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【別添】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1版) (24 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00332.html |
出典情報 | 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント(第1版)」の周知について(4/28付 事務連絡)《厚生労働省》 |
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●新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 診療の手引き
別冊
罹患後症状のマネジメント・第1版 ● 6 神経症状へのアプローチ
4.フォローアップすべき所見・症状
表 6-1 を参照されたい.この中で,brain fog は,
「脳の中に霧がかかったような」広義の認
知機能障害の一種で,記憶障害,知的明晰さの欠如,集中力不足,精神的疲労,不安などを包
含する.
「頭がボーっとする」などの症状は特徴的であり,初めて経験する記憶障害,集中力低
下などを伴うと戸惑いや焦りだけでなく,日常生活や就学・就労,職場復帰などの妨げにもな
り得る.Brain fog の病態や評価方法は未確立であるが,COVID-19 の感染が脳構造の変化を
きたし得るとの報告も出てきており,更なる知見の蓄積が必要と考えられる.
疲労感・倦怠感は,32 %に認めるとの報告もある,頻度の高い症状である.オミクロン株
感染でも,初発症状として咳に次いで疲労感・倦怠感が多い.感染したという思い込みが,持
続的な身体的症状を引き起こし得るとの報告もあり,疲労感・倦怠感を誤って COVID-19 が
原因としないために,適切な医学的評価が必要である.
5.プライマリケアにおけるマネジメント
神経学的な罹患後症状を訴える患者への問診や基本的な身体診察は必須である.同時に,神
経学的診察を可能な範囲で施行する.体位性頻脈症候群(POTS)などの除外のため,臥位と
立位の血圧と脈拍の確認を行う.COVID-19 罹患後に遷延,あるいは一旦改善後に出現する症
状は多彩で(表 6-1),どれが COVID-19 に関連するのかを判別することは容易ではない.患
者の訴えをよく聞き,
「3.症状へのアプローチ」の手順で診療にあたる.感染から日数が経過
していない場合は罹患後症状の定義を満たさないこと,時間が経過すれば症状は消失する可能
性もあることを念頭におく.そのうえで,個々の症状はどのような経過をとってきたのかを確
認する(例:手足のしびれは徐々に改善しているのか,悪化しているのか,少し改善したがそ
の後改善が得られないのか,など)
.具体的な症状を確認することが重要である.他の医療機関
を受診している場合は,それまでに受けた検査や治療も確認する.
検査データで異常所見がある場合は,発症前の検査データが確認できれば比較する必要があ
る.元来有していた疾患を拾い上げる目で診療にあたることも重要である.身体所見や検査結
果に異常がない場合でも,診療は中止せず,リハビリテーションを含む対症療法や心理的サポー
トを考慮する.検査で異常がなくても,自覚症状が改善しない限りは,注意深くフォローする
ことが重要である.亜鉛,フェリチンなどの低下を認める場合に,漫然と補充療法が継続され
ることもあるが,患者の症候の改善がみられるのかどうかを検討すべきである.また,
『お薬手
帳』による併用内服薬の確認や,サプリメントや個人輸入による内服歴なども確認する.
Brain fog はうつ病の部分症状である場合や高齢者ではアルツハイマー病の早期病態が合併
している場合もある.また ICU 退室例では,COVID-19 と無関係に記憶力や注意力の低下,実
行機能の障害,認知処理速度の低下などを約 30 ~ 80% に認める.さらに,筋痛性脳脊髄炎 / 慢
性疲労症候群(ME/CFS),体位性頻脈症候群(POTS)などに類似した症候がみられる,ある
いは患者自身から ME/CFS ではないかとの訴えがあり,自らがその専門家でない場合は,地
域の実情に応じて速やかに診療経験の豊富な医師への紹介を行う.また ME/CFS と罹患後症
状の疲労感・倦怠感の類似性が指摘され,慢性神経炎症や免疫異常などの類似した病態機序を
指摘する報告もあるが,現時点で免疫療法のエビデンスはない.精神科的不調を訴える場合は,
精神科専門医への紹介を行う.
