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【参考資料5】抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 別冊 (25 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45318.html
出典情報 厚生科学審議会 感染症部会 薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会(第6回 11/19)《厚生労働省》
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抗微生物薬適正使用の手引き

第三版

別冊

(5) その他のグラム陰性桿菌(緑膿菌以外のブドウ糖非発酵菌)
(i)

アシネトバクター属

疫学の概要と臨床的特徴
Acinetobacter 属は小型で通常ブドウ糖非発酵のグラム陰性桿菌であり、土壌や河川水等の環
境に広く存在する 109。また、院内環境で長期に生存可能であり、院内で長期間にわたるアウト
ブ レ イ ク の 原 因 と な る 。Acinetobacter 属 の 中 で も ヒ ト の 感 染 症 の 原 因 と な る の は 主 に
Acinetobacter baumannii である 109。A. baumannii は院内肺炎、敗血症や創傷感染症等の原因と
なるが、臨床的に特に問題となるのは院内肺炎、中でも VAP である 109,110。Acinetobacter 属によ
る感染症の典型的なリスク因子として、高齢、重度の基礎疾患の存在、免疫不全、外傷や熱傷、
外科治療があり、さらに、体内カテーテル挿入や人工呼吸器管理中、長期入院、抗菌薬曝露等も
リスクとなる 111。オーストラリアやオセアニア、中国や台湾、タイ等の温暖・湿潤な国では市中
感染症(主に肺炎)の原因となることも知られているが 112、日本での報告は限られる 113。
A. baumannii は内因性の薬剤耐性機構を豊富に有し、同時に外因性の薬剤耐性機構を獲得する
能力も備える(詳細は補遺 p.25 参照)
。そのため、世界的に薬剤耐性化が問題となっている 109。
最も大きな問題はカルバペネム耐性であり、世界保健機関は、新規抗菌薬の研究開発が急がれる
薬剤耐性菌のなかで、カルバペネム耐性 A. baumannii(Carbapenem-resistant Acinetobacter
baumannii: CRAB)を最も緊急性の高い”critical“に分類している 114。近年では海外で医療曝露が
あった症例を介して多剤耐性アシネトバクター(Multidrug-resistant Acinetobacter spp.: MDRA)
が日本の医療機関に持ち込まれる事例が報告され、一部では院内でのアウトブレイクにつながっ
ている 18,115,116。そのため、海外から持ち込まれる可能性の高い薬剤耐性菌としても認識が必要
である 117。
微生物学的診断
国内では薬剤耐性アシネトバクター感染症は 5 類感染症全数把握疾患である 118。発生届上の
「薬剤耐性」の定義は、広域 β-ラクタム系抗菌薬(基準上はカルバペネム系)・アミノ配糖体
(アミノグリコシド系)・フルオロキノロン系の 3 系統の薬剤に対して耐性を示すことである
(詳細は補遺 p.25 参照)118。なお、保菌者は届け出の対象にはならない。
治療方針
Acinetobacter 属は院内肺炎、中でも人工呼吸器関連肺炎が主な侵襲性感染症である 109,110。ま
た、CRBSI やフォーカス不明の菌血症の原因となる 119。血液培養から検出された場合は治療の
適応となるが、呼吸器検体や創部検体にはよく定着するため 120、臨床検体から分離された場合
には、侵襲性感染症の原因となっているかどうかについて評価する 2。人工物感染における人工
物抜去や CRBSI におけるカテーテル抜去等の感染巣のソースコントロールを行う。

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