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【参考資料5】抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 別冊 (30 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45318.html
出典情報 厚生科学審議会 感染症部会 薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会(第6回 11/19)《厚生労働省》
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抗微生物薬適正使用の手引き

第三版

別冊

(6) クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)
疫学の概要と臨床的特徴
Clostridioides difficile(以下 C. difficile)は、偏性嫌気性の芽胞形成性のグラム陽性桿菌であり、
院内下痢症等を起こしうる C. difficile 感染症(C. difficile infection: CDI)の原因菌である。また、
下痢症以外に重症例ではイレウスや中毒性巨大結腸症を起こしうることが知られている。さらに、
芽胞を形成することで熱、放射線、乾燥、高圧処理、薬剤等に抵抗性を示すことが知られており、
病院感染対策上重要な菌である。病態として、C. difficile が産生するトキシン A やトキシン B が
発症に関与することが知られており、トキシン A/B を産生しない C. difficile は CDI を発症しない
ことが知られている。
米国の報告では、病院で検出された菌として最も頻度が高いことが報告されたこともある 150。
2020 年に報告されたシステマティックレビュー&メタアナリシスでは、院内発症の CDI は、8.3
件/10,000 患者日数であると報告されている 151。日本で行われた多施設の前向き研究では、7.4
件/10,000 患者日数であった。欧米同様の頻度であり、日本でも重要な感染症である 152。CDI 発
症者の約 95%には外来、入院等の医療機関や介護施設を利用した経歴があり医療関連感染症とし
ての側面が強い 153。
24 時間以内に 3 回以上の下痢(Bristol Stool Scale で 5 以上:半固形のやわらかい便、不定形
の泥状便、固形物を含まない液体状の便)を認める時や平常時よりも多い便回数の時に CDI を想
起する必要がある 154。
なお、国内ガイドライン(Clostridioides difficile 感染症診療ガイドライン 2022)では排便が自
立していない高齢者等では回数に固執する必要はないと推奨している 155。院内で新規の下痢を
見た時には、まずは検査を考慮する。頻度は低いが、下痢を認めずイレウスや中毒性巨大結腸症
を来すことがあるため、入院中で上記を認めた時には CDI を想起すべきである。過去 3 か月以内
の抗菌薬曝露がリスクになることが報告されており 156、外来での下痢症でも過去の抗菌薬曝露
がある時には鑑別として上げる。また、1 回の抗菌薬投与でも CDI は起こりうることが知られて
いる 157。
それ以外のリスクとして、年齢、胃酸抑制薬(プロトンポンプ阻害薬[proton pump inhibitor:
PPI]
、H2 受容体拮抗薬を含む)の使用、最近の入院が報告されており、入院中の患者ではいず
れも頻度の高いリスク因子である 158。
微生物学的診断
トキシンと GDH 抗原を同時に検出するキット、核酸増幅検査(Nucleic Acid Amplification Test:
NAAT)又は便培養が国内では利用可能である。GDH(グルタミン酸脱水素酵素)抗原陽性は C.
difficile の存在を示唆する。施設によって利用可能なものが異なるが、トキシンと GDH を同時検
出できるキットをベースにトキシン陰性・GDH 陽性の時には NAAT 又は便培養を行うアルゴリ
ズムが提唱されている 155,159。

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