よむ、つかう、まなぶ。
【参考資料5】抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 別冊 (16 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45318.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 感染症部会 薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会(第6回 11/19)《厚生労働省》 |
ページ画像
ダウンロードした画像を利用する際は「出典情報」を明記してください。
低解像度画像をダウンロード
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
抗微生物薬適正使用の手引き
第三版
別冊
一方で、レボフロキサシンや ST 合剤等の非 β-ラクタム系抗菌薬への感受性が確認された場合
には、カルバペネム感受性腸内細菌目細菌による感染症と同様、治療に利用できる。既に、腸内
細菌目細菌菌血症 55、あるいは ESBL/AmpC 産生腸内細菌目細菌菌血症 52 では、特に軽症例にお
いて、経口吸収率の高いフルオロキノロン系抗菌薬や ST 合剤による経口ステップダウン治療を
行っても、静注抗菌薬によって治療を継続する場合と比較して予後は悪化しないことが明らかと
なっている。
問題となるのは、レボフロキサシンや ST 合剤に対して非感受性の場合であり、コリスチンや
チゲサイクリン、アミノグリコシド系、ホスホマイシン点滴静注等の臨床的有効性が確立してお
らず、かつ有害事象の頻度も高い、バランスに欠いた非 β-ラクタム系抗菌薬(以下、これら 4 系
統の抗菌薬を既存薬と呼ぶ)を利用しなければならなくなる。
CRE 感染症において、新規 β-ラクタム系抗菌薬が利用できない状況下での併用療法の有用性
に関してはまだ議論は決していない。
(詳細は補遺 p.14-15 参照)64 仮に併用療法を行う場合で
も、どの抗菌薬の併用が優れているのかを示したデータは殆どなく、特に日本で頻度の高い MBL
産生 CPE 感染症(あるいは non-CP-CRE 感染症)に特化して、併用療法と単剤治療を比較した
データはない(詳細は補遺 p.14-15 参照)65。なお、日本の CRE 感染症は大半が単剤で治療され
ており 58、症例数は限定されるが併用療法による死亡率の低下は確認されていない。
まとめると、日本の CRE 菌血症では、尿路感染症や非尿路感染症の軽症例、さらには重症例
であっても経静脈抗菌薬治療によって状態が安定した後の経口ステップダウン治療において、フ
ルオロキノロン系抗菌薬や ST 合剤等の抗菌薬単剤での治療を検討できない合理的な理由はない。
一方で、非尿路感染症や重症例で新規 β-ラクタム系抗菌薬が利用できず、フルオロキノロン系抗
菌薬や ST 合剤、あるいは既存薬を利用せざるを得ない場合には、臨床的有効性がまだ十分に確
立していないために単剤治療よりも併用療法が提案される 66。但し、一旦状態が安定した後は、
有害事象のリスクを考慮して単剤治療への変更を検討する。
② 日本における CPE 感染症での治療戦略(図 1)
欧 州 臨 床 微 生 物 ・ 感 染 症 学 会 (European Society of Clinical Microbiology and Infectious
Diseases: ESCMID)による多剤耐性グラム陰性桿菌治療ガイドライン 66 及び米国感染症学会
(Infectious Diseases Society of America: IDSA)による多剤耐性グラム陰性桿菌治療ガイダンス 41
のいずれも、IMP 型を含む MBL 産生 CPE 感染症では、Ceftazidime-Avibactam とアズトレオナム
の併用療法、あるいは Cefiderocol 単剤治療を推奨している(2023 年 7 月 17 日時点で、
Ceftazidime-Avibactam 及び Cefiderocol のいずれも使用できない)。Cefiderocol は、IMP 型や NDM
型を含む MBL 産生 CPE による感染症において、現存する唯一の単剤で治療可能な β-ラクタム系
抗菌薬であり、その活性を MBL 産生 CPE に対して温存するために、MBL 産生以外の CPE 感染
