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医療政策会議報告書 (11 ページ)

公開元URL https://www.med.or.jp/nichiionline/article/010622.html
出典情報 医療政策会議報告書 公表(4/20)《日本医師会》
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章:この 2 年、パンデミックと政治の変化を経験して

経済学の核心に戻すための論考である。

合いをするのではなく、それぞれ必要な財源を確保す

なお、2021 年末に議論されていた「賃上げ優遇税制」

ることによって達成を図っていく必要がある12」ことは

などは一見、
一次分配に関する政策のようにも見えるが、

議論の大前提である。そうした前提に立って次を掲げ

その実は、租税支出(tax expenditure)と呼ばれる支払

ておく。

うべき税を免除するという技術を用いて企業側に賃金の

・‌消費税 10%の先の検討をすみやかに開始するべきであ

引き上げを求める政策である。したがって歳入のロスが

る。その際には毎年 1 ポイントの引上げも視野に入れ

生まれる。そのロス分の財源は、租税などを通じて埋め

て検討していく(2004 年年金改正後の保険料引上げを

合わせる必要があるために、
「賃上げ優遇税制」も再分配

参考)。

政策の一種と位置づけることもできる。

△△△

問題は、最近の世界的な分配重視の風潮の中で、給付
と負担の関係がきちんと意識されているかということで

前報告書の最後にある、財源調達に関する介護保険の

ある。主要国では、新型コロナウイルスへの対策による

見直しについても確認しておこう。

財政の緊急出動を踏まえ、増税を含めた財源の確保や財
政再建に向けた議論を開始している。例えば、イギリス

▽▽▽

では、今回のパンデミックの影響で悪化した財政の立て

介護保険の被保険者の見直し

直しのために 2023 年 4 月から法人税率を引き上げる法律

・‌被保険者を 40 歳以上から 20 歳以上にすることにより、

を 2021 年 6 月に成立させている。

今の 40 歳以上の人たちの負担を平準化して今後の保

先に、公的債務が増えていくことに対する財政金融政

険料の引上げ余地を作り、介護保険の財源調達力を高

策上の、将来のリスクは説明した。このリスクを回避す

めるべきである。ちなみに、介護保険は 65 歳以上の被

るためには、給付を行う今の段階から財源調達の議論を

保険者が給付費の 98%を利用しており(医療 58%)、

することは必要となる。もちろん、財源調達の議論は政

高齢期に支出が集中している側面は、年金と類似して

治的には厳しい。しかしながら、その厳しい議論に耐え

いる。なお年金では、20 歳以上が被保険者となること

うる給付に絞っていく民主主義プロセスを経て実行され

により、各年齢時における負担を平準化することに成

ていくからこそ、給付には社会的意義と民主主義的正当

功している。

性が認められるのである。
そこで前報告書に書いていた、

・‌介護保険の被保険者範囲の見直しは、将来構想として

財源についての提言も、ここで確認しておこう。

の「子育て支援連帯基金」
(略称、子育て基金)― ―年
金保険、医療保険、介護保険など各種社会保険が、自

▽▽▽

らの制度の持続可能性を高め、将来の給付水準を高め
るために子育て基金に資金を拠出する構想― ―にお

今後の政策に関する基本認識

いても重要となる。今のままでは、社会保険の中でも

財源

介護保険の 40 歳未満の現役期のみが、この連帯基金に

・‌今後、全世代型社会保障改革を進めて行くにあたって

関わらないことになるからである。

は、
「社会保障制度改革国民会議報告書」にあるように

△△△

「全世代型の社会保障への転換は、
世代間の財源の取り

12

『社会保障制度改革国民会議』(2013 年 8 月)9 頁。

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