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医療政策会議報告書 (24 ページ)

公開元URL https://www.med.or.jp/nichiionline/article/010622.html
出典情報 医療政策会議報告書 公表(4/20)《日本医師会》
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第3章

日本の医療政策、
そのベクトルを
パンデミックの渦中に考える
権丈 善一(慶應義塾大学商学部教授)
医療政策におけるある種の法則

医療制度は内生的

自然科学の世界とは違い、人が大きく関わる世の中で

これをどのように解釈すればいいのか。その理由を問

の法則はなかなか成立しづらい。そうした中、医療の世

うて、1977 年に、医療経済学者ニューハウスが書いた論

界の 1 人当たり医療費はどういうメカニズムで決まって

文がある。

いるのか、何が 1 人当たり医療費の水準を決めているか

ニューハウスが、1977 年に提示した仮説は、医療制度

という研究は、長く世界で展開されており、広く共有さ

は内生的であるというものである。

れている結論がある。それは、1 人当たり医療費は 1 人

図表 1 を参照してもらいたい。

当たり所得がほぼ 9 割決めているということである。詳

たとえば、医療制度が変わる方向性として、イタリア

しくは「総医療費水準の国際比較と決定因子をめぐる論

では、医療財源の調達者が、患者の費用負担者であった

点と実証研究」『医療経済学の基礎理論と論点』(2006)

制度(つまりは日本のような公的医療保険者)から、公

にまとめている。

的財源調達者の役割が大きくなっていき、財源調達者は

所得が大きく伸びるときには医療費も大きく伸び、所

医療供給の所有者へと変化していったりする。また、ポ

得の伸びが鈍化すると医療費の伸びも鈍化する。公的な

ルトガル、ギリシャ、スペインは、医療の財源調達者が、

医療保障制度をもつ国の中では、その年の医療費が高齢

古くは、医療供給との契約者であったのが、ここも、医

化水準の高いところに流れる、病床や医師が多いところ

療供給の所有者へと変化していった。

に流れている事実は観察できる。だが、1 国全体の医療

図表 2 を見ると、外来部門における医療費支払方式に

費の水準は一体どのように決まっているのかというと、

おいては、出来高払いが人頭払いに変わり、人頭払いが

1 人当たり所得が決めている。これはどうもそういうも

給与支払に変わるという変化もあった。これは、どの制

のであるようなのである。

度が良いか悪いかを論じているわけではなく、所得が大
幅に鈍化していったとき、その所得の伸びと大きく乖離

図表 1 医療制度の変化の方向Ⅰ

出所:『医療年金問題の考え方――再分配政策の政治経済学Ⅲ』(2006)、88 頁
図表 1

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