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【参考1】新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 第10.0版 (12 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00416.html
出典情報 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第 10.0 版」の 周知について(8/21付 事務連絡)《厚生労働省》
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●新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き・第 10.0 版 ●2 臨床像

小児死亡例による症状は,呼吸器症状以外の症状のうち,
悪心・嘔吐(46%)

意識障害(42%)


痙攣(36%),経口摂取不良(22%)などの割合が高かったことから,小児においては,痙攣,
意識障害などの神経症状や,嘔吐,経口摂取不良などの呼吸器症状以外の全身症状の出現にも
注意を払う必要がある.また,死亡に至る経緯として,中枢神経系の異常と循環器系の異常が

多く,いずれも急激な全身状態の悪化が見られたこと,内因性死亡と考えられた小児等の死亡
例 50 例においても,発症から心肺停止および死亡までの日数は,中央値が各々 2.0 日,3.0
日であり,1 週間未満の症例が各々 81%,75% を占めたことから,基礎疾患がない小児にお

いても,特に発症後1週間の症状の経過観察が重要であると考えられると報告された.流行期
間を通して,小児における致死率の上昇は確認されていないが,小児感染例の増加に伴う重症
例の増加には注意が必要である.

【小児多系統炎症性症候群 (Multisystem Inflammatory Syndrome in Children: MIS-C)】

欧米では,COVID-19 パンデミックに伴い,20 歳以下の感染者の中に複数臓器に強い炎症を認め,

その中に川崎病と類似した症例のあることが報告され,小児多系統炎症性症候群(MIS-C または

PIMS-TS)と呼ばれた.その典型的な経過は,COVID-19 の罹患後 2 〜 6 週目に,高熱と下痢,嘔吐,
腹痛などの消化器症状と相前後して,血圧低下,ショック,心筋収縮能低下を示し,集中治療を必

要とする.その多くに全身の紅斑・発疹や,眼球結膜充血,口唇・口腔粘膜の発赤や,いちご舌,
指趾の発赤など,川崎病に似た症状群を伴い,川崎病の診断基準を満たすものが 22 〜 64% あると

された.一部には川崎病と同様に,冠動脈の拡張や瘤形成が報告されている.痙攣,意識障害やな

どの神経症状などもみられ,検査初見では,リンパ球,血小板の低下が著しく , CRP, NT-proBNP
または BNP,IL- 6,D ダイマー,フェリチンなど多くの炎症性マーカーが上昇する重篤な続発症
であると報じられた.米国 CDC のデータでは,MIS-C の約 0.8% に死亡例が報告されている.

一方,日本では 2020 年には症例の報告はなく,その年末から 2021 年初頭のいわゆる ‘ 第 3 波 ’

の時期になって MIS-C と考えられる例が報告され始め,日本小児科学会が中心となって,エキスパー
トコンセンサスとして,MIS-C の診断アルゴリズムを公表した(図 2-3).小児の感染者数増加に

伴い報告が相次ぐようになり,2022 年夏から,日本小児科学会,日本集中治療医学会,日本小児

循環器学会,日本川崎病学会の連携により,MIS-C の全国調査を開始したところ,2022 年以降の
オミクロンによる小児患者の急増により,2023 年 5 月の時点で 100 例以上の症例が報告されてお
り,現時点で集計できた MIS-C 74 例の分析では,下記のような結果を得ている.

① SARS-CoV-2 感染後 5 〜6週後に発症している例が最も多く,1週以内から最長 10 週後に発
症した例までが報告された.現在までに死亡例はみられていない.

② 年齢は中央値 9.1 歳,1 〜 16 歳までが報告された.性別は男児が 63.5 %であった.
③ 平均入院日数は 14 日であった.

④ 患者数の時期的変動は感染増加に数週遅れてピークがあり,とくにオミクロンに置き換わってか
らの小児患者の増加に伴い増加している.

⑤ ワクチン接種例は 2 例のみで,95 %が未接種者であった.

⑥ 80 %以上の例で,心機能障害(BNP など検査値異常),腹部症状,血液検査異常,眼症状(結
膜充血)を認めた.

⑦ 川崎病の主要症状を5項目以上認めた例が 55 %,4項目を含めると 69 %であった.

⑧ 急性期のリンパ球数は中央値 764 /μ L で,血小板数は 14.6 万/μ L に減少していた.

⑨ 左室の駆出率(LVEF)は中央値 58 %(25 〜 75%)であり,冠動脈の拡張あるいは瘤は9%
に認められた.

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