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【別添】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1版) (18 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00332.html |
出典情報 | 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1版)」の周知について(4/28付 事務連絡)《厚生労働省》 |
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●新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き
5
別冊
罹患後症状のマネジメント・第1版 ● 5 嗅覚・味覚症状へのアプローチ
嗅覚・味覚症状へのアプローチ
1.はじめに
COVID-19 の流行が始まって以来,嗅覚・味覚障害は COVID-19 に特徴的な症状とされ,
従来の嗅覚・味覚障害とは異なる臨床的特徴から,SARS-CoV-2 感染を疑う症状として注目
を集めた.その後,変異株の出現によりその発生頻度,臨床的特徴が変化し,オミクロン株で
は嗅覚・味覚障害の発生頻度は減少した.しかし,嗅覚・味覚障害が全くなくなったというこ
とはなく,デルタ株流行以前に発症した嗅覚・味覚障害患者が現在でも障害が持続し,その症
状に悩んでいるケースも少なくない.本章では COVID-19 による嗅覚・味覚障害の疫学,臨
床的特徴の経年的変化ならびに持続する症状と対応について述べる.
2.科学的知見
【嗅覚・味覚障害の疫学】
2020 年 の 最 初 の パ ン デ ミ ッ ク 当 時, 欧 州 の 調 査 に よ り,PCR 陽 性 の 軽 症, 中 等 症 の
COVID-19 患者の 86 %に嗅覚障害が,88 %に味覚障害が発生することが報告された.また,
この報告を含めた 10 篇の論文によるシステマティックレビューとメタアナリシスにより,嗅
覚障害,味覚障害発生率はそれぞれ 53 %,44 %であることが報告された.わが国において,
厚生労働科学特別研究事業三輪班により 2021 年 2 月~ 5 月までのアルファ変異株流行期に実
施された調査では,嗅覚障害,味覚障害の発生率はそれぞれ 58 %,41 %と前年の報告とほぼ
同等の発生率であった.
2022 年,オミクロン株の流行により,嗅覚・味覚障害を発症する COVID-19 患者は減少し
た.英国健康安全保障庁の発行する 2022 年 1 月 14 日付の
「Technical briefing 34」
によると,
咽頭痛はデルタ株では 34 %であったがオミクロン株では 53 %と増加したのに対し(オッズ
比 1.93),嗅覚・味覚障害は 34%から 13%まで減少した
(オッズ比 0.22).同時期のノルウェー
からの報告においても,嗅覚障害の発生頻度が 12%,味覚障害が 23%と,前年までの報告と
比較して大きく減少した.イタリアからの報告でも,2020 年 3 月~ 4 月と 2022 年 1 月~ 2
月の調査を比較し,嗅覚障害が 62.6 % から 24.6 % に,味覚障害が 57.6 % から 26.9 % に
減少したと報告された.このように嗅覚・味覚障害の発生率は変異株により大きく変化したが,
COVID-19 の感染者数は株の変異に伴い増加し続けているため,嗅覚・味覚障害の発生者数が
減少したとは言えない.
【臨床的特徴】
パンデミック発生初期において,嗅覚・味覚障害は,他の上気道炎症状を伴うことなく,突
然発症することが注目を浴びた.発症様式が従来の嗅覚・味覚障害とは異なるため,米国疾病
予防管理センターは突然に発症する嗅覚・味覚障害は COVID-19 を疑う症状と警鐘を発した.
欧州の報告でも,嗅覚・味覚障害が 80%以上発生するのに対して,明らかな鼻閉,鼻漏,咽
頭痛など上気道炎症状の出現率は約 10 %と低率であった.一方,
2021 年のアルファ株流行時,
わが国では,鼻漏,鼻閉,咽頭痛などの上気道炎症状が 50 %以上の患者で出現するとともに,
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別冊
罹患後症状のマネジメント・第1版 ● 5 嗅覚・味覚症状へのアプローチ
嗅覚・味覚症状へのアプローチ
1.はじめに
COVID-19 の流行が始まって以来,嗅覚・味覚障害は COVID-19 に特徴的な症状とされ,
従来の嗅覚・味覚障害とは異なる臨床的特徴から,SARS-CoV-2 感染を疑う症状として注目
を集めた.その後,変異株の出現によりその発生頻度,臨床的特徴が変化し,オミクロン株で
は嗅覚・味覚障害の発生頻度は減少した.しかし,嗅覚・味覚障害が全くなくなったというこ
とはなく,デルタ株流行以前に発症した嗅覚・味覚障害患者が現在でも障害が持続し,その症
状に悩んでいるケースも少なくない.本章では COVID-19 による嗅覚・味覚障害の疫学,臨
床的特徴の経年的変化ならびに持続する症状と対応について述べる.
2.科学的知見
【嗅覚・味覚障害の疫学】
2020 年 の 最 初 の パ ン デ ミ ッ ク 当 時, 欧 州 の 調 査 に よ り,PCR 陽 性 の 軽 症, 中 等 症 の
COVID-19 患者の 86 %に嗅覚障害が,88 %に味覚障害が発生することが報告された.また,
この報告を含めた 10 篇の論文によるシステマティックレビューとメタアナリシスにより,嗅
覚障害,味覚障害発生率はそれぞれ 53 %,44 %であることが報告された.わが国において,
厚生労働科学特別研究事業三輪班により 2021 年 2 月~ 5 月までのアルファ変異株流行期に実
施された調査では,嗅覚障害,味覚障害の発生率はそれぞれ 58 %,41 %と前年の報告とほぼ
同等の発生率であった.
2022 年,オミクロン株の流行により,嗅覚・味覚障害を発症する COVID-19 患者は減少し
た.英国健康安全保障庁の発行する 2022 年 1 月 14 日付の
「Technical briefing 34」
によると,
咽頭痛はデルタ株では 34 %であったがオミクロン株では 53 %と増加したのに対し(オッズ
比 1.93),嗅覚・味覚障害は 34%から 13%まで減少した
(オッズ比 0.22).同時期のノルウェー
からの報告においても,嗅覚障害の発生頻度が 12%,味覚障害が 23%と,前年までの報告と
比較して大きく減少した.イタリアからの報告でも,2020 年 3 月~ 4 月と 2022 年 1 月~ 2
月の調査を比較し,嗅覚障害が 62.6 % から 24.6 % に,味覚障害が 57.6 % から 26.9 % に
減少したと報告された.このように嗅覚・味覚障害の発生率は変異株により大きく変化したが,
COVID-19 の感染者数は株の変異に伴い増加し続けているため,嗅覚・味覚障害の発生者数が
減少したとは言えない.
【臨床的特徴】
パンデミック発生初期において,嗅覚・味覚障害は,他の上気道炎症状を伴うことなく,突
然発症することが注目を浴びた.発症様式が従来の嗅覚・味覚障害とは異なるため,米国疾病
予防管理センターは突然に発症する嗅覚・味覚障害は COVID-19 を疑う症状と警鐘を発した.
欧州の報告でも,嗅覚・味覚障害が 80%以上発生するのに対して,明らかな鼻閉,鼻漏,咽
頭痛など上気道炎症状の出現率は約 10 %と低率であった.一方,
2021 年のアルファ株流行時,
わが国では,鼻漏,鼻閉,咽頭痛などの上気道炎症状が 50 %以上の患者で出現するとともに,
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