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11【参考資料1-6】9価HPVワクチンファクトシート (4 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29181.html |
出典情報 | 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(第41回 11/18)《厚生労働省》 |
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201
237
1.対象疾患の基本的知⾒
HPV の感染は極めて⼀般的な現象で、⼀⽣涯に 80-90 %の⼥性が何らかの HPV に感染
202
Human papillomavirus ( HPV )ワクチンにより予防可能な疾患としては、⼦宮頸部浸潤が
238
すると推定されている(6)。性交渉の開始時期から若年⼥性の HPV 感染が始まり、その⼀
203
ん(扁平上⽪がん、腺がん)及びその前駆病変である⼦宮頸部上⽪内腫瘍( cervical
239
部に HPV の持続感染が起こって、通常 5-10 年以内に CIN2/3 などの前がん病変が⽣じ
204
intraepithelial neoplasia: CIN1, 2, 3 )と上⽪内腺がん( adenocarcinoma in situ: AIS )、外
240
る。なお HPV による⼦宮頸部病変の進展は⼀⽅向性ではなく、CIN グレード間での進
205
陰部上⽪内腫瘍( vulvar intraepithelial neoplasia: VIN1, 2, 3 )、膣上⽪内腫瘍( vaginal
241
展・退縮の両⽅向性が想定されている。前がん病変が全て⼦宮頸がんに進⾏する訳ではな
206
intraepithelial neoplasia: VAIN1,2,3 )
、肛⾨がん( 扁平上⽪がん )及びその前駆病変であ
242
く、浸潤性の⼦宮頸がんが⽣じるのは、⾼リスク型 HPV 感染者の内の約 0.15 %と推定さ
207
る肛⾨上⽪内腫瘍( anal intraepithelial neoplasia: AIN1,2,3 )、尖圭コンジローマがある。
243
れている。このように⼦宮頸がんの発症には、⻑期にわたる CIN 病変の進展・退縮の過程
244
を経ることから、感染から 10 年以上の期間が必要と考えられている(7)。また⾼リスク型
209
(1)疾患の特性
245
HPV の型の違いによっても、CIN の進展リスクや⼦宮頸がんの発症リスクが異なること
210
① 病原体の特徴
246
も⽰されている(8)。
208
211
パピローマウイルス科( Papillomaviridae )には、約 8,000 塩基対の環状 DNA をゲノ
247
⼦宮頸がんでは、細胞 DNA へ組み込まれた⾼リスク型 HPV の E6/E7 がん遺伝⼦が恒
212
ムとする直径 50-55 nm の⼩型ウイルスが属している。ほ乳類を宿主とする様々なウイルス
248
常的に⾼発現している。E6 蛋⽩質は p53 蛋⽩質の分解を誘導し、E7 蛋⽩質は Rb 蛋⽩質
213
があり、宿主の名前をつけてヒトパピローマウイルス( human papillomavirus: HPV )の
249
の機能を阻害して、細胞の不死化をもたらすが、これだけでは細胞はがん化せず、⼦宮頸
214
ように名付けられている。宿主域は厳格で、HPV はヒト以外の動物に感染しない。主要キ
250
がん発症の必要条件となるが⼗分条件ではない。がん化するには、他の共役因⼦(喫煙、
215
ャプシド( L1 )遺伝⼦の塩基配列の相同性に基づいて、これまでに 200 以上の遺伝⼦型
251
経⼝避妊薬の摂取、出産回数、性交渉パートナー数、HLA 型など)が関与すると考えられ
216
