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資料1-2-14診断基準等のアップデート案(第49回指定難病検討委員会資料) (66 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25626.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第49回 5/16)《厚生労働省》 |
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268 中條・西村症候群
○ 概要
1.概要
慢性反復性の炎症と進行性のやせ・消耗を特徴とする、特異な遺伝性自己炎症疾患であり、常染色体潜
性遺伝(劣性遺伝性遺伝)性の疾病である。1939 年の中條、1950 年の西村らの報告以来、「凍瘡を合併す
る骨骨膜症」などの病名で、和歌山・泉南を中心とした関西と関東・東北から、これまでに 30 例ほどの報告
がある。
幼小児期に凍瘡様皮疹にて発症し、結節性紅斑様皮疹や周期性発熱を繰り返しながら、次第に長く節く
れ立った指、顔面と上肢を主体とする部分的脂肪筋肉萎縮が進行する。
本邦特有とされたが、2010 年に本疾患と臨床的に酷似する症例が JMP 症候群・CANDLE 症候群という
病名で欧米・中東から報告された。3疾患とも、プロテアソーム複合体の誘導型サブユニットをコードする
PSMB8 遺伝子に変異のあることが報告され、これを原因とする同一疾患と考えられている。これらをまとめ
るプロテアソーム関連自己炎症性症候群(PRAAS、Proteasome-associated autoinflammatory syndrome)と
いう病名も提唱され、中條・西村症候群は特に、日本人に特有で共通な PSMB8 p.G201V 変異を持つ症例
に用いられている。一方、CANDLE 症候群では PSMB8 以外の変異を持つ症例も報告されている。
2.原因
PSMB8 などのプロテアソーム関連遺伝子の変異により、細胞内で蛋白質分解を行うプロテアソーム複合
体の機能が低下することによって発症すると考えられるが、詳しいメカニズムは不明である。
3.症状
幼小児期に手足の凍瘡様皮疹にて発症し、その後結節性紅斑様皮疹が全身に出没したり、発熱や筋
炎症状を繰り返すようになる。低身長など発育障害を呈する症例もある。早期より大脳基底核の石灰
化を伴うが、精神発達障害ははっきりしない。次第に特徴的な長く節くれ立った指と、顔面と上肢を
主体とする部分的脂肪筋肉萎縮、やせが進行し、手指や肘関節の屈曲拘縮を来す場合がある。血清
LDH、CPK、CRP や AA アミロイド値が高く、抗核抗体が陽性になることがある。一方、ステロイド
内服により逆に腹部や下半身の肥満を来す場合もある。脂質代謝異常ははっきりしないが、恐らく呼
吸障害や心機能低下のために早世する症例がある。
4.治療法
標準的治療法はない。ステロイド内服が行われ、発熱、皮疹などの炎症の軽減には有効だが、脂肪
筋肉の萎縮ややせには無効である。むしろステロイドの長期内服による成長障害、代償性肥満、緑内
障、骨粗鬆症など弊害も多い。最近、JAK 阻害薬の有効性が報告されている。
5.予後
一部の軽症例を除くと、繰り返す発熱・筋炎、発育障害、進行性の脂肪筋肉萎縮・関節拘縮などにより
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○ 概要
1.概要
慢性反復性の炎症と進行性のやせ・消耗を特徴とする、特異な遺伝性自己炎症疾患であり、常染色体潜
性遺伝(劣性遺伝性遺伝)性の疾病である。1939 年の中條、1950 年の西村らの報告以来、「凍瘡を合併す
る骨骨膜症」などの病名で、和歌山・泉南を中心とした関西と関東・東北から、これまでに 30 例ほどの報告
がある。
幼小児期に凍瘡様皮疹にて発症し、結節性紅斑様皮疹や周期性発熱を繰り返しながら、次第に長く節く
れ立った指、顔面と上肢を主体とする部分的脂肪筋肉萎縮が進行する。
本邦特有とされたが、2010 年に本疾患と臨床的に酷似する症例が JMP 症候群・CANDLE 症候群という
病名で欧米・中東から報告された。3疾患とも、プロテアソーム複合体の誘導型サブユニットをコードする
PSMB8 遺伝子に変異のあることが報告され、これを原因とする同一疾患と考えられている。これらをまとめ
るプロテアソーム関連自己炎症性症候群(PRAAS、Proteasome-associated autoinflammatory syndrome)と
いう病名も提唱され、中條・西村症候群は特に、日本人に特有で共通な PSMB8 p.G201V 変異を持つ症例
に用いられている。一方、CANDLE 症候群では PSMB8 以外の変異を持つ症例も報告されている。
2.原因
PSMB8 などのプロテアソーム関連遺伝子の変異により、細胞内で蛋白質分解を行うプロテアソーム複合
体の機能が低下することによって発症すると考えられるが、詳しいメカニズムは不明である。
3.症状
幼小児期に手足の凍瘡様皮疹にて発症し、その後結節性紅斑様皮疹が全身に出没したり、発熱や筋
炎症状を繰り返すようになる。低身長など発育障害を呈する症例もある。早期より大脳基底核の石灰
化を伴うが、精神発達障害ははっきりしない。次第に特徴的な長く節くれ立った指と、顔面と上肢を
主体とする部分的脂肪筋肉萎縮、やせが進行し、手指や肘関節の屈曲拘縮を来す場合がある。血清
LDH、CPK、CRP や AA アミロイド値が高く、抗核抗体が陽性になることがある。一方、ステロイド
内服により逆に腹部や下半身の肥満を来す場合もある。脂質代謝異常ははっきりしないが、恐らく呼
吸障害や心機能低下のために早世する症例がある。
4.治療法
標準的治療法はない。ステロイド内服が行われ、発熱、皮疹などの炎症の軽減には有効だが、脂肪
筋肉の萎縮ややせには無効である。むしろステロイドの長期内服による成長障害、代償性肥満、緑内
障、骨粗鬆症など弊害も多い。最近、JAK 阻害薬の有効性が報告されている。
5.予後
一部の軽症例を除くと、繰り返す発熱・筋炎、発育障害、進行性の脂肪筋肉萎縮・関節拘縮などにより
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