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資料4-2 日本版抗コリン薬リスクスケール (34 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_40741.html |
出典情報 | 高齢者医薬品適正使用検討会(第18回 6/21)《厚生労働省》 |
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排尿障害の領域において、抗コリン薬リスクスケールの評価方法の現状、および抗コリン薬
リスクスケールと潜在的な薬物有害事象の関連を把握するために文献検索を行った結果、スク
リーニングされた文献は 3 件であった。
米国の泌尿器科専門施設でウロダイナミクス検査を受けた平均年齢 57 歳の女性 599 名を対
象に、服用していたすべての薬剤について ARS を用いてスコア化し、低 ARS 群(ARS≦1)と高
ARS 群(ARS≧2)の 2 群に分け、残尿感について調査した。結果は両群間に差を認めず、感度分
析を行ったところ ARS≦4 群と ARS≧5 群で残尿感に差がみられた。本研究では、抗コリン作用
を有する薬剤の使用に関連するリスクにも拘わらず、膀胱機能に対する影響は、ARS が 5 点以
上と高い場合にのみ示された(75)。台湾で定期的に神経内科通院中の中枢神経系の障害を有す
る平均年齢 70 歳代の患者 102 名を対象に、様々な過活動膀胱治療薬の有効性と有害事象が評
価された。これらの患者において過活動膀胱治療薬は良好な治療効果を示していた。短期間
(6 ヶ月間)のソリフェナシン単独、ミラベグロン単独、およびそれらの併用による加療は、
いずれも認知機能には影響を及ぼさなかった。一方、ソリフェナシン単独、およびソリフェナ
シンとミラベグロンの併用療法では口腔乾燥や急性尿閉などの副作用が多く認められた(70)。
トルコの泌尿器科専門施設において、過活動膀胱(OAB)に使用されるさまざまな抗ムスカリン
薬に対する心拍数増加の副作用が調査された。平均年齢 51 歳の OAB 患者 250 名を対象に抗ム
スカリン薬を無作為に割り付け、服用開始前と服用開始 1 週から 4 週後の心拍数が調査され
た。非選択的抗ムスカリン薬で治療された OAB 患者では心拍数が大幅に増加しており、トロ
スピウム(本邦未発売)、トルテロジン、フェソテロジンおよびプロピベリンは、他の抗ムス
カリン薬(ダリフェナシン[本邦未発売]、ソリフェナシン、およびオキシブチニン)と比較
し、心拍数が増加していた。尿閉などについては有意差を認めなかった(61)。
今回の検索結果からは、排尿障害の領域において、抗コリン薬リスクスケールに関連した報
告は、ARS を用いた 1 件のみであり、非常に高いコリン負荷で膀胱機能に影響を認めたという
ものであり、実臨床での有用性は必ずしも高いとは言えない内容であった。また、抗コリン薬
リスクスケールと関連して報告されている文献は米国の 1 件のみであり、単独の抗コリン作用
についての報告は多いものの、抗コリン薬負荷についての研究報告はほとんどなく、本領域に
おいて、抗コリン作用の蓄積が懸念される病態については、ほぼ未解決であると考えられる。
以上をまとめると、排尿障害の領域においては、抗コリン薬リスクスケールの評価方法、お
よび抗コリン薬リスクスケールと潜在的な薬物有害事象の関連について、ほとんど研究が進ん
でいないという結果であった。
5.2.8
循環器症状(心拍数増加、高血圧、心房細動、心疾患悪化など)
抗コリン薬の循環器系副作用に関して検討した文献が 6 件あった。そのうち、2 文献(76,
77)でリスクスケールを用いた循環器症状の検討が行われていた。まず Huang らのケース・ケ
ースタイムコントロール研究における台湾からの報告(76)では、データベース解析による、抗
コリン薬負荷と高齢者における急性心血管系イベントとのリスクを評価している。ACoB をリ
