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【参考資料5】抗微生物薬適正使用の手引き 第三版 別冊 (28 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45318.html
出典情報 厚生科学審議会 感染症部会 薬剤耐性(AMR)に関する小委員会 抗微生物薬適正使用(AMS)等に関する作業部会(第6回 11/19)《厚生労働省》
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抗微生物薬適正使用の手引き

(ii)

第三版

別冊

ステノトロフォモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)

疫学の概要と臨床的特徴
ステノトロフォモナス・マルトフィリア(以下 S. maltophilia)はブドウ糖非発酵のグラム陰性
桿菌である 137,138。病院内外の栄養に乏しい水生環境で生存可能で、プラスチックにも付着しバ
イオフィルムを形成する 137。そのため、静脈カニューレをはじめとした臨床現場で使用される
人工物や、透析液、水道水、シンク等の院内環境から検出される 137。
S. maltophilia による感染症は、CRBSI を含む菌血症、呼吸器感染症の頻度が高い 138,139。
特に血液悪性腫瘍患者において、急速に進行する出血性肺炎が死亡率の高い病態として知られて
いる 140,141。その他、眼内炎、心内膜炎、髄膜炎、皮膚軟部組織感染症、インプラント関連感染
症等幅広い感染症の原因として報告がある 137。
S. maltophilia 感染症の罹患のリスクとして、悪性腫瘍(特に血液悪性腫瘍、中でも造血幹細胞
移植レシピエント)・嚢胞性線維症・HIV 感染症といった基礎疾患、静脈薬物使用、事故による
外傷、手術・長期入院・静脈内カテーテルや尿道カテーテルの使用、ICU 入室、人工呼吸器使用、
免疫抑制治療等の要因が挙げられる 137。
微生物学的診断
S. maltophilia の保菌及びこれに由来する感染症は感染症法上の届出対象ではない。日本で利用
可能な薬剤感受性検査について臨床・検査標準協会(Clinical and Laboratory Standards Institute:
CLSI)では、ST 合剤・レボフロキサシン・ミノサイクリン・セフタジジムにおける MIC 値の判
定 基 準 を 定 め て お り 32、 一 方 、 ヨ ー ロ ッ パ 抗 菌 薬 感 受 性 試 験 法 検 討 委 員 会 (European
Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing: EUCAST)では ST 合剤のみ MIC 値の判定基準
を定めている(詳細は補遺 p.27-28 参照)142。
治療方針
S. maltophilia は先述の罹患リスクのある患者において、主に CRBSI や肺炎の原因となる 139。
血液培養から検出された場合は治療の適応となるが、呼吸器検体にはよく定着し、特に ICU 入室
が長い患者や濃厚な抗菌薬曝露(特にカルバペネム系抗菌薬)がある患者、気管切開後の患者で
は定着しやすい。そのため、臨床検体から分離された場合、侵襲性感染症の原因となっているか
どうかを評価する 139。CRBSI におけるカテーテルの抜去等の感染巣のソースコントロールを行
う 132,143。
抗微生物薬治療について、RCT はないものの、幅広い薬剤に対する内因性の薬剤耐性機構を備
えていることと(詳細は補遺 p.27-28 参照)
、使用経験の豊富さから ST 合剤が第一選択とされ、
広く使用されている 41,144。一方、腎障害や肝障害、輸液負荷や高カリウム血症、骨髄抑制、皮疹
といった副作用が ST 合剤による治療の懸念点として挙げられる 145,146。
IDSA による治療ガイダンスでは、軽症例では、ST 合剤、ミノサイクリン、チゲサイクリン、
レボフロキサシン、それぞれ単剤での治療が可能とされ、中でも ST 合剤とミノサイクリンがよ
り好ましいとしている 41。一方、フルオロキノロン系抗菌薬では治療中の耐性化のおそれ 146,147、

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