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資料4-2 日本版抗コリン薬リスクスケール (29 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40741.html |
出典情報 | 高齢者医薬品適正使用検討会(第18回 6/21)《厚生労働省》 |
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入院患者のせん妄発症に対する影響に関する報告が 5 件検索された。待機的手術が予定され
た 70 歳以上の高齢患者における RCT の二次解析の検討では、約 23%の患者でせん妄が認めら
れたが、ARS および ABS が多変量解析においてもそれぞれ有意にせん妄発症と関連した(ARS1
点あたり OR 1.54, 95%CI 1.15-2.02、ABS のリスト掲載薬 1 剤あたり OR 2.74, 95%CI 1.554.94)(47)。同様に術後せん妄に関して評価した別の RCT 参加患者の二次解析の研究では、
ADS により評価された抗コリン薬負荷は、術後せん妄の発症と関連し(+1 点あたり OR
1.496; 95% CI 1.09–2.05)していた(48)。回復期病床に入院中にせん妄を合併した認知症患
者では、ACB により評価された抗コリン薬負荷はせん妄の重症度には影響しなかったが、使用
翌週の認知機能や身体機能には有意な低下が認められた(33)。一方、股関節手術を実施された
後にせん妄を発症した高齢患者での検討では、ADS はせん妄の重症度や遷延日数と関連はしな
かった。この研究では術前からのハロペリドールによるせん妄予防投与を行っていた患者もい
たが、ADS の低い群(抗コリン薬負荷の小さい群)では予防投与の効果が高かった(49)。脳卒
中の急性期の患者でせん妄の有無により層別化した症例対照研究では、22 名のせん妄発症者
と 52 名の性・年齢でマッチングされた、せん妄非発症者とが比較され、脳卒中発症前からの
抗コリン作用を有する薬剤の使用(OR =17.5; 95% CI 1.00–333.3)や、鎮静目的ではない抗
コリン薬の入院中の使用(OR=24.4; 95% CI 2.18–250)がせん妄発症の危険因子であった(50)。
以上より、抗コリン薬による眠気やせん妄の発症、さらには認知機能や身体機能に悪影響を
認めるとする報告が得られた。
5.2.3
運動機能障害(転倒、筋力低下、手足の震え、歩行障害など)
運動機能障害の領域において転倒に関する報告が最も多く、9 文献あった(表 6)。代表的
な文献を下記に詳細を示す。ACB と転倒の関連を報告したメタアナリシスでは、ACB の増加と
転倒との間に有意な関連が認められたが、ACB のスコアが高い場合(ACB≧4 など)にのみ当ては
まると報告されており、中等度から高度の ACB と高齢者の転倒リスクとの関連を支持するエビ
デンスはあるものの、軽度の ACB と転倒との関連や、どの抗コリン薬リスクスケールが最も有
用であるかについての結論は出されていない(51)。
フィンランドの介護施設 20 病棟で、平均年齢 83 歳 320 名を対象に行われたクラスターラン
ダム化比較試験で、看護師が転倒と ARS についての 4 時間の対面教育を受講した病棟では、受
講しなかった病棟と比較し、転倒の発生率が有意に減少していた [OR 0.72, 95 % CI 0.59–
0.88; p<0.001](52)。
オーストラリアの高齢者施設では、平均年齢 85 歳の高齢者に対し DBI と転倒の関連が前向
きに調査され、DBI の増加が 1 年後のバランス能力の低下と関連していた[OR 1.57, 95% CI
1.08–2.27] ことが報告されている。また、本領域において、使用されている抗コリン薬リス
クスケールは DBI が 7 件と最も多く、次いで ARS 5 件、ACB と ACoB が 4 件、ADS が 3 件、
CrAS が 2 件であった(53)。
その他、運動機能障害に関する報告は、握力に関連した報告が 2 文献(53, 54)、Short
