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資料4-2 日本版抗コリン薬リスクスケール (24 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40741.html |
出典情報 | 高齢者医薬品適正使用検討会(第18回 6/21)《厚生労働省》 |
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5.2
抗コリン薬の薬物有害事象に関するスコーピングレビュー
5.2.1
認知機能低下
記憶障害
表 3 に抗コリン薬リスクスケールを用いて認知機能への影響を検討した 16 文献を示す。抗
コリン薬負荷により認知機能の低下が危惧された文献が 11 件、関連性が薄い、あるいは薬剤
変更によっても認知機能への影響が認められなかったなどの文献が 4 件、認知症の進行には関
連していたが、臨床認知症評価とは関連なしとする文献が 1 件であった。単独のスケールを用
いた 12 文献のうち、ACoB を用いた文献が 7 件、ADS が 4 件、CrAS が 1 件であった。
コクランレビュー(30)では、メタ解析に十分なデータを有するスケールは ACoB のみとさ
れ、ACoB のスケールにおけるリスクスコアが上がると認知機能低下の odds ratio も上昇して
いた。結論として「抗コリン薬負荷により、認知機能低下や認知症のリスクが高まる可能性が
あるという確実性の低いエビデンスがある。」としている(30)。一方で、リスクスケールの比
較を行った 3 文献のうち、Andre らは ADS、ACoB、ARS、the Durán list(日本版作成では未使
用)のどのリスクスケールを用いても抗コリン薬負荷と認知機能低下との間に関連は認められ
なかったと報告している(31)。また、Lavrador らは同様に ADS、ACoB、ARS、DBI(日本版作成
では未使用)の 4 つのリスクスケールを用いて認知機能との比較を行っている(32)。その中
で、ARS と DBI が認知障害との関連性の高いリスクスケールであること、一方で ADS は最も関
連性が低いリスクスケールであったとしている。その理由として ADS は血清抗コリン活性に対
する薬剤の影響に基づいて作成されたためではないかと考察されている。興味深いことに、他
の文献で多く用いられている ACoB について認知障害との関連性は低いと報告している。そし
て Hanlon らは、最も一般的な 10 種類のリスクスケールを用いて認知障害との関連について検
討しているが、どのスケールを用いても抗コリン薬負荷は認知症を予測したが、AEC と AIC を
含むモデルでは、ベースモデルと比較して認知症/せん妄の予測精度が最も高かったと報告し
ている(1)。また、Mate らの報告では、スコア 1 の抗コリン薬が認知症患者の抗コリン薬負荷
の主な原因であるとし、スコアの高い抗コリン薬の使用に留意するだけでなく、低スコアであ
っても抗コリン作用を持つ薬剤を処方変更することは、高齢者に有用であるとしている(22)。
認知機能の検討で多く用いられた、3 つのリスクスケール(ACoB、ADS、ARS)でのスコア
と、日本版抗コリン薬リスクスケールのスコアを比較してみると、表 4 に示す薬剤に関して
は、3 つのリスクスケールすべてでスコア 3 かつ日本版抗コリン薬リスクスケールでもスコア
3 であり、認知機能に関連するリスクが高い薬剤と考えられる。これらの薬剤には抗ヒスタミ
ン薬や三環系抗うつ薬などが多い。
一方で、表 5 に示す薬剤に関しては、日本版リスクスケールではスコア 3 となっているが、
3 つのリスクスケールではほとんど評価されていないか、低いスコアとなっている。これらの
薬剤は過活動膀胱治療薬や消化管鎮痙薬、抗ヒスタミン薬などの薬効群が多い。実際に認知機
能に影響が少ないと言えるのかどうかは定かではない。その理由としては 3 つのリスクスケー
ル(ACoB、ADS、ARS)が 2006 年(ADS)あるいは 2008 年(ACoB、ARS)に報告されたスケール
で、米国では当時発売されていない薬剤のため、3 つのスケールで評価されていない可能性が
