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資料4-2 日本版抗コリン薬リスクスケール (35 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40741.html |
出典情報 | 高齢者医薬品適正使用検討会(第18回 6/21)《厚生労働省》 |
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この文献では心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、不整脈、伝導障害、心血管死)の発症直前
30 日間の抗コリン薬負荷スコアをそれ以前の無作為に抽出した 30 日間の負荷スコアと比較さ
れた。抗コリン薬負荷の増加が心血管系イベントのリスク増加と関連しており、スコア増加度
が高いほどリスクが上昇する用量反応関係を認めたことから、因果関係がある可能性が高いと
結論付けている。もう一つは Myint らの英国からの報告(77)で、前向きコホート研究の基礎調
査から、ACoB を用いて抗コリンリスクスコアを総計し、リスクスコア値の層別に 10 年間の心
血管イベント(心筋梗塞や脳卒中と考えられるが詳細は不明)の発症を検討している。ACoB
スコアが 0 点の群と比較して、スコア総計が上がるごとにイベント発症リスクが増加し、スコ
アが 3 を超える群では 2 倍以上の発症リスクがあると報告している。また用量反応関係だけで
なく、クラス効果もあると推察している。
他の 4 文献(61, 63, 78, 79) に関しては、今回の日本版抗コリン薬リスクスケール作成に
おいて参考にしたスケールは使用されていないが、循環器系の副作用として、脈拍上昇(61,
63, 78)、不整脈(79)、心電図異常(63, 79)などの検査値の異常の有無を評価しているものが
ほとんどであった。一部の文献では循環器系の副作用とともに、口腔乾燥や尿閉、便秘などの
抗コリン作用の代表的な副作用を併せて有害事象として比較されているが、その際に特にリス
クスケールは使用されていなかった。循環器系の副作用に関して、抗コリンリスクスケールを
用いた検討は少なく、抗コリン薬リスクスケールで評価した抗コリン薬負荷の増加は将来の心
血管イベントのリスクを予測する可能性がある。
5.2.9
その他(死亡、QOL、処方に関連するリスク因子など)
抗コリン薬による有害事象の中で、他のレビューで扱われなかった事象(死亡、QOL、処方
に関連するリスク因子など)に関する 11 文献があった。以下、検索された文献を以下の1)
~5)にまとめた。
1) 抗コリン薬処方のリスク因子
抗コリン薬処方のリスク因子に関して、2 件の文献があった。地域在住の認知症患者 1044
名における横断的検討では、ADS の高さと関連した因子は、5 剤以上のポリファーマシー、高
年齢、認知症の重症度、うつ、低い QOL、であった(22)。一方、療養病床入院の高齢患者 466
名における横断的検討では、KABS が 3 点以上の抗コリン薬負荷の高い患者が 70.4%と多かっ
たが、ポリファーマシーや肥満、さらに interRAI(https://interrai.org/)で評価される要
介護度の低さ、会話能力や認知機能の高さ、QOL の低さ、がリスクであった(80)。
2) 入院日数延長
次に、入院日数延長に関する文献が 1 件検索され、回復期病床に入院中にせん妄を合併した
認知症患者を対象とし、ACB スケールにより評価された抗コリン薬負荷はせん妄の重症度には
影響しなかったが、使用翌週の認知機能や身体機能には有意な低下が認められた(33)。
3) QOL への影響
QOL への影響については、2 件の文献が検索された。がん・非がん患者を含む RCT の二次解
析による縦断研究では、がん・非がんに関わらず抗コリン薬負荷の程度(ADS による評価)は
両群で同等であり、抗コリン薬負荷の大きい患者では易疲労感や QOL 低下(McGill Quality
35
30 日間の抗コリン薬負荷スコアをそれ以前の無作為に抽出した 30 日間の負荷スコアと比較さ
れた。抗コリン薬負荷の増加が心血管系イベントのリスク増加と関連しており、スコア増加度
が高いほどリスクが上昇する用量反応関係を認めたことから、因果関係がある可能性が高いと
結論付けている。もう一つは Myint らの英国からの報告(77)で、前向きコホート研究の基礎調
査から、ACoB を用いて抗コリンリスクスコアを総計し、リスクスコア値の層別に 10 年間の心
血管イベント(心筋梗塞や脳卒中と考えられるが詳細は不明)の発症を検討している。ACoB
スコアが 0 点の群と比較して、スコア総計が上がるごとにイベント発症リスクが増加し、スコ
アが 3 を超える群では 2 倍以上の発症リスクがあると報告している。また用量反応関係だけで
なく、クラス効果もあると推察している。
他の 4 文献(61, 63, 78, 79) に関しては、今回の日本版抗コリン薬リスクスケール作成に
おいて参考にしたスケールは使用されていないが、循環器系の副作用として、脈拍上昇(61,
63, 78)、不整脈(79)、心電図異常(63, 79)などの検査値の異常の有無を評価しているものが
ほとんどであった。一部の文献では循環器系の副作用とともに、口腔乾燥や尿閉、便秘などの
抗コリン作用の代表的な副作用を併せて有害事象として比較されているが、その際に特にリス
クスケールは使用されていなかった。循環器系の副作用に関して、抗コリンリスクスケールを
用いた検討は少なく、抗コリン薬リスクスケールで評価した抗コリン薬負荷の増加は将来の心
血管イベントのリスクを予測する可能性がある。
5.2.9
その他(死亡、QOL、処方に関連するリスク因子など)
抗コリン薬による有害事象の中で、他のレビューで扱われなかった事象(死亡、QOL、処方
に関連するリスク因子など)に関する 11 文献があった。以下、検索された文献を以下の1)
~5)にまとめた。
1) 抗コリン薬処方のリスク因子
抗コリン薬処方のリスク因子に関して、2 件の文献があった。地域在住の認知症患者 1044
名における横断的検討では、ADS の高さと関連した因子は、5 剤以上のポリファーマシー、高
年齢、認知症の重症度、うつ、低い QOL、であった(22)。一方、療養病床入院の高齢患者 466
名における横断的検討では、KABS が 3 点以上の抗コリン薬負荷の高い患者が 70.4%と多かっ
たが、ポリファーマシーや肥満、さらに interRAI(https://interrai.org/)で評価される要
介護度の低さ、会話能力や認知機能の高さ、QOL の低さ、がリスクであった(80)。
2) 入院日数延長
次に、入院日数延長に関する文献が 1 件検索され、回復期病床に入院中にせん妄を合併した
認知症患者を対象とし、ACB スケールにより評価された抗コリン薬負荷はせん妄の重症度には
影響しなかったが、使用翌週の認知機能や身体機能には有意な低下が認められた(33)。
3) QOL への影響
QOL への影響については、2 件の文献が検索された。がん・非がん患者を含む RCT の二次解
析による縦断研究では、がん・非がんに関わらず抗コリン薬負荷の程度(ADS による評価)は
両群で同等であり、抗コリン薬負荷の大きい患者では易疲労感や QOL 低下(McGill Quality
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