よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


医療政策会議報告書 (15 ページ)

公開元URL https://www.med.or.jp/nichiionline/article/010622.html
出典情報 医療政策会議報告書 公表(4/20)《日本医師会》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

第 1 章:資本主義経済の変化とコロナ禍での需要創出

一人当たり家計消費

望ましい政策2

(10万円)
25.00

96~8 アジア危機
97 消費税 (3→5%)
90
89 消費税 (3%)

20.00

15.00

80

14 消費税 (5 →8%)
00

公的事業
民間生産の代替物ではない
生活の質の向上

10~18

2011 大震災
2008 リーマンショック

10.00

芸術・観光インフラ・教育・保育・医療・介護・健康
再生可能エネルギー

70

金融危機回避

5.00

0.00
0.00

20.00

40.00

60.00

80.00

100.00

必要な財政資金調達

民間消費=300兆円/年
増税幅=30~40兆円赤字/年=消費税10%分

120.00

一人当たり家計純資産 (10万円)

図表 8

図表 9

はじめに、カネを配っても効果がないことは、図表 8

つまり、今までの生活パターンが全く変わり、従来の製

から分かります。この図表の横軸は 1 人当たりの家計純

品は無意味になったので、それらを全部捨てて、新たな

資産、縦軸は 1 人当たりの家計消費を示しています。こ

生活パターンを始めることになるわけです。これは従来

れを見ると、日本では、1990 年までは家計の純資産が増

の物が無力化して、まったく新しい魅力的な物が現れた

えていくと同時に消費も増えていることがわかります。

ことを意味します。最近の例でそれに近いのは、スマー

ところが、90 年以降は、1 人当たりの家計純資産が大幅

トフォンです。

に増えていっても、消費には回っていかない。家計純資

しかし、生活パターンを一変させるような消費財を作

産の合計も 90 年頃は 600 兆円であったのが、最近では

るのは、簡単ではありません。その代わりになるのが公

1,600 兆円にまでなって、1,000 兆円も増えたのに、消費

的事業です(図表 9)。公的事業といっても、民間生産物

は全然増えていません。

の代替品では、民間から政府に生産を移すだけで、経済

1,000 兆円増えても消費を増やさないのですから、消費

活動全体は変わりません。また、生産効率を上げるよう

税減税を行ったり、一律給付金を配ったりしても、消費

な産業道路などのインフラ投資では、かえって総需要不

に影響がないことは明らかです。しかし、人々は、使わ

足が激化します。民間生産物の代替品でも生産インフラ

なくてもカネはほしいわけですから、これらのバラマキ

でもなく、生活の質を直接上げるものがよく、それには

政策はある程度支持される。
典型的なポピュリズムです。

芸術・観光・教育・保育・医療・介護・環境などがあり

次に、新しい消費財を作れば人々の購買意欲が高まる

ます。道路を作るなら観光道路がいいということです。

でしょうか(図表 7 の 2)

。たとえば、今まで 2 個食べ

環境については、最近、自動車産業に関してエンジン

て得られた満足を 1 個食べただけで得られるような新製

全廃、EV 転換という方針が打ち出されました。これは、

品を、同じ労働投入量で生産できるようになったとしま

先ほどの「既製品を捨てて、新製品にしましょう」とい

す。この場合、人々は半分食べればよいので需要は半減

う産業政策で、非常に効果的です。有効な需要喚起とい

します。つまり、これは生産性が 2 倍になった場合と同

う点では、再生可能エネルギーも同じです。
「何年何月ま

じ効果を持ち、人が余って、かえって不況はひどくなっ

でに全部再生可能エネルギーに」と言ったら、やはり大

てしまいます。このようなマイナス効果は、消費の効率

きな需要創出になります。

をよくすることによって、それを買うことのできるカネ

5.コロナ禍がもたらす需要減少

の魅力も並行して上がってしまうために起こります。
そのため、消費を喚起する新製品とは、既存の消費を

つぎに、コロナ禍の経済政策を考えてみましょう(図
表 10)


効率化するものではなく、無力化するものです。たとえ
ば高度成長期の電化製品の普及では、掃除機はほうきに

コロナ禍の需要への効果とは、第 1 に、感染拡大への

取って代わり、洗濯機は洗濯板に取って代わりました。

不安や自粛圧力などで、強制的に需要を圧縮したという

11