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介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き 令和7年3月 (18 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/content/12304250/001452998.pdf |
出典情報 | 介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き(3/25)《厚生労働省》 |
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コラム
認知症本人と家族の声
認知症の人と家族の会からの声
当会で実施した家族支援にかかわる2021年の調査では、
「本人に怒鳴ってしまったりする等、つらくあたってしまうこと
がある」と答えた家族が8割に上りました。優しくできない自分に嫌悪感を抱くとともに、本人に対する罪悪感に苛まれ、苦
しんでいる家族の実態が明らかになりました。
一方、同調査では、家族が認知症に関する課題を相談した相手はケアマネジャーが最も多く、ケアマネジャーは介護家族
がもつ社会資源の中心に位置づく存在であることが示唆されたと報告しています。
本人との生活の課題を共有(ピアサポート)する立場が生み出す「共感」は、介護家族支援の核ともいえるものでしょう。そ
の「共感」と同様に求められている支援は、認知症に関する知識と介護生活への助言です。
家族が適切な介護から逸脱しないためには、ケアマネジャー等、介護にかかわる専門職の方々が、本人や家族の不安に寄
り添い、認知症のことや介護にかかわる知識や情報を収集し、ピアサポートの支援も含め、適時適切な提供をしていくこと
が必要であると考えるとともに期待しております。
公益社団法人認知症の人と家族の会 理事 志田 信也
電話相談をきっかけに、身体拘束の廃止につながった事例
公益社団法人認知症の人と家族の会よりご提供
事例のポイント
✔家族による電話相談を通して、身体拘束の解決策を見つけることができた
本人の症状の悪化と家族の苦悩
本人の物忘れ等を心配に思った家族が同行し、認知症疾患医療センターを受診した結果、アルツハイマー型認知症と診断された。
認知症疾患医療センターの相談員からのアドバイスにより、要介護認定申請を受け、通所介護を利用していた。
本人は、もともと温厚な性格で、家族の関係も良好であった。認知症の行動・心理症状はほとんどなく、玄関から外へ出て庭の草
取りをすることはあったが、敷地内から出ていくことはなかった。ある日の早朝、本人が自宅や敷地内にいないことに気づいた家
族は近所を探し回ったが見つからず、やむを得ず警察へ連絡し、近隣住民も一緒になって捜索したところ、約40分後に無事発見
された。
家族は、警察をはじめ多くの方々に迷惑をかけたことに心を痛め、
「二度とこのようなことがないように」と、自宅玄関に本人で
は開けられない鍵を設置した。家族も後ろめたさがあったものの仕方ないと思うようにしていた。
以来、本人は玄関から出ることができなくなり、庭の草取りも出来なくなった。通所介護の利用時のみが、外出機会であった。そ
のような状況に、家族は少しずつ罪悪感のようなものをいだき始めるようになった。
しばらくすると、本人は自室に閉じこもりがちになり、次第に家族に対して怒りっぽくなり、被害妄想的な症状も出始め、笑顔
が見られなくなっていった。これらの症状は時間が経つにつれ、ひどくなる傾向であった。
「認知症の人と家族の会」への電話相談
本人の症状や状態を心配した家族は、
「認知症の人と家族の会」の電話相談に連絡した。認知症の人と家族の会の相談員は、
「本
人の症状は、自由に玄関を出入りできなくなったことに起因しているかもしれない」と話した。また、
「担当のケアマネジャーが次
回訪問するときに、そのことを相談すること」とアドバイスした。
実際に、担当のケアマネジャーが訪問したときに、本人の現状について相談してみた。
担当のケアマネジャーは、
「捜索してもらうことは、警察の仕事なので遠慮はいらないし、
『見守り登録』をすれば、本人の所在が
分からなくなったときに、警察の捜索等の初動が速やかに行われて安心だ」と、話をした。また、
「近隣住民に対して、あらかじめ本
人の状況を共有し、できる範囲で協力してもらうことも可能だ」と、アドバイスした。
結果的に、玄関に設置していた「本人では開けられない鍵」を撤去し、
「見守り登録」を行い、近隣住民とも本人の状況を共有した。
本人と家族の変化
