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医療政策会議報告書 (8 ページ)
出典
公開元URL | https://www.med.or.jp/nichiionline/article/010622.html |
出典情報 | 医療政策会議報告書 公表(4/20)《日本医師会》 |
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序
章:この 2 年、パンデミックと政治の変化を経験して
招く懸念があります」
(m3.com 医療維新「片峰茂・医師
に向けて取り組みます。その上で、私が目指すのは、
需給分科会座長に聞く Vol.1「医師過剰時代、いずれくる
新しい資本主義の実現です。
ことは間違いない」
(2022 年 1 月 18 日)
。
新自由主義的な政策については、富めるものと、富
これまで医師の総数を増やしてみたが、偏在問題は解
まざるものとの深刻な分断を生んだ、といった弊害が
決しなかった― ―医師需給分科会が始まった時のメン
指摘されています。世界では、健全な民主主義の中核
バーの共通した問題意識であった。そうした医師需給分
である中間層を守り、気候変動などの地球規模の危機
科会・片峰座長の考えに理解を示すであろう日本医師会
に備え、企業と政府が大胆な投資をしていく。そうし
も、医学部定員と、先に「地域医療構想の医師配置版」
た、新しい時代の資本主義経済を模索する動きが始
で述べた医師偏在問題に関する政策形成に積極的に関
まっています。
わっていってもらいたい。
△△△
政治環境の変化
政治の世界においては、2 年前とはベクトルの方向性
次に、前期の医療政策会議報告書から 2 年を経る中で、
そのものが変わったようである。そうした中、2 年前の
社会経済政策を巡る潮流に大きな変化が起こっている。
医療政策会議報告書の内容では、客観的な情勢とのズレ
次のバイデン米大統領の演説からもその変化をうかがい
が生まれる事態もでてきている。
知ることができる。
前期の報告書がまとめられた 2 年前は、二木立日本福
祉大学名誉教授が書いていた『「千三つ官庁」対「現業官
▽▽▽
庁」
』6 における前者が主導していた医療政策が意識され
バイデン米大統領の議会演説(2021 年 4 月 27 日)
た文章が、報告書の中に多くあった。そうした政策は、
ウォール街にはいい者たちがいるが、ウォール街が
予防で医療費は抑制できる、抑制された医療費で財源問
この国を作ったのではない。中間層がこの国を作った
題は解決できる、病気になるのは自己責任、医療は、予
のだ。
防で若返った人たちを労働力として経済成長に貢献させ
誰も、仕事や給料を得ることと、自分自身や親、配
るためにある、ゆえに既に病気になっているひとたちが
偶者、子供など大切な人の世話をすることのどちらか
軽視されてしまうといった要素を含むものであった。そ
を選ばざるを得ないような状況にあるべきではない。
うした医療政策は、「『現代優生学』の脅威」という本の
米国民の皆さん、
(富裕層が豊かになれば、低所得層
第 5 章「『生きる権利』がないがしろにされる社会」に書
にも効果が波及するという)トリクルダウン理論は、
かれているように、
「財政難や労働力不足といった民衆の
一度も機能したことがない。底辺を引き上げ、中間層
不安に訴えかけるような“ポピュリズム医療政策”
」でも
を起点に経済を成長させるときだ。
あった。そして、
『現代優生学の脅威』で、著者の池田清
△△△
彦氏は、
「現代優生学」が引き起こした犯罪の極みと言う
べき事件として、
「津久井やまゆり園」の事件をあげてい
日本においても米国と同じような変化が起こってい
る。著者の池田氏は、
「経済合理性に基づき、重度障害者
る。バイデン大統領の演説から 5 ヶ月ほど経った 10 月 8
や終末期の高齢者への支出を削減しようという考えは、
日、岸田文雄新首相は所信表明演説で次のように語って
いまや各所で叫ばれるようになりました」と論じている。
いる。
ポピュリズム医療政策は、数年をかけてそうした風潮を
生んでしまった。しかし、前期の医療政策会議報告書か
▽▽▽
ら 2 年経った今、政治環境が変化した。ゆえに、医療政
岸田文雄新首相の所信表明演説(2021 年 10 月 8 日)
策のあり方も変わってきており、医療政策会議が前期の
経済をしっかり立て直します。そして、財政健全化
報告書で批判していた諸々の論点が、過去のものとなり
6
