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介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き 令和7年3月 (20 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/content/12304250/001452998.pdf
出典情報 介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き(3/25)《厚生労働省》
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地域に見守られながら本人らしく生活できている事例
認知症高齢者本人からのヒアリングより

事例のポイント
✔散歩をしたい、家で生活したい、という本人の思いを尊重している
✔近所の方々の協力を得ながら地域全体で本人の外出を見守っている
✔介護に関する悩みを家族同士で相談し合っている

ある日、散歩中に迷子に
福岡県大牟田市で暮らしている、散歩やお出かけが好きな要介護1の90代女性(Kさん)。遠方に生活基盤がある娘(Aさん)が、
頻繁にKさんの自宅に帰り、生活をともにしている。
ある日、近所の方からAさんに、
「20時になっても家の電気がついていないようだ。家に入って確認してもよいか。」という電話
があった。近所の方が家の中やいつもの散歩ルートを探したがどこにもいない。幸い、数時間後に無事警察に保護されたが、Kさ
んの自宅周辺には線路があり、一歩間違えると命にかかわる状況だった。

「今後も散歩したい、家で生活したい!」 本人の想いを尊重
Aさんは、
「今後も散歩中に迷子になってしまったら大変。
でも、
本人は今後も散歩したい、
家で生活したい、
という希望を持って
いる。
人はだれしも自由に生活したいという思いがある。
本人の行動を制限しないように、
できる限りのことを行おう。

と考えた。
そこでAさんは、
親族と相談し、
本人が持ち運ぶタイプの緊急通報器の導入を決めた。
しかし、
本人による操作が難しかったこと
から、担当ケアマネジャーと相談し、本人がいつも首に付けているお守りにGPSをつけることに決めた。GPS導入に際して、安全
に暮らしてもらうことを優先するか、
自由に生活してもらうことを優先するか、
Aさんの中で強い葛藤があった。
ただ、
困難な状況
に陥ったときにすぐにでも見つけ出したい、
苦しい思いをしてほしくない、
という思いから、
悩みながらもGPSを使っている。

近所の方々のサポートによる地域全体での見守り
Kさんの自宅生活の継続には、近所の方々の存在が欠かせない。近所の方々との「散歩に行ってきます」
「行ってらっしゃい、気
を付けてね」の些細なやりとりが、地域で暮らす本人の安心につながっている。お隣の方は、自分の家の生け垣を切り、どんなとき
でもKさんの自宅の様子を気にかけられるようにしている。遠方に住むAさんが安心できているのは、このような地域ぐるみでの
サポートのおかげだ。

介護に関する悩みを家族同士で相談し合う
それでもAさんは、本人の介護を行うなかで悩むことも少なくない。徐々に家事ができなくなるKさんの姿を見て、もどかしい
思いを抱くことがある。そんななか、Aさんの心の支えになっているのが、大牟田市が開催するミーティングセンター(本人と家
族の一体的支援プログラム)だ。認知症介護で悩む家族の話に耳を傾け、交流を行っている。
Aさんは、脱いだ靴下を洗濯かごに入れずにそのまま畳んでタンスに入れてしまうKさんの姿を見て、不思議に思っていた。そ
のことをミーティングセンターで出会った他の家族に話すと、その家族でも全く同じことで悩んでいることがわかった。Aさん
は、
「ああ、これは認知症の症状なんだ」ということに気づき、気が楽になった。
このように、Kさんは、地域にささやかに見守られ、地域のサポートを受けながらAさんとともに本人らしく自宅で生活できている。

今後の生活に関する本人の声
今のまま生活していければいいなと思っています。一人暮らしだから。ご飯炊
いたり、いろいろ。お野菜なんかはお隣さんがくださるんです。
「○○さんは一人
暮らしだからね、里芋炊いたから、食べてください」と持ってきてくださったり
ね。近所の方が良くしてくださるから、私、幸せなんですよ。

認知症の人の家族に対するAさんからのメッセージ
一人で悩んでいると、
とてもしんどいです。
本人とのかかわりのなかで困った
こと、
悩んだことがあれば、
すぐ誰かに相談するとよいと思います。
地域の方、

人、公的窓口等、相談先はたくさんあります。介護に関する相談をしたくなかっ
たとき、
別の話をして気を紛らわせることも有益でした。
本人と家族だけで孤立
しないことが重要です。

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