スク評価の基となるスケールとして使用し、ADS、ACB、KABS、Modified Anticholinergic
Cognitive Burden Scale(今回のスケールでは使用せず)のスケールによる確認も行われた。
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リスクスケールと潜在的な薬物有害事象の関連を把握するために文献検索を行った結果、スク
リーニングされた文献は 3 件であった。
米国の泌尿器科専門施設でウロダイナミクス検査を受けた平均年齢 57 歳の女性 599 名を対
象に、服用していたすべての薬剤について ARS を用いてスコア化し、低 ARS 群(ARS≦1)と高
ARS 群(ARS≧2)の 2 群に分け、残尿感について調査した。結果は両群間に差を認めず、感度分
析を行ったところ ARS≦4 群と ARS≧5 群で残尿感に差がみられた。本研究では、抗コリン作用
を有する薬剤の使用に関連するリスクにも拘わらず、膀胱機能に対する影響は、ARS が 5 点以
上と高い場合にのみ示された(75)。台湾で定期的に神経内科通院中の中枢神経系の障害を有す
る平均年齢 70 歳代の患者 102 名を対象に、様々な過活動膀胱治療薬の有効性と有害事象が評
価された。これらの患者において過活動膀胱治療薬は良好な治療効果を示していた。短期間
(6 ヶ月間)のソリフェナシン単独、ミラベグロン単独、およびそれらの併用による加療は、
いずれも認知機能には影響を及ぼさなかった。一方、ソリフェナシン単独、およびソリフェナ
シンとミラベグロンの併用療法では口腔乾燥や急性尿閉などの副作用が多く認められた(70)。
トルコの泌尿器科専門施設において、過活動膀胱(OAB)に使用されるさまざまな抗ムスカリン
薬に対する心拍数増加の副作用が調査された。平均年齢 51 歳の OAB 患者 250 名を対象に抗ム
スカリン薬を無作為に割り付け、服用開始前と服用開始 1 週から 4 週後の心拍数が調査され
た。非選択的抗ムスカリン薬で治療された OAB 患者では心拍数が大幅に増加しており、トロ
スピウム(本邦未発売)、トルテロジン、フェソテロジンおよびプロピベリンは、他の抗ムス
カリン薬(ダリフェナシン[本邦未発売]、ソリフェナシン、およびオキシブチニン)と比較
し、心拍数が増加していた。尿閉などについては有意差を認めなかった(61)。
今回の検索結果からは、排尿障害の領域において、抗コリン薬リスクスケールに関連した報
告は、ARS を用いた 1 件のみであり、非常に高いコリン負荷で膀胱機能に影響を認めたという
ものであり、実臨床での有用性は必ずしも高いとは言えない内容であった。また、抗コリン薬
リスクスケールと関連して報告されている文献は米国の 1 件のみであり、単独の抗コリン作用
についての報告は多いものの、抗コリン薬負荷についての研究報告はほとんどなく、本領域に
おいて、抗コリン作用の蓄積が懸念される病態については、ほぼ未解決であると考えられる。
以上をまとめると、排尿障害の領域においては、抗コリン薬リスクスケールの評価方法、お
よび抗コリン薬リスクスケールと潜在的な薬物有害事象の関連について、ほとんど研究が進ん
でいないという結果であった。
5.2.8
循環器症状(心拍数増加、高血圧、心房細動、心疾患悪化など)
抗コリン薬の循環器系副作用に関して検討した文献が 6 件あった。そのうち、2 文献(76,
77)でリスクスケールを用いた循環器症状の検討が行われていた。まず Huang らのケース・ケ
ースタイムコントロール研究における台湾からの報告(76)では、データベース解析による、抗
コリン薬負荷と高齢者における急性心血管系イベントとのリスクを評価している。ACoB をリ
スク評価の基となるスケールとして使用し、ADS、ACB、KABS、Modified Anticholinergic
Cognitive Burden Scale(今回のスケールでは使用せず)のスケールによる確認も行われた。
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