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資料1-2-8診断基準等のアップデート案(第49回指定難病検討委員会資料) (26 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25626.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第49回 5/16)《厚生労働省》 |
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130 先天性無痛無汗症
○ 概要
1.概要
先天性無痛無汗症は、全身の無痛を主症状とする疾患で、運動麻痺を伴わない。温痛覚障害に自律神
経障害を合併する遺伝性疾患群を、遺伝性感覚自律神経ニューロパチーと呼ぶが、このうち4型と5型が
先天性無痛無汗症に相当する(4型と5型は明確な区別が困難で臨床症状がオーバーラップすることも多
いため、両者を含める)。4型は全身の温痛覚消失に、全身の発汗低下又は消失、様々な程度の精神発達
遅滞を示す疾患であり、5型は全身の温痛覚消失を示すが発汗低下や精神発達遅滞を伴わない疾患であ
る。しかし、4型と診断されても精神発達遅滞がごく軽度の患者、5型と診断されても軽度の発汗低下を示
す患者もおり、近年これらはオーバーラップする疾患と考えられている。
2.原因
遺伝性疾患であり、常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)を示す。4型は NTRK1(Neuropathic Tyrosine Kinase
Receptor Type 1)の遺伝子変異が証明されているが、この変異が症状に結びつく詳細なメカニズムは判明
していない。5型は NGFB(Nerve Growth Factor Beta)の遺伝子変異があり、軽症の症状を示すヘテロ結合
の患者も報告されている。いずれも末梢神経の小径有髄線維(Aδ 線維)および無髄線維(C 線維)の減少
が報告されているが、中枢神経系の症状の機序は不明である。前述のごとく、近年4型と5型はオーバーラ
ップする疾患と考えられており、4型と考えられる患者で NGFB の遺伝子変異が証明されることがある。ま
た5型とほぼ同一の表現型を示し、SCN9A(Sodium Channel, Voltage-gated, Alfa Subunit)の遺伝子変異を
示す患者も報告されている。
3.症状
全身の温痛覚が消失することにより、様々な症状を引き起こす。温痛覚による防御反応が欠如するため、
皮膚、軟部組織、骨関節に様々な外傷を受けやすく、また受傷に気付かずに重症化することもある。皮膚、
軟部組織の外傷には、口腔粘膜や舌の損傷(咀嚼力の低下、齲歯、味覚障害等につながる。)、眼の角膜
損傷(角膜潰瘍点状表層角膜症などから視力低下につながる。)、全身の熱傷や凍傷を含む。骨関節では、
下肢を中心に骨折、脱臼、骨壊死、関節破壊(Charcot 関節)などが多発し、下肢機能が廃絶し、移動機能
が著しく低下する。特に4型で発汗低下がある場合は、体温コントロールがつかずに脳症を引き起こし、時
に小児期に死に至る。発汗低下は、皮膚の潰瘍形成にもつながる。また、精神発達遅滞には適応障害、広
汎性発達障害を合併することもあり、痛覚低下と相まって自傷行為が問題になることもある。また自分のみ
ならず相手の痛みへの共感も欠如するために、社会性に問題を生じる。睡眠障害、および自律神経系の症
状として、睡眠障害や周期性嘔吐症を示す患者もいる。また機序は不明であるが、易感染性が存在すると
考えられ、化膿性骨髄炎や関節炎、外科手術に伴う感染、蜂窩織炎などの合併が多い。
4.治療法
根本的な治療法はない。患者・家族の教育を通じて骨折・脱臼や熱傷などを予防し、またこれらの早期発
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○ 概要
1.概要
先天性無痛無汗症は、全身の無痛を主症状とする疾患で、運動麻痺を伴わない。温痛覚障害に自律神
経障害を合併する遺伝性疾患群を、遺伝性感覚自律神経ニューロパチーと呼ぶが、このうち4型と5型が
先天性無痛無汗症に相当する(4型と5型は明確な区別が困難で臨床症状がオーバーラップすることも多
いため、両者を含める)。4型は全身の温痛覚消失に、全身の発汗低下又は消失、様々な程度の精神発達
遅滞を示す疾患であり、5型は全身の温痛覚消失を示すが発汗低下や精神発達遅滞を伴わない疾患であ
る。しかし、4型と診断されても精神発達遅滞がごく軽度の患者、5型と診断されても軽度の発汗低下を示
す患者もおり、近年これらはオーバーラップする疾患と考えられている。
2.原因
遺伝性疾患であり、常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)を示す。4型は NTRK1(Neuropathic Tyrosine Kinase
Receptor Type 1)の遺伝子変異が証明されているが、この変異が症状に結びつく詳細なメカニズムは判明
していない。5型は NGFB(Nerve Growth Factor Beta)の遺伝子変異があり、軽症の症状を示すヘテロ結合
の患者も報告されている。いずれも末梢神経の小径有髄線維(Aδ 線維)および無髄線維(C 線維)の減少
が報告されているが、中枢神経系の症状の機序は不明である。前述のごとく、近年4型と5型はオーバーラ
ップする疾患と考えられており、4型と考えられる患者で NGFB の遺伝子変異が証明されることがある。ま
た5型とほぼ同一の表現型を示し、SCN9A(Sodium Channel, Voltage-gated, Alfa Subunit)の遺伝子変異を
示す患者も報告されている。
3.症状
全身の温痛覚が消失することにより、様々な症状を引き起こす。温痛覚による防御反応が欠如するため、
皮膚、軟部組織、骨関節に様々な外傷を受けやすく、また受傷に気付かずに重症化することもある。皮膚、
軟部組織の外傷には、口腔粘膜や舌の損傷(咀嚼力の低下、齲歯、味覚障害等につながる。)、眼の角膜
損傷(角膜潰瘍点状表層角膜症などから視力低下につながる。)、全身の熱傷や凍傷を含む。骨関節では、
下肢を中心に骨折、脱臼、骨壊死、関節破壊(Charcot 関節)などが多発し、下肢機能が廃絶し、移動機能
が著しく低下する。特に4型で発汗低下がある場合は、体温コントロールがつかずに脳症を引き起こし、時
に小児期に死に至る。発汗低下は、皮膚の潰瘍形成にもつながる。また、精神発達遅滞には適応障害、広
汎性発達障害を合併することもあり、痛覚低下と相まって自傷行為が問題になることもある。また自分のみ
ならず相手の痛みへの共感も欠如するために、社会性に問題を生じる。睡眠障害、および自律神経系の症
状として、睡眠障害や周期性嘔吐症を示す患者もいる。また機序は不明であるが、易感染性が存在すると
考えられ、化膿性骨髄炎や関節炎、外科手術に伴う感染、蜂窩織炎などの合併が多い。
4.治療法
根本的な治療法はない。患者・家族の教育を通じて骨折・脱臼や熱傷などを予防し、またこれらの早期発
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