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資料4-2 日本版抗コリン薬リスクスケール (33 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40741.html
出典情報 高齢者医薬品適正使用検討会(第18回 6/21)《厚生労働省》
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のリスクスケールに精通する必要がある。このため、抗コリン薬(スコアが 1 点のものを含む)
を処方する際には、抗コリン薬負荷を日常的に評価し、可能な限り負荷を軽減することを留意
すべきであると報告されている。
Agar ら(43)は、緩和ケアで頻繁に遭遇するいくつかの症状や健康への悪影響の原因となる
可能性のある薬剤の累積的な副作用を調査した。ランダム化比較試験の参加者 304 名を対象と
した解析において、死が近づくにつれて CrAS を用いて抗コリン薬負荷を継続的に計測した。
死亡までの平均日数は 107 日で、平均 4.8 回の受診でデータが収集された。死期が近づくに
つれて症状をコントロールするための薬の使用量が増加するため、抗コリン薬負荷が増加す
る。抗コリン作用負荷の増加に有意に関連する症状には、口腔乾燥および集中力の困難が含ま
れた(P < 0.05)。また、抗コリン薬負荷の増加と機能低下(Australia-modified Karnofsky
Performance Scale; and quality of life)との有意な関連性も認められた(P < 0.05)。
Cetinel ら(61)は、過活動膀胱に使用される様々な抗ムスカリン薬の副作用を解析したが、
抗コリン薬負荷と口腔乾燥との間に関連は認められなかったと報告している。抗コリン薬負荷
と口腔乾燥との関連で有意差が無かったという文献は、16 件中 1 件のみであった。
以上のように、口腔機能に関しては抗コリン薬負荷の高い薬剤は口腔乾燥、嚥下機能低下、
う蝕への影響が危惧されるが、たとえ抗コリン薬負荷が低くても口腔乾燥への影響があるとの
文献もあり、高齢者への投与や長期間の服用には配慮が必要である。

5.2.6

感覚器障害(視覚障害、眼圧上昇、味覚異常、触覚異常、耳鳴りなど)

抗コリン薬の感覚器への影響に関連して、抗コリン薬リスクスケールを用いている文献は 1
件であった。高齢患者 250 人における抗コリン薬負荷とドライアイとの関連性の効果量を、4
つのリスクスケール ADS、ARS、ACoB、DBI(日本版作成では未使用)を用いて評価している
(エビデンスレベルⅣb)(32)。85 人(34%)にドライアイがみられ、ドライアイの有無でス
コアの差を評価したところ ARS、ACB、DBI で有意な差が認められ、ARS がより一致率が高かっ
た(P<0.001、Cohen’s d= 0.819)。ARS と日本版リスクスケールを比較してみると、第一世
代の抗ヒスタミン薬や三環系抗うつ薬の多くはいずれもスコア 3 であり、ドライアイのリスク
が高い薬剤と考えられる。
また、抗コリン薬の感覚器副作用について Cetinel らによる過活動膀胱治療抗コリン薬 7 剤
のランダム化比較試験では、かすみ目の発現頻度は、薬剤ごとに差はあるものの 7.7~32.4%
であった(61)。眼関連組織のムスカリンサブタイプは瞳孔括約筋 M3、虹彩括約筋 M3、毛様体
筋 M3、涙腺 M2、M3 であるが、薬剤のムスカリン選択性の違いによるかすみ目の発現頻度の傾
向はみられていない。さらにいずれも日本版抗コリン薬リスクスケールでスコア 3 であり(本
邦未発売 2 剤除く)、過活動膀胱治療抗コリン薬は、かすみ目のリスクが高い薬剤といえる。
また、今回、抗コリン薬による代表的な副作用の一つである眼圧上昇がスクリーニングされな
かったのは、閉塞隅角緑内障になりやすい患者以外では抗コリン薬の使用がほとんど眼圧に影
響しないからであり、閉塞隅角緑内障で抗コリン薬の使用が回避された可能性が考えられる。

5.2.7

排尿障害(排尿困難、尿閉、頻尿、尿失禁、尿路感染など)

33