二木論文(2020)「「千三つ官庁」対「現業官庁」――経産省と厚労省の医療・社会保障改革スタンスの 3 つの違い」『平成 30 年・令和
元年医療政策会議報告書』
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章:この 2 年、パンデミックと政治の変化を経験して
招く懸念があります」
(m3.com 医療維新「片峰茂・医師
に向けて取り組みます。その上で、私が目指すのは、
需給分科会座長に聞く Vol.1「医師過剰時代、いずれくる
新しい資本主義の実現です。
ことは間違いない」
(2022 年 1 月 18 日)
。
新自由主義的な政策については、富めるものと、富
これまで医師の総数を増やしてみたが、偏在問題は解
まざるものとの深刻な分断を生んだ、といった弊害が
決しなかった― ―医師需給分科会が始まった時のメン
指摘されています。世界では、健全な民主主義の中核
バーの共通した問題意識であった。そうした医師需給分
である中間層を守り、気候変動などの地球規模の危機
科会・片峰座長の考えに理解を示すであろう日本医師会
に備え、企業と政府が大胆な投資をしていく。そうし
も、医学部定員と、先に「地域医療構想の医師配置版」
た、新しい時代の資本主義経済を模索する動きが始
で述べた医師偏在問題に関する政策形成に積極的に関
まっています。
わっていってもらいたい。
△△△
政治環境の変化
政治の世界においては、2 年前とはベクトルの方向性
次に、前期の医療政策会議報告書から 2 年を経る中で、
そのものが変わったようである。そうした中、2 年前の
社会経済政策を巡る潮流に大きな変化が起こっている。
医療政策会議報告書の内容では、客観的な情勢とのズレ
次のバイデン米大統領の演説からもその変化をうかがい
が生まれる事態もでてきている。
知ることができる。
前期の報告書がまとめられた 2 年前は、二木立日本福
祉大学名誉教授が書いていた『「千三つ官庁」対「現業官
▽▽▽
庁」
』6 における前者が主導していた医療政策が意識され
バイデン米大統領の議会演説(2021 年 4 月 27 日)
た文章が、報告書の中に多くあった。そうした政策は、
ウォール街にはいい者たちがいるが、ウォール街が
予防で医療費は抑制できる、抑制された医療費で財源問
この国を作ったのではない。中間層がこの国を作った
題は解決できる、病気になるのは自己責任、医療は、予
のだ。
防で若返った人たちを労働力として経済成長に貢献させ
誰も、仕事や給料を得ることと、自分自身や親、配
るためにある、ゆえに既に病気になっているひとたちが
偶者、子供など大切な人の世話をすることのどちらか
軽視されてしまうといった要素を含むものであった。そ
を選ばざるを得ないような状況にあるべきではない。
うした医療政策は、「『現代優生学』の脅威」という本の
米国民の皆さん、
(富裕層が豊かになれば、低所得層
第 5 章「『生きる権利』がないがしろにされる社会」に書
にも効果が波及するという)トリクルダウン理論は、
かれているように、
「財政難や労働力不足といった民衆の
一度も機能したことがない。底辺を引き上げ、中間層
不安に訴えかけるような“ポピュリズム医療政策”
」でも
を起点に経済を成長させるときだ。
あった。そして、
『現代優生学の脅威』で、著者の池田清
△△△
彦氏は、
「現代優生学」が引き起こした犯罪の極みと言う
べき事件として、
「津久井やまゆり園」の事件をあげてい
日本においても米国と同じような変化が起こってい
る。著者の池田氏は、
「経済合理性に基づき、重度障害者
る。バイデン大統領の演説から 5 ヶ月ほど経った 10 月 8
や終末期の高齢者への支出を削減しようという考えは、
日、岸田文雄新首相は所信表明演説で次のように語って
いまや各所で叫ばれるようになりました」と論じている。
いる。
ポピュリズム医療政策は、数年をかけてそうした風潮を
生んでしまった。しかし、前期の医療政策会議報告書か
▽▽▽
ら 2 年経った今、政治環境が変化した。ゆえに、医療政
岸田文雄新首相の所信表明演説(2021 年 10 月 8 日)
策のあり方も変わってきており、医療政策会議が前期の
経済をしっかり立て直します。そして、財政健全化
報告書で批判していた諸々の論点が、過去のものとなり
6
二木論文(2020)「「千三つ官庁」対「現業官庁」――経産省と厚労省の医療・社会保障改革スタンスの 3 つの違い」『平成 30 年・令和
元年医療政策会議報告書』
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