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別冊
罹患後症状のマネジメント・第1版 ● 6 神経症状へのアプローチ
4.フォローアップすべき所見・症状
表 6-1 を参照されたい.この中で,brain fog は,
「脳の中に霧がかかったような」広義の認
知機能障害の一種で,記憶障害,知的明晰さの欠如,集中力不足,精神的疲労,不安などを包
含する.
「頭がボーっとする」などの症状は特徴的であり,初めて経験する記憶障害,集中力低
下などを伴うと戸惑いや焦りだけでなく,日常生活や就学・就労,職場復帰などの妨げにもな
り得る.Brain fog の病態や評価方法は未確立であるが,COVID-19 の感染が脳構造の変化を
きたし得るとの報告も出てきており,更なる知見の蓄積が必要と考えられる.
疲労感・倦怠感は,32 %に認めるとの報告もある,頻度の高い症状である.オミクロン株
感染でも,初発症状として咳に次いで疲労感・倦怠感が多い.感染したという思い込みが,持
続的な身体的症状を引き起こし得るとの報告もあり,疲労感・倦怠感を誤って COVID-19 が
原因としないために,適切な医学的評価が必要である.
5.プライマリケアにおけるマネジメント
神経学的な罹患後症状を訴える患者への問診や基本的な身体診察は必須である.同時に,神
経学的診察を可能な範囲で施行する.体位性頻脈症候群(POTS)などの除外のため,臥位と
立位の血圧と脈拍の確認を行う.COVID-19 罹患後に遷延,あるいは一旦改善後に出現する症
状は多彩で(表 6-1),どれが COVID-19 に関連するのかを判別することは容易ではない.患
者の訴えをよく聞き,
「3.症状へのアプローチ」の手順で診療にあたる.感染から日数が経過
していない場合は罹患後症状の定義を満たさないこと,時間が経過すれば症状は消失する可能
性もあることを念頭におく.そのうえで,個々の症状はどのような経過をとってきたのかを確
認する(例:手足のしびれは徐々に改善しているのか,悪化しているのか,少し改善したがそ
の後改善が得られないのか,など)
.具体的な症状を確認することが重要である.他の医療機関
を受診している場合は,それまでに受けた検査や治療も確認する.
検査データで異常所見がある場合は,発症前の検査データが確認できれば比較する必要があ
る.元来有していた疾患を拾い上げる目で診療にあたることも重要である.身体所見や検査結
果に異常がない場合でも,診療は中止せず,リハビリテーションを含む対症療法や心理的サポー
トを考慮する.検査で異常がなくても,自覚症状が改善しない限りは,注意深くフォローする
ことが重要である.亜鉛,フェリチンなどの低下を認める場合に,漫然と補充療法が継続され
ることもあるが,患者の症候の改善がみられるのかどうかを検討すべきである.また,
『お薬手
帳』による併用内服薬の確認や,サプリメントや個人輸入による内服歴なども確認する.
Brain fog はうつ病の部分症状である場合や高齢者ではアルツハイマー病の早期病態が合併
している場合もある.また ICU 退室例では,COVID-19 と無関係に記憶力や注意力の低下,実
行機能の障害,認知処理速度の低下などを約 30 ~ 80% に認める.さらに,筋痛性脳脊髄炎 / 慢
性疲労症候群(ME/CFS),体位性頻脈症候群(POTS)などに類似した症候がみられる,ある
いは患者自身から ME/CFS ではないかとの訴えがあり,自らがその専門家でない場合は,地
域の実情に応じて速やかに診療経験の豊富な医師への紹介を行う.また ME/CFS と罹患後症
状の疲労感・倦怠感の類似性が指摘され,慢性神経炎症や免疫異常などの類似した病態機序を
指摘する報告もあるが,現時点で免疫療法のエビデンスはない.精神科的不調を訴える場合は,
精神科専門医への紹介を行う.
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