に分類されている (1)。約 40 種の遺伝⼦型は粘膜の病変から、約 160 種は⽪膚の病変から
252
ている。
217
分離され、それぞれ粘膜型 HPV、⽪膚型 HPV と呼ばれる。粘膜型のうち少なくとも 15 種
253
臨床症状として、CIN/AIS 及び初期の⼦宮頸がんでは通常、ほとんど⾃覚症状がない。
218
( HPV16, 18, 31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 56, 58, 59, 68, 73, 82 )は⼦宮頸がんから DNA が
254
進⾏した⼦宮頸がんでは、無⽉経時や性⾏為の際の性器出⾎、臭いのある帯下、腰痛などが
219
検出され、⾼リスク型 HPV と呼ばれている (2)。⾼リスク型 HPV のうち、HPV16,18 が
255
みられる。
220
海外の約 70 %の⼦宮頸がん発症に関わっていると推定されている (3)。粘膜型 HPV のう
256
221
ち、HPV6, 11 は男性・⼥性の⽣殖器にできる良性のいぼ(尖圭コンジローマ)の原因とな
257
222
る。また⾼リスク型 HPV 感染は、少なくとも 90 %の肛⾨がんと、40 %の膣がん・外陰部
258
⼦宮摘出術を受けた⼥性からも HPV DNA が検出されることから、HPV は⼦宮頸部以外
223
がん・陰茎がんに関わると推定されている(4)。
259
の膣部や外陰部など⼥性⽣殖器全体に感染することが⽰されているが (9)、ウイルス増殖が
② 不顕性感染の割合
224
粘膜型 HPV は性⾏為を介して⽣じる表⽪の微⼩なキズから、⽣殖器粘膜の基底細胞に侵
260
ない HPV 潜伏感染細胞は病変を作らず、また頸管部以外で HPV 増殖が起こっても、⽬⽴
225
⼊し、ゲノムが核内エピゾームとして維持される潜伏状態となる(5)。感染細胞の分裂時に
261
つ病変は形成しない。頸管部における HPV の⼀過性増殖に起因する CIN1 は⾃然治癒する
226
はゲノムも複製し、娘細胞に分配される。潜伏感染細胞が表⽪形成の分化を始めると、分化
262
ことが多く、若い⼥性に発症した CIN1 の 90 %が 3 年以内に消失することが報告されてい
227
終盤でウイルス増殖が起こる。⼦宮頸部の移⾏帯( 扁平上⽪と円柱上⽪が接する境界 )は
263
る (10)。治癒に伴って HPV DNA も検出されなくなることから、婦⼈科医の多くは「HPV
228
細胞増殖が速く、HPV の潜伏・持続感染が頸管部で起こると、HPV 増殖時に CIN1 が⽣ず
264
感染は⼀過性で短期間の後に排除される」と考えている。しかし、⾼齢⼥性で⼆次的に HPV
229
る。CIN1 の多くは宿主の免疫系により⾃然に治癒するが、稀に HPV ゲノムが染⾊体に組
265
検出率が上昇すること (11)、HPV 既感染者にワクチンを接種しても HPV DNA が検出さ
230
み込まれた細胞が⽣じて、⾼い増殖能を持つことがある。このような細胞が含まれる病変を
266
れ続けること (12)などから、HPV の潜伏・持続感染はかなりの⻑期に渡ることが推定され
231
CIN2 と分類している。病変全体が組み込み細胞になると CIN3 となり、さらに悪性形質を
267
る。⼦宮頸部以外で潜伏・持続感染で⽣じた HPV が⼦宮頸部に感染することに留意する必
232
獲得して基底膜から真⽪へ浸潤すると、浸潤がんに進⾏する。
268
要がある。潜伏感染細胞の消⻑、潜伏感染細胞から HPV の増殖が起こる頻度、増殖するウ
イルス量などの正確な情報は無い。
233
⼀⽅、⼦宮頸部病変を HPV 増殖による⼀連の変化と捉えて、扁平上⽪内病変( squamous
269
234
intraepithelial lesion: SIL )とするベセスダ分類では、病変の進⾏に応じて low-grade SIL
270
235
( LSIL )と high-grade SIL( HSIL )に分類する。LSIL には HPV 増殖による細胞変化
