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【参考資料5】抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 別冊 (6 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45318.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 感染症部会 薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会(第6回 11/19)《厚生労働省》 |
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抗微生物薬適正使用の手引き
第三版
別冊
(2) 腸球菌(VRE[バンコマイシン耐性腸球菌]を含む)
疫学と臨床的特徴
ヒ ト の 感 染 症 に 関 連 す る 腸 球 菌 と し て は Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、
Enterococcus gallinarum、Enterococcus casseliflavus 等があるが、臨床的に分離頻度が高いのは
E. faecalis であり、次いで E. faecium である。腸球菌は、消化管の常在菌であり、特に重症患者
や免疫抑制患者において、医療関連感染症を引き起こす。バンコマイシン耐性腸球菌
(vancomycin-resistant Enterococci: VRE)による感染症は、感染症法に基づく 5 類感染症で全数
把握対象疾患である 14。VRE の国内での届け出数は 2011-2019 年までは年間 100 例未満であった
が、2020 年、2021 年にはそれぞれ 136 例、124 例と増加傾向であった 15。VRE の大半は
E. faecium である。VRE を含む腸球菌は医療施設関連 UTI(特に CAUTI)の重要な原因菌であり、
また、CRBSI・感染性心内膜炎・腹腔内感染症・皮膚軟部組織感染症・SSI 等の原因となる 16。
VRE 菌血症の致命率はバンコマイシン感受性腸球菌に比べ 1.8 倍であったとする報告もある 17。
入院中の患者は院内の環境・医療従事者・デバイス等を介して VRE を獲得後消化管内に保菌
し、その一部が発症する。VRE 獲得のリスク因子としては、抗菌薬曝露歴(特に第 3 世代セファ
ロスポリン系抗菌薬やバンコマイシン)・在院日数・重症患者・侵襲的デバイスの使用・ICU 入
室・長期介護施設入所・VRE の保菌者や汚染された環境への曝露等が知られている 16。海外では
日本国内より検出頻度が高い国も多く、海外で医療曝露歴のある患者でも検出例が散見される 18。
微生物学的特徴と診断
VRE では細胞壁のペプチドグリカン前駆体末端のグリコペプチド系抗菌薬の結合親和性が低下
することで耐性化する。感染症法の届出基準では、分離腸球菌株に対するバンコマイシンの MIC
が 16μg/mL 以上のものが VRE と定義されている 14。耐性型により耐性度や各グリコペプチド系
抗菌薬への感受性が異なる(補遺 p.6 参照)19。
治療方針
VRE 感染症の治療に際しては感染症専門医への相談が推奨される。特に VRE の治療に先立っ
て重要な点は、感染巣の特定と主要な抗菌薬(アンピシリン・テイコプラニン)への感受性並び
にアレルギー歴の確認である。感染性心内膜炎や髄膜炎の場合、抗菌薬併用療法も含めた対応が
必要となるため、特に注意を要する。膿瘍を伴う感染症や CRBSI 等抗菌薬のみでの治癒は困難
で、外科的ドレナージやカテーテル除去等を要する場合もある。アンピシリン感受性 VRE の治
療において、アンピシリンは重要な薬剤である。ペニシリンアレルギー歴を自己申告した患者の
うち、実際にペニシリンが使用できないアレルギーのあった患者は少ないとされている 20。必要
に応じて感染症専門医やアレルギー専門医、薬剤師による評価も行う。
VRE 血流感染症(感染性心内膜炎を除く)への単剤治療の例を表にまとめた。
E. faecalis や VanC 型 VRE はアンピシリン感受性のことが多い。また、VanB、VanC 型 VRE
では通常テイコプラニン感受性である。これら以外の VRE の治療では、ダプトマイシンやリネ
ゾリドが抗菌薬治療の軸となる 2,16。
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第三版
別冊
(2) 腸球菌(VRE[バンコマイシン耐性腸球菌]を含む)
疫学と臨床的特徴
ヒ ト の 感 染 症 に 関 連 す る 腸 球 菌 と し て は Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、
Enterococcus gallinarum、Enterococcus casseliflavus 等があるが、臨床的に分離頻度が高いのは
E. faecalis であり、次いで E. faecium である。腸球菌は、消化管の常在菌であり、特に重症患者
や免疫抑制患者において、医療関連感染症を引き起こす。バンコマイシン耐性腸球菌
(vancomycin-resistant Enterococci: VRE)による感染症は、感染症法に基づく 5 類感染症で全数
把握対象疾患である 14。VRE の国内での届け出数は 2011-2019 年までは年間 100 例未満であった
が、2020 年、2021 年にはそれぞれ 136 例、124 例と増加傾向であった 15。VRE の大半は
E. faecium である。VRE を含む腸球菌は医療施設関連 UTI(特に CAUTI)の重要な原因菌であり、
また、CRBSI・感染性心内膜炎・腹腔内感染症・皮膚軟部組織感染症・SSI 等の原因となる 16。
VRE 菌血症の致命率はバンコマイシン感受性腸球菌に比べ 1.8 倍であったとする報告もある 17。
入院中の患者は院内の環境・医療従事者・デバイス等を介して VRE を獲得後消化管内に保菌
し、その一部が発症する。VRE 獲得のリスク因子としては、抗菌薬曝露歴(特に第 3 世代セファ
ロスポリン系抗菌薬やバンコマイシン)・在院日数・重症患者・侵襲的デバイスの使用・ICU 入
室・長期介護施設入所・VRE の保菌者や汚染された環境への曝露等が知られている 16。海外では
日本国内より検出頻度が高い国も多く、海外で医療曝露歴のある患者でも検出例が散見される 18。
微生物学的特徴と診断
VRE では細胞壁のペプチドグリカン前駆体末端のグリコペプチド系抗菌薬の結合親和性が低下
することで耐性化する。感染症法の届出基準では、分離腸球菌株に対するバンコマイシンの MIC
が 16μg/mL 以上のものが VRE と定義されている 14。耐性型により耐性度や各グリコペプチド系
抗菌薬への感受性が異なる(補遺 p.6 参照)19。
治療方針
VRE 感染症の治療に際しては感染症専門医への相談が推奨される。特に VRE の治療に先立っ
て重要な点は、感染巣の特定と主要な抗菌薬(アンピシリン・テイコプラニン)への感受性並び
にアレルギー歴の確認である。感染性心内膜炎や髄膜炎の場合、抗菌薬併用療法も含めた対応が
必要となるため、特に注意を要する。膿瘍を伴う感染症や CRBSI 等抗菌薬のみでの治癒は困難
で、外科的ドレナージやカテーテル除去等を要する場合もある。アンピシリン感受性 VRE の治
療において、アンピシリンは重要な薬剤である。ペニシリンアレルギー歴を自己申告した患者の
うち、実際にペニシリンが使用できないアレルギーのあった患者は少ないとされている 20。必要
に応じて感染症専門医やアレルギー専門医、薬剤師による評価も行う。
VRE 血流感染症(感染性心内膜炎を除く)への単剤治療の例を表にまとめた。
E. faecalis や VanC 型 VRE はアンピシリン感受性のことが多い。また、VanB、VanC 型 VRE
では通常テイコプラニン感受性である。これら以外の VRE の治療では、ダプトマイシンやリネ
ゾリドが抗菌薬治療の軸となる 2,16。
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