よむ、つかう、まなぶ。
資料1-2-2診断基準等のアップデート案(第49回指定難病検討委員会資料) (54 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25626.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第49回 5/16)《厚生労働省》 |
ページ画像
ダウンロードした画像を利用する際は「出典情報」を明記してください。
低解像度画像をダウンロード
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
27 特発性基底核石灰化症
○ 概要
1.概要
1930 年、ドイツの病理学者 Theodor Fahr(1877~1945)が病理学的な症例報告をして、その名前が病名
につけられている。しかし、ファール(Fahr)病という病名は疾患概念として曖昧なところがあり、これまでも
多くの名称が用いられてきたが、最近、海外では familial idiopathic basal ganglia calcification(FIBGC)、現
在、海外では主に primary familial brain calcification(PFBC)など様々なの名称が使われている。おり、国際
的な名称、診断基準の統一が必要である
本疾患は、両側基底核に明らかな病的な石灰化を認め、下記の診断基準にある鑑別疾患がなされたも
のを特発性基底核石灰化症(Idiopathic basal ganglia calcification:IBGC)と定義する。さらに、家族例(家系
内に複数の同様の患者が存在する。)と判明した症例や、後述のや遺伝子異常が判明した症例は、家族性
特発性基底核石灰化症(familial Idiopathicidiopathic basal ganglia calcification:FIBGC)に分類する。
当初、孤発例と思われた症例もその後の臨床的検索から、家族例と判明する症例も存在すると考えられ、
今後、家族例を主に更なる原因遺伝子が判明していくものと思われる PFBC と同義である。
2.原因
FIBGC 症例において、リン酸トランスポーターの 1つである type III sodium-dependent phosphate
transporter 2(PiT2)を code する遺伝子 SLC20A2 の変異が報告された。日本人の症例においても、家族例
で半数にこの遺伝子変異を認め、病態解明への大きな milestone となった。さらに血小板由来成長因子
(platelet-derived growth factor:PDGF)のレセプターの subunit βを code する遺伝子 PDGFRB の変異も報
告された。続いて、PDGF 受容体の重要な ligand の1つである PDGF-B を code する遺伝子 PDGFB の変異
についても報告された。最近、原因遺伝子として XPR-1 遺伝子の変異が報告されたが、本邦ではまだ確認
されていないさらに PDFGRB、PDGFB、XPR1といった常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式、MYORG、JAM2
といった常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式の原因遺伝子も報告されている。
3.症状
無症状からパーキンソン症状など錐体外路症状、小脳症状、精神症状(前頭葉症状等)、認知症症状を
きたす症例まで極めて多様性がある。若い人で頭痛、てんかんを認めることも少なくない。本疾患は若年発
症例もあり、緩徐進行性である。また、偶発的に頭部 CT 所見から見つかることもある。発作性運動誘発性
舞踏アテトーゼ(paroxysmal kinesigenic choreoathetosis:PKCdyskinesia:PKD)を症状とする場合もある。中
には、中年以降に認知症を呈する小阪・柴山病(Diffuse neurofibrillary tangles with calcification:DNTC)と
鑑別に苦慮する症例も少なくない。DNTC は剖検では側頭葉、前頭葉に高度な脳葉萎縮を来すが、典型的
な IBGC でも前頭葉の血流低下を呈する症例が散見される。DNTC では頭部 CT 画像上の石灰化は点状
から斑状のものまで報告されているが、IBGC で報告されているような際立った石灰化の報告、また家族例
の報告はまだない。
- 54-
○ 概要
1.概要
1930 年、ドイツの病理学者 Theodor Fahr(1877~1945)が病理学的な症例報告をして、その名前が病名
につけられている。しかし、ファール(Fahr)病という病名は疾患概念として曖昧なところがあり、これまでも
多くの名称が用いられてきたが、最近、海外では familial idiopathic basal ganglia calcification(FIBGC)、現
在、海外では主に primary familial brain calcification(PFBC)など様々なの名称が使われている。おり、国際
的な名称、診断基準の統一が必要である
本疾患は、両側基底核に明らかな病的な石灰化を認め、下記の診断基準にある鑑別疾患がなされたも
のを特発性基底核石灰化症(Idiopathic basal ganglia calcification:IBGC)と定義する。さらに、家族例(家系
内に複数の同様の患者が存在する。)と判明した症例や、後述のや遺伝子異常が判明した症例は、家族性
特発性基底核石灰化症(familial Idiopathicidiopathic basal ganglia calcification:FIBGC)に分類する。
当初、孤発例と思われた症例もその後の臨床的検索から、家族例と判明する症例も存在すると考えられ、
今後、家族例を主に更なる原因遺伝子が判明していくものと思われる PFBC と同義である。
2.原因
FIBGC 症例において、リン酸トランスポーターの 1つである type III sodium-dependent phosphate
transporter 2(PiT2)を code する遺伝子 SLC20A2 の変異が報告された。日本人の症例においても、家族例
で半数にこの遺伝子変異を認め、病態解明への大きな milestone となった。さらに血小板由来成長因子
(platelet-derived growth factor:PDGF)のレセプターの subunit βを code する遺伝子 PDGFRB の変異も報
告された。続いて、PDGF 受容体の重要な ligand の1つである PDGF-B を code する遺伝子 PDGFB の変異
についても報告された。最近、原因遺伝子として XPR-1 遺伝子の変異が報告されたが、本邦ではまだ確認
されていないさらに PDFGRB、PDGFB、XPR1といった常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式、MYORG、JAM2
といった常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式の原因遺伝子も報告されている。
3.症状
無症状からパーキンソン症状など錐体外路症状、小脳症状、精神症状(前頭葉症状等)、認知症症状を
きたす症例まで極めて多様性がある。若い人で頭痛、てんかんを認めることも少なくない。本疾患は若年発
症例もあり、緩徐進行性である。また、偶発的に頭部 CT 所見から見つかることもある。発作性運動誘発性
舞踏アテトーゼ(paroxysmal kinesigenic choreoathetosis:PKCdyskinesia:PKD)を症状とする場合もある。中
には、中年以降に認知症を呈する小阪・柴山病(Diffuse neurofibrillary tangles with calcification:DNTC)と
鑑別に苦慮する症例も少なくない。DNTC は剖検では側頭葉、前頭葉に高度な脳葉萎縮を来すが、典型的
な IBGC でも前頭葉の血流低下を呈する症例が散見される。DNTC では頭部 CT 画像上の石灰化は点状
から斑状のものまで報告されているが、IBGC で報告されているような際立った石灰化の報告、また家族例
の報告はまだない。
- 54-