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資料1-2-4診断基準等のアップデート案(第49回指定難病検討委員会資料) (60 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25626.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第49回 5/16)《厚生労働省》 |
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58 肥大型心筋症
○ 概要
1.概要
肥大型心筋症とは、原発性の心室肥大をきたす心筋疾患である。肥大型心筋症は「心室中隔の非対称
性肥大を伴う左室ないし右室、あるいは両者の肥大」と定義され、左室拡張機能低下を呈する。「左室流出
路閉塞をきたす閉塞性ときたさない非閉塞性」に分類され、前者では収縮期に左室内圧較差が生じる。常
染色体性顕性遺伝(優性遺伝)の家族歴を有す例が多い。
2.原因
心筋収縮関連蛋白(β‐ミオシン重鎖、トロポニン T または I、ミオシン結合蛋白 C など約 10 種類の蛋白)
の遺伝子異常が主な病因である。家族性例の半数以上はこれらの遺伝子異常に起因し、孤発例の一部も
同様である。しかしながら、未だ原因不明の症例も少なくない。
3.症状
本症では大部分の患者が、無症状か、わずかな症状を示すだけのことが多く、たまたま検診で心雑音や
心電図異常をきっかけに診断にいたるケースが少なくない。症状を有する場合には、不整脈に伴う動悸や
めまい、運動時の呼吸困難・胸の圧迫感などがある。また、重篤な症状である「失神」は不整脈が原因とな
る以外に、閉塞性肥大型心筋症の場合には、運動時など左室流出路狭窄の程度の悪化に伴う脳虚血によ
っても生じる。診断には、心エコー検査が極めて有用で、左室肥大の程度や分布、左室流出路狭窄の有無
や程度、心機能などを知ることができる。心エコー検査による検診は、本症と診断された血縁家族のスクリ
ーニングにも威力を発揮する。なお、確定診断のため、心臓カテーテル検査、組織像を調べるための心筋
生検なども行われる。
4.治療法
競技スポーツなどの過激な運動は禁止する。有症候例では、β遮断薬やベラパミル(ニフェジピンなどのジ
ヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬は一般的に使用しない)により症状の改善が期待できる。心室頻拍例は
植込み型除細動器の適応を考慮すべきであり、失神例も入院精査を要す。症状がない例でも、左室内圧
較差、著明な左室肥大、運動時血圧低下、濃厚な突然死の家族歴などの危険因子があれば厳密な管理
が必要である。難治性の閉塞性例では、経皮的中隔心筋焼灼術や心室筋切除術が考慮され、左室収縮能
低下(拡張相肥大型心筋症)による難治性心不全例では心移植の適応となる。
5.予後
5年生存率 91.5%、10 年生存率 81.8%(厚生省特発性心筋症調査研究班昭和 57 年度報告集)。死因
として若年者は突然死が多く、壮年~高齢者では心不全死や塞栓症死が主である。
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○ 概要
1.概要
肥大型心筋症とは、原発性の心室肥大をきたす心筋疾患である。肥大型心筋症は「心室中隔の非対称
性肥大を伴う左室ないし右室、あるいは両者の肥大」と定義され、左室拡張機能低下を呈する。「左室流出
路閉塞をきたす閉塞性ときたさない非閉塞性」に分類され、前者では収縮期に左室内圧較差が生じる。常
染色体性顕性遺伝(優性遺伝)の家族歴を有す例が多い。
2.原因
心筋収縮関連蛋白(β‐ミオシン重鎖、トロポニン T または I、ミオシン結合蛋白 C など約 10 種類の蛋白)
の遺伝子異常が主な病因である。家族性例の半数以上はこれらの遺伝子異常に起因し、孤発例の一部も
同様である。しかしながら、未だ原因不明の症例も少なくない。
3.症状
本症では大部分の患者が、無症状か、わずかな症状を示すだけのことが多く、たまたま検診で心雑音や
心電図異常をきっかけに診断にいたるケースが少なくない。症状を有する場合には、不整脈に伴う動悸や
めまい、運動時の呼吸困難・胸の圧迫感などがある。また、重篤な症状である「失神」は不整脈が原因とな
る以外に、閉塞性肥大型心筋症の場合には、運動時など左室流出路狭窄の程度の悪化に伴う脳虚血によ
っても生じる。診断には、心エコー検査が極めて有用で、左室肥大の程度や分布、左室流出路狭窄の有無
や程度、心機能などを知ることができる。心エコー検査による検診は、本症と診断された血縁家族のスクリ
ーニングにも威力を発揮する。なお、確定診断のため、心臓カテーテル検査、組織像を調べるための心筋
生検なども行われる。
4.治療法
競技スポーツなどの過激な運動は禁止する。有症候例では、β遮断薬やベラパミル(ニフェジピンなどのジ
ヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬は一般的に使用しない)により症状の改善が期待できる。心室頻拍例は
植込み型除細動器の適応を考慮すべきであり、失神例も入院精査を要す。症状がない例でも、左室内圧
較差、著明な左室肥大、運動時血圧低下、濃厚な突然死の家族歴などの危険因子があれば厳密な管理
が必要である。難治性の閉塞性例では、経皮的中隔心筋焼灼術や心室筋切除術が考慮され、左室収縮能
低下(拡張相肥大型心筋症)による難治性心不全例では心移植の適応となる。
5.予後
5年生存率 91.5%、10 年生存率 81.8%(厚生省特発性心筋症調査研究班昭和 57 年度報告集)。死因
として若年者は突然死が多く、壮年~高齢者では心不全死や塞栓症死が主である。
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