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【別添】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1版) (11 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00332.html |
出典情報 | 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1版)」の周知について(4/28付 事務連絡)《厚生労働省》 |
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●新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き
3
別冊
罹患後症状のマネジメント・第1版 ● 3 呼吸器症状へのアプローチ
呼吸器症状へのアプローチ
1.はじめに
呼吸器系の罹患後症状は,呼吸困難・息苦しさを筆頭に,咳,痰,咽頭痛が多い.原因はさ
まざまであり,低酸素血症を伴う場合とそうでない場合がある.問診と身体診察で診断を絞り
込み,器質化肺炎,気胸・縦郭気腫,心疾患(心不全,虚血性心疾患など)
,肺炎,肺血栓塞栓
症,うつ・不安症(「精神症状へのアプローチ」参照)など,原因の鑑別を進める.
必要に応じて基本的な検査〔胸部単純写真,心電図検査,血液検査(CBC,BNP,CPK,D
ダイマー含む),経皮的酸素飽和度測定など〕を行う.問診や身体診察で鑑別診断が絞り込めな
い場合には,基本的検査を積極的に進め,それでも原因がわからない場合や 3 ~ 6 カ月症状が
持続する場合は専門医に紹介することも考慮する.
罹患後症状の持続期間はさまざまであるが,時間的経過で回復することが多い.罹患後症状
のうち原因が判明した場合はその原因に対する治療を,そうでないものについては対症療法と
ともにリハビリや精神的ケアなども検討しつつ,フォローアップを継続する.
2.科学的知見
中等症以上の日本人を対象として経時的な肺機能と画像を検討する研究(厚生労働科学特別
研究事業横山班中間報告)において認められた症状は,発症急性期には,①発熱(86.9 %)
,
②咳(67.3 %),③倦怠感(64.1 %)の順に多かったが,退院 3 カ月後には,①筋力の低
下の自覚(53 %),②呼吸困難(30 %)
,③倦怠感(25 %)
,④喀痰(20 %)の順に認め
た.CT 画像では,退院 3 カ月後でも半数以上で異常所見を認め,多くはすりガラス影など急
性期肺炎の残存陰影であった.画像所見は肺機能異常を予測するが,呼吸困難とはあまり関
連していなかった.肺機能障害は重症度に依存して認められ,拘束性障害が約 10 %,拡散障
害(DLco<80 %)はより頻度が高く 20 % 以上,重症例では 50% 以上に認められた.一方,
DLco/VA は重症でも約 15 %に認めたにすぎず,DLco の低下は換気面積の減少が大きな因子
であると考えられた.
海外からの報告でも,上記の結果と矛盾しないものであった.まず,罹患後症状として,呼
吸困難は 20 ~ 30 % に認め,呼吸器系では最も頻度の高い症状であった.その頻度は緩やかに
急性期の重症度に依存するものの,酸素投与期間と相関せず,また ICU 入室者が一般病床入院
患者より頻度が高いという結果でもなかった.呼吸困難の機序は多様であり,肺実質障害や心
血管障害,筋力低下などが含まれる.咳も遷延することがあるが頻度は低く,迷走神経を介し
た,あるいは脳内の神経炎症による可能性が指摘されている.過換気症候群も知られているが,
その頻度,および定義や診断基準も明確ではなく,心理的なトラウマの関与が指摘されている.
肺機能検査における機能低下の頻度は重症度に依存し,特に肺拡散能が障害されやすいこと
が報告されている.50 論文のメタ解析では,肺機能検査では拡散障害が 38 %,拘束性換気障
害は 17% で,時間経過と頻度の関連は有意ではなかった.一方,経時的観察においては,症
状やこれらの検査所見は時間とともに軽快していくが,1 年経過しても残存する例もある.
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別冊
罹患後症状のマネジメント・第1版 ● 3 呼吸器症状へのアプローチ
呼吸器症状へのアプローチ
1.はじめに
呼吸器系の罹患後症状は,呼吸困難・息苦しさを筆頭に,咳,痰,咽頭痛が多い.原因はさ
まざまであり,低酸素血症を伴う場合とそうでない場合がある.問診と身体診察で診断を絞り
込み,器質化肺炎,気胸・縦郭気腫,心疾患(心不全,虚血性心疾患など)
,肺炎,肺血栓塞栓
症,うつ・不安症(「精神症状へのアプローチ」参照)など,原因の鑑別を進める.
必要に応じて基本的な検査〔胸部単純写真,心電図検査,血液検査(CBC,BNP,CPK,D
ダイマー含む),経皮的酸素飽和度測定など〕を行う.問診や身体診察で鑑別診断が絞り込めな
い場合には,基本的検査を積極的に進め,それでも原因がわからない場合や 3 ~ 6 カ月症状が
持続する場合は専門医に紹介することも考慮する.
罹患後症状の持続期間はさまざまであるが,時間的経過で回復することが多い.罹患後症状
のうち原因が判明した場合はその原因に対する治療を,そうでないものについては対症療法と
ともにリハビリや精神的ケアなども検討しつつ,フォローアップを継続する.
2.科学的知見
中等症以上の日本人を対象として経時的な肺機能と画像を検討する研究(厚生労働科学特別
研究事業横山班中間報告)において認められた症状は,発症急性期には,①発熱(86.9 %)
,
②咳(67.3 %),③倦怠感(64.1 %)の順に多かったが,退院 3 カ月後には,①筋力の低
下の自覚(53 %),②呼吸困難(30 %)
,③倦怠感(25 %)
,④喀痰(20 %)の順に認め
た.CT 画像では,退院 3 カ月後でも半数以上で異常所見を認め,多くはすりガラス影など急
性期肺炎の残存陰影であった.画像所見は肺機能異常を予測するが,呼吸困難とはあまり関
連していなかった.肺機能障害は重症度に依存して認められ,拘束性障害が約 10 %,拡散障
害(DLco<80 %)はより頻度が高く 20 % 以上,重症例では 50% 以上に認められた.一方,
DLco/VA は重症でも約 15 %に認めたにすぎず,DLco の低下は換気面積の減少が大きな因子
であると考えられた.
海外からの報告でも,上記の結果と矛盾しないものであった.まず,罹患後症状として,呼
吸困難は 20 ~ 30 % に認め,呼吸器系では最も頻度の高い症状であった.その頻度は緩やかに
急性期の重症度に依存するものの,酸素投与期間と相関せず,また ICU 入室者が一般病床入院
患者より頻度が高いという結果でもなかった.呼吸困難の機序は多様であり,肺実質障害や心
血管障害,筋力低下などが含まれる.咳も遷延することがあるが頻度は低く,迷走神経を介し
た,あるいは脳内の神経炎症による可能性が指摘されている.過換気症候群も知られているが,
その頻度,および定義や診断基準も明確ではなく,心理的なトラウマの関与が指摘されている.
肺機能検査における機能低下の頻度は重症度に依存し,特に肺拡散能が障害されやすいこと
が報告されている.50 論文のメタ解析では,肺機能検査では拡散障害が 38 %,拘束性換気障
害は 17% で,時間経過と頻度の関連は有意ではなかった.一方,経時的観察においては,症
状やこれらの検査所見は時間とともに軽快していくが,1 年経過しても残存する例もある.
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