症、non-CP-CRE 感染症での使用は極力控えるべきである。
国内で主流の CPE である IMP 型 67 産生株と(米国で主流の)KPC 型 68 産生株を、抗菌薬感受
性という視点で比較した場合の最大の相違点は、IMP 型は非 β-ラクタム系の抗菌薬、具体的には
ST 合剤やフルオロキノロン系、アミノグリコシド系抗菌薬の感受性が維持されやすいという点
16
第三版
別冊
一方で、レボフロキサシンや ST 合剤等の非 β-ラクタム系抗菌薬への感受性が確認された場合
には、カルバペネム感受性腸内細菌目細菌による感染症と同様、治療に利用できる。既に、腸内
細菌目細菌菌血症 55、あるいは ESBL/AmpC 産生腸内細菌目細菌菌血症 52 では、特に軽症例にお
いて、経口吸収率の高いフルオロキノロン系抗菌薬や ST 合剤による経口ステップダウン治療を
行っても、静注抗菌薬によって治療を継続する場合と比較して予後は悪化しないことが明らかと
なっている。
問題となるのは、レボフロキサシンや ST 合剤に対して非感受性の場合であり、コリスチンや
チゲサイクリン、アミノグリコシド系、ホスホマイシン点滴静注等の臨床的有効性が確立してお
らず、かつ有害事象の頻度も高い、バランスに欠いた非 β-ラクタム系抗菌薬(以下、これら 4 系
統の抗菌薬を既存薬と呼ぶ)を利用しなければならなくなる。
CRE 感染症において、新規 β-ラクタム系抗菌薬が利用できない状況下での併用療法の有用性
に関してはまだ議論は決していない。
(詳細は補遺 p.14-15 参照)64 仮に併用療法を行う場合で
も、どの抗菌薬の併用が優れているのかを示したデータは殆どなく、特に日本で頻度の高い MBL
産生 CPE 感染症(あるいは non-CP-CRE 感染症)に特化して、併用療法と単剤治療を比較した
データはない(詳細は補遺 p.14-15 参照)65。なお、日本の CRE 感染症は大半が単剤で治療され
ており 58、症例数は限定されるが併用療法による死亡率の低下は確認されていない。
まとめると、日本の CRE 菌血症では、尿路感染症や非尿路感染症の軽症例、さらには重症例
であっても経静脈抗菌薬治療によって状態が安定した後の経口ステップダウン治療において、フ
ルオロキノロン系抗菌薬や ST 合剤等の抗菌薬単剤での治療を検討できない合理的な理由はない。
一方で、非尿路感染症や重症例で新規 β-ラクタム系抗菌薬が利用できず、フルオロキノロン系抗
菌薬や ST 合剤、あるいは既存薬を利用せざるを得ない場合には、臨床的有効性がまだ十分に確
立していないために単剤治療よりも併用療法が提案される 66。但し、一旦状態が安定した後は、
有害事象のリスクを考慮して単剤治療への変更を検討する。
② 日本における CPE 感染症での治療戦略(図 1)
欧 州 臨 床 微 生 物 ・ 感 染 症 学 会 (European Society of Clinical Microbiology and Infectious
Diseases: ESCMID)による多剤耐性グラム陰性桿菌治療ガイドライン 66 及び米国感染症学会
(Infectious Diseases Society of America: IDSA)による多剤耐性グラム陰性桿菌治療ガイダンス 41
のいずれも、IMP 型を含む MBL 産生 CPE 感染症では、Ceftazidime-Avibactam とアズトレオナム
の併用療法、あるいは Cefiderocol 単剤治療を推奨している(2023 年 7 月 17 日時点で、
Ceftazidime-Avibactam 及び Cefiderocol のいずれも使用できない)。Cefiderocol は、IMP 型や NDM
型を含む MBL 産生 CPE による感染症において、現存する唯一の単剤で治療可能な β-ラクタム系
抗菌薬であり、その活性を MBL 産生 CPE に対して温存するために、MBL 産生以外の CPE 感染
症、non-CP-CRE 感染症での使用は極力控えるべきである。
国内で主流の CPE である IMP 型 67 産生株と(米国で主流の)KPC 型 68 産生株を、抗菌薬感受
性という視点で比較した場合の最大の相違点は、IMP 型は非 β-ラクタム系の抗菌薬、具体的には
ST 合剤やフルオロキノロン系、アミノグリコシド系抗菌薬の感受性が維持されやすいという点
16