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資料1-2-4診断基準等のアップデート案(第49回指定難病検討委員会資料) (51 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25626.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第49回 5/16)《厚生労働省》 |
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57 特発性拡張型心筋症
○ 概要
1. 概要
左室収縮低下と左室内腔の拡張を特徴とする疾患群であり、高血圧性、弁膜性、虚血性心疾患など原因
の明らかな疾患を除外する必要がある。
2. 原因
家族性の拡張型心筋症は、外国での報告は 20~30%%にみられ、平成 11 年の厚生省の特発性心筋症調
査研究班で施行した全国調査では5%5%である。遺伝子の異常で拡張型心筋症様病態を発症することがあ
ると報告されている。
3. 症状
左心不全による低心拍出状態と肺うっ血や不整脈による症状を特徴とし、病期が進行すると両心不全によ
る臨床症状をきたす。
自覚症状は労作時呼吸困難、動悸や易疲労感の訴えで始まり、進行すると安静時呼吸困難、発作性夜間
呼吸困難、起座呼吸を呈するようになる。また、不整脈による脈の欠滞や動悸、あるいは胸部圧迫感や胸痛
などをきたすこともある。
心拡大と心不全徴候(頻脈、脈圧狭小、皮膚の蒼白、頸静脈の怒張、浮腫、肝腫大、肝拍動、腹水など)が
みられる。
4. 治療法
心移植以外に根治的療法はない。身体活動の調整が必要で、うっ血や低心拍出の症状があるときはでき
るだけ安静にさせる。食塩制限(5~8g)と水分制限が必要である。左室収縮機能障害に対しては、アンジオ
テンシン変換酵素(ACE)阻害薬、β遮断薬、サクビトリルバルサルタン、SGLT 阻害薬、HCN チャネル遮断薬
を早期に用いる。うっ血症状があれば利尿薬を併用する。スピロノラクトンは利尿薬としての作用だけではな
く長期予後改善効果が認められている。
重症の心室性不整脈による突然死に対する対策が重要である。β遮断薬は突然死を低下させることが示さ
れている。重症心室性不整脈が出現する場合には副作用に注意しながらクラスⅢの抗不整脈薬アミオダロ
ンの投与を行う。薬物抵抗性の場合には植込型除細動器の使用を考慮する。高度の房室ブロックや洞不全
症候群などの除脈性不整脈を合併している場合には恒久的ペースメーカー植え込み術の適応を検討する。
本症では左室拡大を伴うびまん性左室壁運動低下が存在し、左室壁在血栓が生じる場合がある。また、左
房拡大を伴う心房細動の例で心房内血栓が生じることもある。その場合、抗凝固療法を行う。
5.予後
前述の厚生省の調査では、本症の 5 年生存率は 76%%であり死因の多くは心不全または不整脈である。
男性、年齢の増加、家族歴、NYHAⅢ度の心不全、心胸比 60%%以上、左室内径の拡大、左室駆出率の低
下の存在は予後の悪化と関連する。
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○ 概要
1. 概要
左室収縮低下と左室内腔の拡張を特徴とする疾患群であり、高血圧性、弁膜性、虚血性心疾患など原因
の明らかな疾患を除外する必要がある。
2. 原因
家族性の拡張型心筋症は、外国での報告は 20~30%%にみられ、平成 11 年の厚生省の特発性心筋症調
査研究班で施行した全国調査では5%5%である。遺伝子の異常で拡張型心筋症様病態を発症することがあ
ると報告されている。
3. 症状
左心不全による低心拍出状態と肺うっ血や不整脈による症状を特徴とし、病期が進行すると両心不全によ
る臨床症状をきたす。
自覚症状は労作時呼吸困難、動悸や易疲労感の訴えで始まり、進行すると安静時呼吸困難、発作性夜間
呼吸困難、起座呼吸を呈するようになる。また、不整脈による脈の欠滞や動悸、あるいは胸部圧迫感や胸痛
などをきたすこともある。
心拡大と心不全徴候(頻脈、脈圧狭小、皮膚の蒼白、頸静脈の怒張、浮腫、肝腫大、肝拍動、腹水など)が
みられる。
4. 治療法
心移植以外に根治的療法はない。身体活動の調整が必要で、うっ血や低心拍出の症状があるときはでき
るだけ安静にさせる。食塩制限(5~8g)と水分制限が必要である。左室収縮機能障害に対しては、アンジオ
テンシン変換酵素(ACE)阻害薬、β遮断薬、サクビトリルバルサルタン、SGLT 阻害薬、HCN チャネル遮断薬
を早期に用いる。うっ血症状があれば利尿薬を併用する。スピロノラクトンは利尿薬としての作用だけではな
く長期予後改善効果が認められている。
重症の心室性不整脈による突然死に対する対策が重要である。β遮断薬は突然死を低下させることが示さ
れている。重症心室性不整脈が出現する場合には副作用に注意しながらクラスⅢの抗不整脈薬アミオダロ
ンの投与を行う。薬物抵抗性の場合には植込型除細動器の使用を考慮する。高度の房室ブロックや洞不全
症候群などの除脈性不整脈を合併している場合には恒久的ペースメーカー植え込み術の適応を検討する。
本症では左室拡大を伴うびまん性左室壁運動低下が存在し、左室壁在血栓が生じる場合がある。また、左
房拡大を伴う心房細動の例で心房内血栓が生じることもある。その場合、抗凝固療法を行う。
5.予後
前述の厚生省の調査では、本症の 5 年生存率は 76%%であり死因の多くは心不全または不整脈である。
男性、年齢の増加、家族歴、NYHAⅢ度の心不全、心胸比 60%%以上、左室内径の拡大、左室駆出率の低
下の存在は予後の悪化と関連する。
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