271
236
と CIN1 が相当し、HSIL には CIN2/3 が相当する。
272
7
③ 鑑別を要する他の疾患
⼦宮頸部細胞診のベセスダ分類では、SIL 診断上のグレーゾーンとして ASC( atypical
8
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1.対象疾患の基本的知⾒
HPV の感染は極めて⼀般的な現象で、⼀⽣涯に 80-90 %の⼥性が何らかの HPV に感染
202
Human papillomavirus ( HPV )ワクチンにより予防可能な疾患としては、⼦宮頸部浸潤が
238
すると推定されている(6)。性交渉の開始時期から若年⼥性の HPV 感染が始まり、その⼀
203
ん(扁平上⽪がん、腺がん)及びその前駆病変である⼦宮頸部上⽪内腫瘍( cervical
239
部に HPV の持続感染が起こって、通常 5-10 年以内に CIN2/3 などの前がん病変が⽣じ
204
intraepithelial neoplasia: CIN1, 2, 3 )と上⽪内腺がん( adenocarcinoma in situ: AIS )、外
240
る。なお HPV による⼦宮頸部病変の進展は⼀⽅向性ではなく、CIN グレード間での進
205
陰部上⽪内腫瘍( vulvar intraepithelial neoplasia: VIN1, 2, 3 )、膣上⽪内腫瘍( vaginal
241
展・退縮の両⽅向性が想定されている。前がん病変が全て⼦宮頸がんに進⾏する訳ではな
206
intraepithelial neoplasia: VAIN1,2,3 )
、肛⾨がん( 扁平上⽪がん )及びその前駆病変であ
242
く、浸潤性の⼦宮頸がんが⽣じるのは、⾼リスク型 HPV 感染者の内の約 0.15 %と推定さ
207
る肛⾨上⽪内腫瘍( anal intraepithelial neoplasia: AIN1,2,3 )、尖圭コンジローマがある。
243
れている。このように⼦宮頸がんの発症には、⻑期にわたる CIN 病変の進展・退縮の過程
244
を経ることから、感染から 10 年以上の期間が必要と考えられている(7)。また⾼リスク型
209
(1)疾患の特性
245
HPV の型の違いによっても、CIN の進展リスクや⼦宮頸がんの発症リスクが異なること
210
① 病原体の特徴
246
も⽰されている(8)。
208
211
パピローマウイルス科( Papillomaviridae )には、約 8,000 塩基対の環状 DNA をゲノ
247
⼦宮頸がんでは、細胞 DNA へ組み込まれた⾼リスク型 HPV の E6/E7 がん遺伝⼦が恒
212
ムとする直径 50-55 nm の⼩型ウイルスが属している。ほ乳類を宿主とする様々なウイルス
248
常的に⾼発現している。E6 蛋⽩質は p53 蛋⽩質の分解を誘導し、E7 蛋⽩質は Rb 蛋⽩質
213
があり、宿主の名前をつけてヒトパピローマウイルス( human papillomavirus: HPV )の
249
の機能を阻害して、細胞の不死化をもたらすが、これだけでは細胞はがん化せず、⼦宮頸
214
ように名付けられている。宿主域は厳格で、HPV はヒト以外の動物に感染しない。主要キ
250
がん発症の必要条件となるが⼗分条件ではない。がん化するには、他の共役因⼦(喫煙、
215
ャプシド( L1 )遺伝⼦の塩基配列の相同性に基づいて、これまでに 200 以上の遺伝⼦型
251
経⼝避妊薬の摂取、出産回数、性交渉パートナー数、HLA 型など)が関与すると考えられ
216
に分類されている (1)。約 40 種の遺伝⼦型は粘膜の病変から、約 160 種は⽪膚の病変から
252
ている。
217
分離され、それぞれ粘膜型 HPV、⽪膚型 HPV と呼ばれる。粘膜型のうち少なくとも 15 種
253
臨床症状として、CIN/AIS 及び初期の⼦宮頸がんでは通常、ほとんど⾃覚症状がない。
