よむ、つかう、まなぶ。
資料4-2 日本版抗コリン薬リスクスケール (7 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40741.html |
出典情報 | 高齢者医薬品適正使用検討会(第18回 6/21)《厚生労働省》 |
ページ画像
ダウンロードした画像を利用する際は「出典情報」を明記してください。
低解像度画像をダウンロード
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
2
はじめに
社会の高齢化に伴い、多病を抱えてポリファーマシー状態にある高齢者の増加が著し
く、医療介護現場から地方自治体、国レベルまでその対策が求められている。ポリファー
マシー対策の指針として、日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」と
厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用の指針」が挙げられ、それぞれで「特に慎重な投
与を要する薬物のリスト」と「薬剤起因性老年症候群」として高齢者では使用を控えるべ
き薬物(Potentially Inappropriate Medications, PIMs)をリスト化している。
PIMs の代表的な薬物はベンゾジアゼピン系薬物と抗コリン薬であり、どちらも様々な
老年症候群の原因ないし増悪因子となりうる。一方で、ベンゾジアゼピンについては、睡
眠導入や抗不安など用途が限定されることもあり、服薬情報から見出すことは難しくな
い。それに対して、抗コリン薬は、多臓器・多疾患で幅広く使われ、抗コリン作用を主作
用とするものから副作用として抗コリン作用をもつものまで多彩であり、見逃されやす
い。しかも、ポリファーマシー状態では、抗コリン薬が強弱交えて複数含まれていること
もしばしばあり、トータルの抗コリン作用を一目で判断することは容易ではない。海外で
は、各薬物の抗コリン作用をスコア化し、それらの合計スコアを抗コリン作用の力価とし
て算出するスケールなども数多く開発されている。しかし、スコアの根拠となる薬理作用
や臨床効果に関するエビデンスの利用、エキスパートパネルによるコンセンサス形成のプ
ロセスは各スケールでまちまちである。また、当然ながら海外と日本では発売されている
薬剤も異なるため、海外のスケールをそのまま日本で使うと漏れが生じるなど課題があ
る。
以上の背景から、日本独自の抗コリン薬スケールが必要であるという医療現場の声が高
まり、日本老年薬学会で 2023 年 6 月にワーキンググループを結成して検討と作成作業を
開始した。詳細は本編に譲るが、約 1 年間のスコーピングレビューを含む作業により今
般、臨床的視点に基づく日本初の「日本版抗コリン薬リスクスケール」の完成にこぎつけ
た。多大な尽力をいただいたワーキンググループのメンバーに心からの感謝を申し上げ
る。また、本スケールの作成に際して確認と承認をいただいた日本老年医学会に対しても
深謝申し上げる。尚、本スケールは今後、服薬情報を入力ないし電子的に取り込めばスコ
アと該当薬のリストが算出されるようなウェブサイトやアプリも作成して利便性を高める
予定であり、楽しみにお待ちいただきたい。
薬剤師、医師・歯科医師はもちろん、看護師やその他の医療介護専門職の方々にも利用
いただければ幸いである。
2024 年 5 月 日本老年薬学会代表理事 秋下 雅弘
7
はじめに
社会の高齢化に伴い、多病を抱えてポリファーマシー状態にある高齢者の増加が著し
く、医療介護現場から地方自治体、国レベルまでその対策が求められている。ポリファー
マシー対策の指針として、日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」と
厚生労働省の「高齢者の医薬品適正使用の指針」が挙げられ、それぞれで「特に慎重な投
与を要する薬物のリスト」と「薬剤起因性老年症候群」として高齢者では使用を控えるべ
き薬物(Potentially Inappropriate Medications, PIMs)をリスト化している。
PIMs の代表的な薬物はベンゾジアゼピン系薬物と抗コリン薬であり、どちらも様々な
老年症候群の原因ないし増悪因子となりうる。一方で、ベンゾジアゼピンについては、睡
眠導入や抗不安など用途が限定されることもあり、服薬情報から見出すことは難しくな
い。それに対して、抗コリン薬は、多臓器・多疾患で幅広く使われ、抗コリン作用を主作
用とするものから副作用として抗コリン作用をもつものまで多彩であり、見逃されやす
い。しかも、ポリファーマシー状態では、抗コリン薬が強弱交えて複数含まれていること
もしばしばあり、トータルの抗コリン作用を一目で判断することは容易ではない。海外で
は、各薬物の抗コリン作用をスコア化し、それらの合計スコアを抗コリン作用の力価とし
て算出するスケールなども数多く開発されている。しかし、スコアの根拠となる薬理作用
や臨床効果に関するエビデンスの利用、エキスパートパネルによるコンセンサス形成のプ
ロセスは各スケールでまちまちである。また、当然ながら海外と日本では発売されている
薬剤も異なるため、海外のスケールをそのまま日本で使うと漏れが生じるなど課題があ
る。
以上の背景から、日本独自の抗コリン薬スケールが必要であるという医療現場の声が高
まり、日本老年薬学会で 2023 年 6 月にワーキンググループを結成して検討と作成作業を
開始した。詳細は本編に譲るが、約 1 年間のスコーピングレビューを含む作業により今
般、臨床的視点に基づく日本初の「日本版抗コリン薬リスクスケール」の完成にこぎつけ
た。多大な尽力をいただいたワーキンググループのメンバーに心からの感謝を申し上げ
る。また、本スケールの作成に際して確認と承認をいただいた日本老年医学会に対しても
深謝申し上げる。尚、本スケールは今後、服薬情報を入力ないし電子的に取り込めばスコ
アと該当薬のリストが算出されるようなウェブサイトやアプリも作成して利便性を高める
予定であり、楽しみにお待ちいただきたい。
薬剤師、医師・歯科医師はもちろん、看護師やその他の医療介護専門職の方々にも利用
いただければ幸いである。
2024 年 5 月 日本老年薬学会代表理事 秋下 雅弘
7