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「異種移植の実施に伴う異種移植片由来感染症のリスク管理に関するガイドライン(案)」 (31 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43769.html
出典情報 厚生科学審議会 再生医療等評価部会(第98回 9/20)《厚生労働省》
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注1 本リストは、ブタについてのスクリーニング検査法を定める際に現時点で考慮しな
ければならない病原体を掲げたものである。掲載されている病原体に関する検査について
は、動物施設の地域に病原体が存在しない、細胞として培養後に利用するために培養中に
確認ができるなどの科学的な根拠がある場合には、その実施を省略することができる。新
たな病原体が確認された場合には、可及的速やかに本リストに加える。
注2 本リストに掲載されている病原体について検討を行うことは、移植患者への安全確
保に必要なことであると同時に、移植患者等に予期できない重大な感染症が発生した場合
に重要な意味を持つと考えられる。特に、予期できない感染症に関しては、予めリストに
掲げた病原体について検討、検査し、移植患者への感染の危険性を排除しておけば、発生
した感染症が未知の感染症である可能性が高という判断につながり、すなわち、公衆衛生
上の適切な対応の決定を速やかに行うことに役立つものと考えられる。
注3 ブタ内在性レトロウイルス(Porcine Endogenous Retrovirus [PERV])については、
すべてのブタの遺伝子に PERV-A と PERV-B が組み込まれ、一部のブタの遺伝子に
PERV-C が組み込まれていることから、危険性を完全に排除することが困難とされていた
が、近年ゲノム編集技術を用いて PERV をノックアウトすることが可能になりつつある。
一方、ブタを用いたヒトへの異種移植は、これまでの 35 年間に世界で 200 例以上実施
されているが、現時点では移植患者への PERV 感染確認例はない。しかし、PERV-A、
PERV-B 及び PERV-A/C リコンビナントは、ヒト培養細胞に感染することが示されてお
り、移植組織から患者に感染する可能性は否定できない。したがって、以下のように、ブ
タドナーにおける PERV ゲノムと感染性ウイルスの存在状況、及び移植患者ならびにそ
の接触者の PERV 感染の有無についてモニターすることが有用であるが、PERV の検査
だけで十分というわけではない。
1) ドナーブタに存在する PERV-A 及び PERV-B 感染性ウイルスの検出においては、
ブタ末梢血単核球をマイトジェンにより刺激後、感染しやすいとされるヒト 293 細胞と
共培養し、ヒト細胞への感染を調べる。感染性ウイルスのゲノムについては、リアルタイ
ム逆転写 PCR により検出・定量する。ヒト細胞に感染しない PERV-C は、この方法で
は検出できない。ドナーブタとしては、PERV-A 及び PERV-B プロウイルスのコピー数
が少なく、感染性ウイルスが上記の方法で検出できない動物を選択すべきである。一方異
種臓器移植の開発では PERV 遺伝子をノックアウトしたドナー動物が開発されているが、
このような操作で PERV 全てを排除できるわけではなく、少なくとも PERV の感染性の確
認を行うべきである。
2) 移植患者は、移植前と移植後、定期的かつ生涯にわたり、PERV のモニターを受け
る必要がある。モニターでは、PERV に対する抗体検出と核酸増幅による PERV ゲノム
検出試験を行うこととする。同時に、マイクロキメリズム(動物細胞がヒト体内で免疫寛
容となり細胞そのものが同定できる状態)と感染を区別するために、ブタ細胞の検出試験
を行う。健康状態に関する問診、症状などの記録を行うこととする。

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