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【参考資料2】薬剤耐性ワンヘルス動向調査報告書2021 (14 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29073.html
出典情報 薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会(第10回 11/21)《厚生労働省》
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考 察:
2020 年の経口セファロスポリン系薬、経口マクロライド系薬、経口フルオロキノロン系薬を含む
経口抗菌薬の販売量に基づく抗菌薬使用は、アクションプランの成果指標には至らなかったが、2013
年と比較して減少し、特に 2020 年はそれまでの傾向に比べ大幅に減少していることが確認された。
薬剤耐性率についてもいくつかの菌種で減少傾向にあることが明らかになり、アクションプランの数
値目標の達成へ向けた進捗が認められたが、一方で大腸菌のフルオロキノロン耐性率など、耐性率の
増加傾向が続いているものもある。
しかしながら、抗菌薬使用量および薬剤耐性率について、新型コロナウイルス感染症による影響も
考慮されるため、今後の推移を慎重にみていく必要がある。本報告書のデータを考慮し、さらなる
AMR 対策の推進が必要である。フルオロキノロンの使用とフルオロキノロン耐性大腸菌の頻度は相
関している報告がある。黄色ブドウ球菌のメチシリン耐性率と第 3 世代セファロスポリン、フルオロ
キノロン、マクロライドの使用も関連する報告がある。よって抗菌薬の適正使用については、抗微生
物薬適正使用の手引きを用いて急性気道感染症を中心に抗菌薬の適正使用を推進し、第 3 世代セファ
ロスポリン、フルオロキノロン、マクロライドの不必要な使用を引き続き削減していく必要がある。
状況を把握するために、各診療所等の外来抗菌薬使用状況についてもモニタリングするシステム構築
が望まれる。抗菌薬適正使用の推進においては、適切な抗菌薬を必要なときに使用できることが前提
であり、基本的な抗菌薬の安定供給を確保することが重要である。また、J-SIPHE や薬剤耐性
(AMR)ワンヘルスプラットフォームなどのシステムを用い、地域毎の耐性菌情報や抗菌薬使用状況
の情報を活用し、地域の状況に応じた抗菌薬の選択や感染対策の推進が望まれる。さらに、抗菌薬適
正使用を進める上で、国民および医療従事者に対して様々な手法を用いた教育啓発活動を継続してい
く必要がある。
動物分野において、ヒト医療上重要な抗菌剤の1つであるカルバペネム系に対する腸内細菌科細菌
における耐性率及びヒトの院内感染などで大きな問題となるバンコマイシンに対する腸球菌属菌にお
ける耐性率はいずれの畜種および菌種においても 0.0%であった。しかし、2017 年から開始した疾病
にり患した愛玩動物由来の大腸菌において、第3世代セファロスポリン及びフルオロキノロン系の抗
菌剤に対する耐性率が畜産動物由来の大腸菌と比較して高いことが確認された。このため、これまで
実施してきた畜産分野の薬剤耐性対策に加え、2020 年に作成した愛玩動物における慎重使用の手引
きの普及等により愛玩動物分野における薬剤耐性対策を継続・強化していくことが必要である。
アクションプランの成果指標である健康な畜産動物由来の大腸菌の第3世代セファロスポリン及び
フルオロキノロン系の抗菌剤に対する耐性率は低い水準が保たれており、目標を達成する見込みであ
る。引き続きこれらの薬剤を第 2 次選択薬として慎重に使用するよう獣医師や生産者に啓発していく
ことが重要である。一方、テトラサイクリンでは目標値よりも高い値となった。テトラサイクリンの
販売量は、2018 年以降減少していることから、引き続き適正かつ慎重な使用の推進を図るととも
に、その耐性率の動向を確認していく必要がある。
現行のアクションプランは 2020 年までの 5 か年計画で進められてきた。一部の指標は改善傾向に
はあるが、改善の乏しい指標や新たに生じた課題が未だ多くあり、国際的な動きと協調しつつ継続的
に取り組んでいく必要がある。今後、産官学が連携し異なる分野の担当組織の協力体制を推進しつ
つ、ヒトと動物と環境のリスクを横断的に評価できる研究の推進について検討する。

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