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医療政策会議報告書 (27 ページ)
出典
公開元URL | https://www.med.or.jp/nichiionline/article/010622.html |
出典情報 | 医療政策会議報告書 公表(4/20)《日本医師会》 |
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第 3 章:日本の医療政策、そのベクトルをパンデミックの渦中に考える
図表 6 診療報酬改定率と経済成長
出所:第 3 回医療費の将来見通しに関する検討会(2007 年 3 月 22 日)資料 4
図表 6
方で財源調達者が共同でグループを作り、もう一方で医
実際の支出は予期せぬインフレーション、不景気、スト
療提供者側が共同でグループを作り、両者が拮抗して公
ライキ、伝染病などのために、計画水準から乖離する。
の場で双方独占的交渉を行いながら、物事を決めていく
計画と実際の支出額のギャップが、状況の変化にどれだ
という仕組みがつくれている。
け早く調整され得るかということは、組織のダイナミッ
結果的に、日本で言えば診療報酬改定率も、支払側の
クス(organizational dynamics)
(経営管理者層、官僚的
費用負担能力を代理する賃金や GDP の伸びがほぼ説明
硬直性の程度、予測能力)に依存する。個人の行動、組
するような医療制度ができあがることになる。図表 6 に
織、財政メカニズム、政府の政策などに惰性はつきもの
みるように、診療報酬改定率と経済成長率というふたつ
であり、そのために、意思決定がなされる時期と、そこ
の変数は、単年度ではパラレルに動いていないが、時間
で決定した意思が国民医療費に影響を与える時期との間
を 4~5 年ほどずらしていくと、診療報酬改定率は、GDP
にラグが生じる。経験的には、現行の医療費は、数年間
の伸び率との間に高い相関が観察されることになる。
にわたる GDP 成長率の遅延関数(delayed function)と
この傾向は国際的にみられる。そして、なぜタイムラ
なる1」
。
グが生まれるのかについては、医療経済学者ゲッツェン
なお、ゲッツェンは、一国の医療費は、医療ニーズで
は、次のように答えている。
はなく富が決めるということを、印象深い表現で語って
「医療制度に関連する一連の意思決定は、政府、医療専
もいる― ―
「仮にニーズが医療費総額を決めるのであれ
門職者、使用者、国民の間でのある種の暗黙的長期契約
ば、バングラディッシュの人びとは― ―彼らの多くはな
(implicit long-term contract)である。国民医療費をど
んらかの病気にかかっている― ―、ボストンの人びとよ
の程度にするべきかという計画は、現在の収入に関する
りも医療を多く消費することになろう。しかし、事実は
期待にもとづいてなされる。そうした計画は、前年にな
そうではない。なぜならば、病気ではなく富が一国の医
された意思決定― ―累積した黒字、赤字や賃金の変化率
療水準を決めるのであり、それゆえ、不幸にも貧しいバ
や生産費、技術など― ―を反映することになる。しかし、
ングラディッシュの人びとは、医療を受けずに過ごさな
1
Getzen(1995),T.E.“Macroeconomics and Health Care Spending,”in J. M. Pogodzinski, ed, Readings in Public Policy, Oxford:Blackwell, 35-36.
23
図表 6 診療報酬改定率と経済成長
出所:第 3 回医療費の将来見通しに関する検討会(2007 年 3 月 22 日)資料 4
図表 6
方で財源調達者が共同でグループを作り、もう一方で医
実際の支出は予期せぬインフレーション、不景気、スト
療提供者側が共同でグループを作り、両者が拮抗して公
ライキ、伝染病などのために、計画水準から乖離する。
の場で双方独占的交渉を行いながら、物事を決めていく
計画と実際の支出額のギャップが、状況の変化にどれだ
という仕組みがつくれている。
け早く調整され得るかということは、組織のダイナミッ
結果的に、日本で言えば診療報酬改定率も、支払側の
クス(organizational dynamics)
(経営管理者層、官僚的
費用負担能力を代理する賃金や GDP の伸びがほぼ説明
硬直性の程度、予測能力)に依存する。個人の行動、組
するような医療制度ができあがることになる。図表 6 に
織、財政メカニズム、政府の政策などに惰性はつきもの
みるように、診療報酬改定率と経済成長率というふたつ
であり、そのために、意思決定がなされる時期と、そこ
の変数は、単年度ではパラレルに動いていないが、時間
で決定した意思が国民医療費に影響を与える時期との間
を 4~5 年ほどずらしていくと、診療報酬改定率は、GDP
にラグが生じる。経験的には、現行の医療費は、数年間
の伸び率との間に高い相関が観察されることになる。
にわたる GDP 成長率の遅延関数(delayed function)と
この傾向は国際的にみられる。そして、なぜタイムラ
なる1」
。
グが生まれるのかについては、医療経済学者ゲッツェン
なお、ゲッツェンは、一国の医療費は、医療ニーズで
は、次のように答えている。
はなく富が決めるということを、印象深い表現で語って
「医療制度に関連する一連の意思決定は、政府、医療専
もいる― ―
「仮にニーズが医療費総額を決めるのであれ
門職者、使用者、国民の間でのある種の暗黙的長期契約
ば、バングラディッシュの人びとは― ―彼らの多くはな
(implicit long-term contract)である。国民医療費をど
んらかの病気にかかっている― ―、ボストンの人びとよ
の程度にするべきかという計画は、現在の収入に関する
りも医療を多く消費することになろう。しかし、事実は
期待にもとづいてなされる。そうした計画は、前年にな
そうではない。なぜならば、病気ではなく富が一国の医
された意思決定― ―累積した黒字、赤字や賃金の変化率
療水準を決めるのであり、それゆえ、不幸にも貧しいバ
や生産費、技術など― ―を反映することになる。しかし、
ングラディッシュの人びとは、医療を受けずに過ごさな
1
Getzen(1995),T.E.“Macroeconomics and Health Care Spending,”in J. M. Pogodzinski, ed, Readings in Public Policy, Oxford:Blackwell, 35-36.
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