よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


資料4-2 日本版抗コリン薬リスクスケール (32 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40741.html
出典情報 高齢者医薬品適正使用検討会(第18回 6/21)《厚生労働省》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

スクリーニングの結果、消化器に関する報告は便秘が主であったが、便秘は普段から誰もが
経験する症状であるため、抗コリン薬の影響が見過ごされることのないように配慮が必要であ
る。

5.2.5

口腔機能(口腔乾燥、う蝕、嚥下機能低下など)

抗コリン薬の口腔機能への影響に関連してスクリーニングされた文献は 15 件(32, 43, 61,
63-74)で、その内訳は、口腔乾燥に着目して検討している文献が 12 件(32, 43, 61, 63-65,
67, 70-74)、メタアナリシス文献が 1 件(69)、口腔乾燥から唾液の自浄作用が低下して誘発さ
れた可能性のある、う蝕に着目した文献が 1 件(66)、嚥下障害に関しては 1 件(68)であった。
口腔乾燥に関する 12 文献中、厳密に無刺激唾液流量や低刺激唾液流量の低下を確認した文
献が 1 件(67)であり、1 文献(61)は口腔乾燥に関して有意差がなかった。また、15 文献中、抗
コリン薬リスクスケールを用いている文献は 5 件(32, 43, 66-68)で単独のリスクスケールを
用いた検討が 4 文献(43, 66-68)、複数のリスクスケールを用いた検討が 1 文献(32)であっ
た。
メタアナリシス文献(69)では、3 つのデータベース(CINAHL、Embase、Pubmed)を用いて検索
した。抗コリン薬を服用している 65 歳以上の患者を対象に実施され、抗コリン薬の負荷また
はこれらの薬の使用と口腔乾燥および/または眼乾燥の有病率との関連を測定した研究であ
る。使用されたスケールは ADS と ARS であった。抗コリン薬負荷が高い患者と低い患者、また
は全く無い患者における口腔乾燥を評価したところ、それらの間に正の相関が認められた。結
論として「抗コリン薬の使用または抗コリン薬負荷と口腔乾燥との間に明確な関係があること
を示唆していた。眼乾燥との関係は明らかではなかった。」と報告されている。
Tiisanoja らは(67)、フィンランドの地域住民の高齢者における抗コリン薬の負荷と口腔乾
燥について検討している。抗コリン薬は口腔乾燥の危険因子であることが報告されているが、
抗コリン薬負荷の累積が唾液分泌または口腔乾燥に対する影響についてはほとんど知られてい
なかった。地域在住、有歯顎(歯を有している)の非喫煙の高齢者 152 人を対象とした。デー
タはインタビューと臨床検査によって収集され、スケールは ADS が使用されていた。抗コリン
薬負荷が高い高齢者(ADS ≥ 3)は、口腔乾燥を発症する可能性が高かった(RR:3.17;CI:1.446.96)、低非刺激唾液流量(<0.1 mL/min; RR: 2.31, CI: 1.22-4.43)および低刺激唾液流量
(<1.0 mL/min; RR: 1.50, CI: 0.80-2.81)を参照群(ADS 0)と比較した。中等度の抗コリン作
用負荷(ADS スコアを 1 点から 2 点)を有する参加者では、口腔乾燥、非刺激性および刺激性唾
液分泌の全てのリスク推定値は 0.55〜3.13 の間で変動した。薬剤、降圧薬、鎮静剤の総数の
追加調整により、リスク推定値はわずかに減少した。結論として、高い抗コリン薬負荷は、低
刺激の唾液分泌および口腔乾燥と関連していた。
Castejón-Hernández ら(68)によると、嚥下障害は AGU(急性期老人病棟)で頻繁に発生する
老人症候群であり、入院患者の 4 人に 1 人(25.5%)が罹患し、薬物の副作用など複数の要因が
関連することが指摘されている。入院時に ACoB が 3 ポイント以上の抗コリン薬負荷は、入院
中の嚥下障害を 4 倍以上誘発する可能性がある。高齢者の嚥下障害は多因子起源であり、各因
子間の直接的な関連を確認できないため、臨床医は抗コリン薬の副作用を認識し、抗コリン薬

32