1カ月くらいすると、少しずつ本人に変化がみられるようになった。晴れの日等は、玄関から庭へ出て以前のように草取りをす
るようになり、笑顔を見せることも多くなった。そして、本人の怒りっぽさや被害妄想といった症状は次第に少なくなっていっ
た。また、家族は、本人に対する後ろめたさや罪悪感から解放され、精神的な安定にもつながった。
ー 16 ー
認知症本人と家族の声
認知症の人と家族の会からの声
当会で実施した家族支援にかかわる2021年の調査では、
「本人に怒鳴ってしまったりする等、つらくあたってしまうこと
がある」と答えた家族が8割に上りました。優しくできない自分に嫌悪感を抱くとともに、本人に対する罪悪感に苛まれ、苦
しんでいる家族の実態が明らかになりました。
一方、同調査では、家族が認知症に関する課題を相談した相手はケアマネジャーが最も多く、ケアマネジャーは介護家族
がもつ社会資源の中心に位置づく存在であることが示唆されたと報告しています。
本人との生活の課題を共有(ピアサポート)する立場が生み出す「共感」は、介護家族支援の核ともいえるものでしょう。そ
の「共感」と同様に求められている支援は、認知症に関する知識と介護生活への助言です。
家族が適切な介護から逸脱しないためには、ケアマネジャー等、介護にかかわる専門職の方々が、本人や家族の不安に寄
り添い、認知症のことや介護にかかわる知識や情報を収集し、ピアサポートの支援も含め、適時適切な提供をしていくこと
が必要であると考えるとともに期待しております。
公益社団法人認知症の人と家族の会 理事 志田 信也
電話相談をきっかけに、身体拘束の廃止につながった事例
公益社団法人認知症の人と家族の会よりご提供
事例のポイント
✔家族による電話相談を通して、身体拘束の解決策を見つけることができた
本人の症状の悪化と家族の苦悩
本人の物忘れ等を心配に思った家族が同行し、認知症疾患医療センターを受診した結果、アルツハイマー型認知症と診断された。
認知症疾患医療センターの相談員からのアドバイスにより、要介護認定申請を受け、通所介護を利用していた。
本人は、もともと温厚な性格で、家族の関係も良好であった。認知症の行動・心理症状はほとんどなく、玄関から外へ出て庭の草
取りをすることはあったが、敷地内から出ていくことはなかった。ある日の早朝、本人が自宅や敷地内にいないことに気づいた家
族は近所を探し回ったが見つからず、やむを得ず警察へ連絡し、近隣住民も一緒になって捜索したところ、約40分後に無事発見
された。
家族は、警察をはじめ多くの方々に迷惑をかけたことに心を痛め、
「二度とこのようなことがないように」と、自宅玄関に本人で
は開けられない鍵を設置した。家族も後ろめたさがあったものの仕方ないと思うようにしていた。
以来、本人は玄関から出ることができなくなり、庭の草取りも出来なくなった。通所介護の利用時のみが、外出機会であった。そ
のような状況に、家族は少しずつ罪悪感のようなものをいだき始めるようになった。
しばらくすると、本人は自室に閉じこもりがちになり、次第に家族に対して怒りっぽくなり、被害妄想的な症状も出始め、笑顔
が見られなくなっていった。これらの症状は時間が経つにつれ、ひどくなる傾向であった。
「認知症の人と家族の会」への電話相談
本人の症状や状態を心配した家族は、
「認知症の人と家族の会」の電話相談に連絡した。認知症の人と家族の会の相談員は、
「本
人の症状は、自由に玄関を出入りできなくなったことに起因しているかもしれない」と話した。また、
「担当のケアマネジャーが次
回訪問するときに、そのことを相談すること」とアドバイスした。
実際に、担当のケアマネジャーが訪問したときに、本人の現状について相談してみた。
担当のケアマネジャーは、
「捜索してもらうことは、警察の仕事なので遠慮はいらないし、
『見守り登録』をすれば、本人の所在が
分からなくなったときに、警察の捜索等の初動が速やかに行われて安心だ」と、話をした。また、
「近隣住民に対して、あらかじめ本
人の状況を共有し、できる範囲で協力してもらうことも可能だ」と、アドバイスした。
結果的に、玄関に設置していた「本人では開けられない鍵」を撤去し、
「見守り登録」を行い、近隣住民とも本人の状況を共有した。
本人と家族の変化
1カ月くらいすると、少しずつ本人に変化がみられるようになった。晴れの日等は、玄関から庭へ出て以前のように草取りをす
るようになり、笑顔を見せることも多くなった。そして、本人の怒りっぽさや被害妄想といった症状は次第に少なくなっていっ
た。また、家族は、本人に対する後ろめたさや罪悪感から解放され、精神的な安定にもつながった。
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