研究にお
いても、数理モデルをどのような疾患に適用するのか、またその妥当性の評価をどのように
進めるべきか、という点が革新脳事業において重要な課題となっている。前者の研究課題に
ついては中核拠点において複数の研究グループが「データベース・ウェブサイト・脳アトラ
ス開発とコネクトミクス解析・データ駆動シミュレーション」
「多階層データ統合技術の開
発」
「データ駆動型神経回路モデリング法の開発」といった研究開発項目の元に研究を実施
中である。マーモセット脳の構造・機能の統合的なアトラスの完成に向けての研究は順調に
進行しているが、これを活用した脳情報の処理過程に関する新規モデルの開発については、
全脳レベルでの活動データを基盤とした数理モデルを開発する段階には至っていない。こ
れは数理科学的な研究が、こうしたグループ型の研究に馴染まないという点が一つの障壁
となっている可能性がある。また現在グループ単位で実施されている「実験データを再現す
るための因果律的機能的結合強度推定法」、
「in vivo 蛍光イメージングからのデコーディン
グ法の開発」
「多領域にわたる機能モデリング法の開発」といった研究課題自体はそれぞれ
に進展を見せている一方で、こうした個別課題の設定がボトムアップ的なものとなってお
り、研究の枠組み自体が全脳レベルでの活動データを活用した数理モデルの開発を効率的
に推進する形となっていない、という点を反省すべきである。この点についてプログラムス
ーパーバイザーのマネージメントが的確であればより統合的なアプローチが実現していた
可能性があり、マネージメントとして反省すべき点である。

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