Physical Performance Battery (SPPB)に関連した報告が 2 文献(54, 55)、Barthel
index(BI)(33)、振戦(45)、カルノフスキー指数(43)に関連した報告が 1 文献ずつあった。
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た 70 歳以上の高齢患者における RCT の二次解析の検討では、約 23%の患者でせん妄が認めら
れたが、ARS および ABS が多変量解析においてもそれぞれ有意にせん妄発症と関連した(ARS1
点あたり OR 1.54, 95%CI 1.15-2.02、ABS のリスト掲載薬 1 剤あたり OR 2.74, 95%CI 1.554.94)(47)。同様に術後せん妄に関して評価した別の RCT 参加患者の二次解析の研究では、
ADS により評価された抗コリン薬負荷は、術後せん妄の発症と関連し(+1 点あたり OR
1.496; 95% CI 1.09–2.05)していた(48)。回復期病床に入院中にせん妄を合併した認知症患
者では、ACB により評価された抗コリン薬負荷はせん妄の重症度には影響しなかったが、使用
翌週の認知機能や身体機能には有意な低下が認められた(33)。一方、股関節手術を実施された
後にせん妄を発症した高齢患者での検討では、ADS はせん妄の重症度や遷延日数と関連はしな
かった。この研究では術前からのハロペリドールによるせん妄予防投与を行っていた患者もい
たが、ADS の低い群(抗コリン薬負荷の小さい群)では予防投与の効果が高かった(49)。脳卒
中の急性期の患者でせん妄の有無により層別化した症例対照研究では、22 名のせん妄発症者
と 52 名の性・年齢でマッチングされた、せん妄非発症者とが比較され、脳卒中発症前からの
抗コリン作用を有する薬剤の使用(OR =17.5; 95% CI 1.00–333.3)や、鎮静目的ではない抗
コリン薬の入院中の使用(OR=24.4; 95% CI 2.18–250)がせん妄発症の危険因子であった(50)。
以上より、抗コリン薬による眠気やせん妄の発症、さらには認知機能や身体機能に悪影響を
認めるとする報告が得られた。
5.2.3
運動機能障害(転倒、筋力低下、手足の震え、歩行障害など)
運動機能障害の領域において転倒に関する報告が最も多く、9 文献あった(表 6)。代表的
な文献を下記に詳細を示す。ACB と転倒の関連を報告したメタアナリシスでは、ACB の増加と
転倒との間に有意な関連が認められたが、ACB のスコアが高い場合(ACB≧4 など)にのみ当ては
まると報告されており、中等度から高度の ACB と高齢者の転倒リスクとの関連を支持するエビ
デンスはあるものの、軽度の ACB と転倒との関連や、どの抗コリン薬リスクスケールが最も有
用であるかについての結論は出されていない(51)。
フィンランドの介護施設 20 病棟で、平均年齢 83 歳 320 名を対象に行われたクラスターラン
ダム化比較試験で、看護師が転倒と ARS についての 4 時間の対面教育を受講した病棟では、受
講しなかった病棟と比較し、転倒の発生率が有意に減少していた [OR 0.72, 95 % CI 0.59–
0.88; p<0.001](52)。
オーストラリアの高齢者施設では、平均年齢 85 歳の高齢者に対し DBI と転倒の関連が前向
きに調査され、DBI の増加が 1 年後のバランス能力の低下と関連していた[OR 1.57, 95% CI
1.08–2.27] ことが報告されている。また、本領域において、使用されている抗コリン薬リス
クスケールは DBI が 7 件と最も多く、次いで ARS 5 件、ACB と ACoB が 4 件、ADS が 3 件、
CrAS が 2 件であった(53)。
その他、運動機能障害に関する報告は、握力に関連した報告が 2 文献(53, 54)、Short
Physical Performance Battery (SPPB)に関連した報告が 2 文献(54, 55)、Barthel
index(BI)(33)、振戦(45)、カルノフスキー指数(43)に関連した報告が 1 文献ずつあった。
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