終 章

おわりに
長瀬

清（北海道医師会顧問）

今期（令和 2、3 年度）の日本医師会医療政策会議は、

の時期にまた新たな変異株オミクロンが発生し、また、

令和 2 年 11 月 13 日の第 1 回会議に始まり、全 5 回の予

長い年末年始の休みによる活発な人の往来、会合の機会

定が組まれました。

の増加で全世界に拡大しています。100 年前にスペイン

会議は、コロナ禍により、Web と対面のハイブリッド

風邪が今回と同様の様相を示し、その後に世界大恐慌と

形式で行うことになりました。

世界大戦が勃発しました。歴史の繰り返しが心配されま

令和元年末に、中国湖北省武漢市に発した新型コロナ

す。今回の日医の医療政策会議のテーマは重要です。こ

ウイルス感染症は韓国、日本、東南アジア、欧州、米国

れからの 20 年先の日本は確実に顕著な少子高齢社会と

等全世界に急速に蔓延。未知の感染で、行政も、医療関

なり、今回の諮問について有効な対応が求められます。

係者も、対応に暗中模索の状況でした。その混乱の最中

社会保障制度の充実と、経済の活性化です。現在、平均

に新たに日本医師会（日医）会長に選出された中川俊男

寿命が男女とも 90 歳前後で、100 歳を超える人も多い。

会長は、本会議が日医にとって最重要会議として継続設

また高齢者の資産所有は高く、一方、資産活用度が低い

置としました。会議の冒頭に、進行役として議長には慶

と言われます。高齢者の活力に期待したい。今回の会議

應義塾大学商学部の権丈善一教授、副議長に小職が中川

に先立って、政治では総理が菅氏より岸田氏へとバトン

日医会長から指名されました。

タッチされました。新首相は政治の目指す方向を新資本

次いで、会長より議長に対して諮問書が手渡されまし

主義から新自由主義社会へと転換するとしました。

た。

2040 年に向けて急速な人口減少の進む地域の社会保

諮問は「新しい時代に社会保障と経済はどう変わるの

障のあり方とそれを支える経済がどうあるべきか問題で

か」で、新型コロナウイルス蔓延というパンデミックの

す。

なか、次の新たな時代を迎え、対応を迫られている私た

新型コロナウイルス感染症が三波、四波、五波、そし

ちにとって、まさに時宜を得たテーマでした。

て第六波と畳みかけるように押し寄せる中、医療界が一

医療政策会議の委員は、政治、経済専門の学者 3 名、

致団結してこの難局を凌ぎ、国を挙げての懸命な経済活

都道府県医師会長 13 名の計 16 名で構成されました。

動と、マスクの着用、ソーシャルディスタンス遵守等の

新型コロナウイルス感染症が発生してから、マスク着

自己防御でこれらの波に耐えています。新型コロナウイ

用、手指の消毒、他者との密な接触を避ける等の自己防

ルス感染症の収束の目途が立っていませんが、勝ち抜く

御に加え、
日本では緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置、

ためにマスクの着用、ソーシャルディスタンスの遵守、

海外ではロックダウン等の感染症対策が行われました。

大人数の会合は避けるなどの自己防御の基本を守り、加

感染症対策と経済活動とは裏腹の関係にあり、強力な感

えてワクチンの開発・接種や治療薬の早期開発への努力

染症対策を実行すると、
経済への抑制が強く表れるため、

が進められています。

経済活動を考慮しすぎた結果、感染が拡大するという状

その間にも新型コロナウイルスは、変異を繰り返し、

況が世界中に見られました。この間にワクチンの製造と

しぶとく生き延びています。日医は地域医療計画の 5 疾

接種、治療薬の開発、使用が進み、第五波の沈静化がみ

病 5 事業に新興感染症を加えることを主張し、新たに 6

られ、経済活動も立ち直りの兆しが見えてきました。こ

事業とさせた素早い対応は評価されます。コロナ禍に負

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