218
( HPV16, 18, 31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 56, 58, 59, 68, 73, 82 )は⼦宮頸がんから DNA が
254
進⾏した⼦宮頸がんでは、無⽉経時や性⾏為の際の性器出⾎、臭いのある帯下、腰痛などが
219
検出され、⾼リスク型 HPV と呼ばれている (2)。⾼リスク型 HPV のうち、HPV16,18 が
255
みられる。
220
海外の約 70 %の⼦宮頸がん発症に関わっていると推定されている (3)。粘膜型 HPV のう
256
221
ち、HPV6, 11 は男性・⼥性の⽣殖器にできる良性のいぼ(尖圭コンジローマ)の原因とな
257
222
る。また⾼リスク型 HPV 感染は、少なくとも 90 %の肛⾨がんと、40 %の膣がん・外陰部
258
⼦宮摘出術を受けた⼥性からも HPV DNA が検出されることから、HPV は⼦宮頸部以外
223
がん・陰茎がんに関わると推定されている(4)。
259
の膣部や外陰部など⼥性⽣殖器全体に感染することが⽰されているが (9)、ウイルス増殖が
② 不顕性感染の割合
224
粘膜型 HPV は性⾏為を介して⽣じる表⽪の微⼩なキズから、⽣殖器粘膜の基底細胞に侵
260
ない HPV 潜伏感染細胞は病変を作らず、また頸管部以外で HPV 増殖が起こっても、⽬⽴
225
⼊し、ゲノムが核内エピゾームとして維持される潜伏状態となる(5)。感染細胞の分裂時に
261
つ病変は形成しない。頸管部における HPV の⼀過性増殖に起因する CIN1 は⾃然治癒する
226
はゲノムも複製し、娘細胞に分配される。潜伏感染細胞が表⽪形成の分化を始めると、分化
262
ことが多く、若い⼥性に発症した CIN1 の 90 %が 3 年以内に消失することが報告されてい
227
終盤でウイルス増殖が起こる。⼦宮頸部の移⾏帯( 扁平上⽪と円柱上⽪が接する境界 )は
263
る (10)。治癒に伴って HPV DNA も検出されなくなることから、婦⼈科医の多くは「HPV
228
細胞増殖が速く、HPV の潜伏・持続感染が頸管部で起こると、HPV 増殖時に CIN1 が⽣ず
264
感染は⼀過性で短期間の後に排除される」と考えている。しかし、⾼齢⼥性で⼆次的に HPV
229
る。CIN1 の多くは宿主の免疫系により⾃然に治癒するが、稀に HPV ゲノムが染⾊体に組
265
検出率が上昇すること (11)、HPV 既感染者にワクチンを接種しても HPV DNA が検出さ
230
み込まれた細胞が⽣じて、⾼い増殖能を持つことがある。このような細胞が含まれる病変を
266
れ続けること (12)などから、HPV の潜伏・持続感染はかなりの⻑期に渡ることが推定され
231
CIN2 と分類している。病変全体が組み込み細胞になると CIN3 となり、さらに悪性形質を
267
る。⼦宮頸部以外で潜伏・持続感染で⽣じた HPV が⼦宮頸部に感染することに留意する必
232
獲得して基底膜から真⽪へ浸潤すると、浸潤がんに進⾏する。
268
要がある。潜伏感染細胞の消⻑、潜伏感染細胞から HPV の増殖が起こる頻度、増殖するウ
イルス量などの正確な情報は無い。
233
⼀⽅、⼦宮頸部病変を HPV 増殖による⼀連の変化と捉えて、扁平上⽪内病変( squamous
269
234
intraepithelial lesion: SIL )とするベセスダ分類では、病変の進⾏に応じて low-grade SIL
270
235
( LSIL )と high-grade SIL( HSIL )に分類する。LSIL には HPV 増殖による細胞変化
271
236
と CIN1 が相当し、HSIL には CIN2/3 が相当する。
272
7
③ 鑑別を要する他の疾患
⼦宮頸部細胞診のベセスダ分類では、SIL 診断上のグレーゾーンとして ASC( atypical
8