ある(表 5 付記参照)。日本版リスクスケールにおいての得点が高いことを考えると、こうし
た薬剤も認知機能への影響については注意していくべきかもしれない。また、フェノチアジン
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抗コリン薬の薬物有害事象に関するスコーピングレビュー
5.2.1
認知機能低下
記憶障害
表 3 に抗コリン薬リスクスケールを用いて認知機能への影響を検討した 16 文献を示す。抗
コリン薬負荷により認知機能の低下が危惧された文献が 11 件、関連性が薄い、あるいは薬剤
変更によっても認知機能への影響が認められなかったなどの文献が 4 件、認知症の進行には関
連していたが、臨床認知症評価とは関連なしとする文献が 1 件であった。単独のスケールを用
いた 12 文献のうち、ACoB を用いた文献が 7 件、ADS が 4 件、CrAS が 1 件であった。
コクランレビュー(30)では、メタ解析に十分なデータを有するスケールは ACoB のみとさ
れ、ACoB のスケールにおけるリスクスコアが上がると認知機能低下の odds ratio も上昇して
いた。結論として「抗コリン薬負荷により、認知機能低下や認知症のリスクが高まる可能性が
あるという確実性の低いエビデンスがある。」としている(30)。一方で、リスクスケールの比
較を行った 3 文献のうち、Andre らは ADS、ACoB、ARS、the Durán list(日本版作成では未使
用)のどのリスクスケールを用いても抗コリン薬負荷と認知機能低下との間に関連は認められ
なかったと報告している(31)。また、Lavrador らは同様に ADS、ACoB、ARS、DBI(日本版作成
では未使用)の 4 つのリスクスケールを用いて認知機能との比較を行っている(32)。その中
で、ARS と DBI が認知障害との関連性の高いリスクスケールであること、一方で ADS は最も関
連性が低いリスクスケールであったとしている。その理由として ADS は血清抗コリン活性に対
する薬剤の影響に基づいて作成されたためではないかと考察されている。興味深いことに、他
の文献で多く用いられている ACoB について認知障害との関連性は低いと報告している。そし
て Hanlon らは、最も一般的な 10 種類のリスクスケールを用いて認知障害との関連について検
討しているが、どのスケールを用いても抗コリン薬負荷は認知症を予測したが、AEC と AIC を
含むモデルでは、ベースモデルと比較して認知症/せん妄の予測精度が最も高かったと報告し
ている(1)。また、Mate らの報告では、スコア 1 の抗コリン薬が認知症患者の抗コリン薬負荷
の主な原因であるとし、スコアの高い抗コリン薬の使用に留意するだけでなく、低スコアであ
っても抗コリン作用を持つ薬剤を処方変更することは、高齢者に有用であるとしている(22)。
認知機能の検討で多く用いられた、3 つのリスクスケール(ACoB、ADS、ARS)でのスコア
と、日本版抗コリン薬リスクスケールのスコアを比較してみると、表 4 に示す薬剤に関して
は、3 つのリスクスケールすべてでスコア 3 かつ日本版抗コリン薬リスクスケールでもスコア
3 であり、認知機能に関連するリスクが高い薬剤と考えられる。これらの薬剤には抗ヒスタミ
ン薬や三環系抗うつ薬などが多い。
一方で、表 5 に示す薬剤に関しては、日本版リスクスケールではスコア 3 となっているが、
3 つのリスクスケールではほとんど評価されていないか、低いスコアとなっている。これらの
薬剤は過活動膀胱治療薬や消化管鎮痙薬、抗ヒスタミン薬などの薬効群が多い。実際に認知機
能に影響が少ないと言えるのかどうかは定かではない。その理由としては 3 つのリスクスケー
ル(ACoB、ADS、ARS)が 2006 年(ADS)あるいは 2008 年(ACoB、ARS)に報告されたスケール
で、米国では当時発売されていない薬剤のため、3 つのスケールで評価されていない可能性が
ある(表 5 付記参照)。日本版リスクスケールにおいての得点が高いことを考えると、こうし
た薬剤も認知機能への影響については注意していくべきかもしれない。また、フェノチアジン
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