【参考資料2】【日版R4.1.17一部改正】薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2020 (65 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23261.html |
出典情報 | 国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議 薬剤耐性ワンヘルス動向調査検討会(第9回 1/17)《厚生労働省》 |
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等の網羅的配列解読法(メタゲノム解析)を構築し(国立感染症研究所・病原体ゲノム解析研究セン
ター)、34 自治体からご提供頂いた下水処理場・放流水サンプル(2018 夏・8月、2019 冬・2月、
2019 夏・8 月そして 2020 冬・2 月の計 219 サンプル)のメタゲノム解析を実施した。臨床および家
畜抗菌薬の ARG 配列データベースを元に、対象 ARG の解読リード数を検出した。さらに、ARG 塩基
長とメタゲノム総解読リード数で標準化する RPKM(Reads Per Kilobase of gene per Million
mapped reads)法を採用し、相対的な ARG 濃度を算出して検体間の比較解析を実施した。昨年度報
告では夏よりも冬期において ARG がやや多い傾向が見られたことを報告したが、2 年間(計 4 回)の
継 続 調 査 に よ り 、 ARG が 継 続 的 に 増 加 傾 向 で あ る と と も に 、 そ の 主 要 因 と し て サ ル フ ァ 剤
(Sulphonamide)および第四級アンモニウム塩(除菌剤)耐性遺伝子が有意に高く検出され( p
<0.01)、腸内細菌科細菌で広範に伝播獲得が知られている Class1 インテグロンの基本構成遺伝子
(sul1, qacEdelta)が検出増の要因と考えられた。一方、下水処理場・放流水中のマクロライド耐性遺
伝子は顕著な減少を示し、ヒトに対するマクロライド系薬の使用が減少したことを反映する結果が得
られたものと考えられた。また、キノロン耐性遺伝子においても同様の減少傾向が見られ、ヒトに対
するキノロン系薬の使用量が減少したこととの関連が示唆されるが、キノロン耐性大腸菌の分離状況
とは乖離が見られた。本研究班におけるメタゲノム解析では外来性獲得である oqx および qnr 遺伝子
を検出対象としているため、キノロン剤阻害ターゲットである gyrA および parC 遺伝子上のキノロン
耐性決定領域(quinolone resistance– determining regions: QRDR)の変異は判定していない。少な
くとも、外来性獲得の頻度が低下して好ましい状況へ近づきつつあるのかもしれないが、更なる継続
調査が必須である。本研究班のメタゲノム解析法は世界的なメタゲノム解析法に準じたものであり、
各国からの報告と比較する上においても重要な情報提供ができたと考えている。引き続き、自治体の
ご協力を仰ぎながら年 2 回(夏および冬)の全国調査を実施し、本邦の環境 AMR(Resistome)の基
盤を整備していく予定である。
一方、世界的な調査として、デンマーク(The National Food Institute, DTU (WHO Collaborating
Centre and European Union Reference Laboratory for Antimicrobial Resistance in Foodborne
Pathogens) ) が 中 心 と な っ て WHO 支 援 に よ る 環 境 調 査 Global Sewage Surveillance Project
("Global Sewage Surveillance Project.")が進行中である 1。これらにおいては環境 AMR だけでな
くポリオウイルス等のウイルス汚染も調査対象であるため、下水処理場の“流入水”を中心に調査が行
われている。第一弾の成果として、2016 年 1-2 月に収集された 79 サンプル(60 カ国)の下水処理
場・流入水のメタゲノム解析の結果が掲載された 2。60 カ国の中で最も ARG 汚染が高かったのはブラ
ジルの 4616.9 FPKM (Fragments per kilobase of exon per million reads mapped) であり、アフリカ
諸国の ARG 汚染度は平均 2034.3 FPKM の高値を示し、オセアニア地域(ニュージーランド、オース
トラリア)が最も低値の平均 529.5 FPKM であった。アジア(日本は含まれない)はアフリカ諸国ほ
ど 高 い ARG 汚 染 で は 無 か っ た が 、 ARG の 組 成 ( Resistome ) は 非 常 に 似 通 っ て い た (27%
dissimilarity) 。ARG の FPKM および Resistome 解析から、各国の人口・経済活動や公衆衛生対策と
強く相関する結果であることが浮き彫りになった。本邦は 2017 年から本計画に参画して処理前・流
入水を提供しており、本邦サンプルも評価された GSSP の追加報告が待たれる。GSSP は下水処理場
の流入水サンプル(未処理)であることから、前述の本邦環境 AMR 調査と同じ基準で比較解析する
ことは難しいものの、少なくとも~100 FPKM を示す本邦の下水処理・放流水が今後のさらなる環境
浄化を必要とするのかを見極める重要な定量値であると考えている。
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