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「異種移植の実施に伴う異種移植片由来感染症のリスク管理に関するガイドライン(案)」 (4 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_43769.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 再生医療等評価部会(第98回 9/20)《厚生労働省》 |
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前書き
本文書は、2001 年度に第一版が作成された。その前文にはその作成の趣旨として、動物
細胞を利用した体外灌流装置等の開発、遺伝子改変動物作成を見据えた新たな技術開発が
進んでいることを念頭に、異種移植に用いる細胞、組織又は臓器に随伴した異種動物由来
感染症については、ウシ伝達性海綿状脳症(BSE)からの新変異型クロイツフェルト・ヤ
コブ病(vCJD)等動物由来の感染症の発生や、ブタ細胞と共培養したヒト細胞にブタ内在
性レトロウイルス(PERV)が感染したことを指摘する研究等があり、現時点では未知の
感染症の発生及び伝播が起こらないことを保証できる段階になく、同種移植とは異なる予
測困難な問題が残されていると記され、このような技術開発とそれに対応する安全対策の
観点から、異種移植における感染症伝播のリスクに対応する考え方が示された。
その後、科学技術の進歩に伴い、異種移植の分野にも大きな進展がみられた。2008 年に
は世界保健機関(WHO)により異種移植を安全に推進するための国際協力の方針が示さ
れ、2009 年の国際異種移植学会では異種膵島移植開始に必要な事項に関する統一見解が発
表された。さらに、2014 年には、国内の「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」
(平成 25 年法律第 85 号。以下「安確法」という。)が施行され、細胞加工を伴う組織移
植も同法の適用となり、異種移植は、最も高いリスクが予想される第1種再生医療等技術
に分類され、厳格な対応が求められることになった。このような背景から、2015 年度に、
臨床応用への進展の可能性が高いブタ膵島を用いた異種膵島移植に焦点をおいた文書改定
が行われた。
一方、2022 年に米国で遺伝子改変を行ったブタ由来の心臓が医療として初めてヒトに移
植され、さらに 2023 年にも遺伝子改変を行ったブタ由来の心臓移植が行われた。2024 年
には遺伝子改変を行ったブタの腎臓が医療としてヒトに移植された。このようなブタ由来
臓器の移植においては、様々な拒絶反応を制御するために複数の遺伝子改変が必須とされ
ている。特に、遺伝子改変として超急性拒絶に関連する Gal エピトープのノックアウトが
必須とされている。一方で、この Gal エピトープのノックアウトやその他の遺伝子改変
は、遺伝子改変を行った動物に内在する感染因子の特性(細胞指向性)を変化させてしま
う可能性があり、そのために種の壁を超えた新たな人獣共通感染症を引き起こすリスクが
指摘されている。本改定では、遺伝子改変を行ったブタ臓器移植の実用化を見据えて、こ
のような新規技術に伴って想定されるリスクのうち、特に感染症について取り上げ、レシ
ピエントやレシピエントの接触者への感染症の伝播リスクに加え、市中での感染伝播など
広く公衆衛生の視点も考慮した改定を行うこととした。
本文書は、公衆衛生学的な見地から、異種移植片に由来して発生する可能性のある感染
症に関する問題を扱うものであり、言い換えると異種移植に起因して出現するかもしれな
い感染症に対して、どのような検査を行うか、また投与後の長期に亘る感染症の発症のモ
ニタリングと共に公衆衛生を含めた安全性確保に資することを目的として、そのリスク管
理の考え方を示したものである。本文書は、異種移植そのものの有効性、倫理性等の確保
及び移植患者における安全性の確保を目的とするものではなく、「安確法」、「感染症の
予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成 10 年法律第 114 号。以後「感
染症法」という。)、家畜伝染病予防法(昭和 26 年法律第 166 号。)、「医薬品、医療
機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(昭和 35 年法律第 145 号。
以下「薬機法」という。)、「臨床研究法」(平成 29 年法律第 16 号)や「人を対象とす
る生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(令和3年文部科学省・厚生労働省・経済産
業省告示第1号)の他、異種移植を実施する際に関わる法や指針が適用される場合につい
ては、これらの法令・指針を前提として、技術的観点から参考として併せて用いることを
念頭に置いて作成した。なお、本指針の異種移植実施に伴う異種移植片由来感染症の発生
リスクの管理の視点から、国外で異種移植を受けた患者等についても、国内で異種移植を
受けた患者と同様な感染因子監視等の対応がなされることが望まれる。このような異種移
植提供機関以外にも求められることが推奨される事項については、別添1に記載した。
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本文書は、2001 年度に第一版が作成された。その前文にはその作成の趣旨として、動物
細胞を利用した体外灌流装置等の開発、遺伝子改変動物作成を見据えた新たな技術開発が
進んでいることを念頭に、異種移植に用いる細胞、組織又は臓器に随伴した異種動物由来
感染症については、ウシ伝達性海綿状脳症(BSE)からの新変異型クロイツフェルト・ヤ
コブ病(vCJD)等動物由来の感染症の発生や、ブタ細胞と共培養したヒト細胞にブタ内在
性レトロウイルス(PERV)が感染したことを指摘する研究等があり、現時点では未知の
感染症の発生及び伝播が起こらないことを保証できる段階になく、同種移植とは異なる予
測困難な問題が残されていると記され、このような技術開発とそれに対応する安全対策の
観点から、異種移植における感染症伝播のリスクに対応する考え方が示された。
その後、科学技術の進歩に伴い、異種移植の分野にも大きな進展がみられた。2008 年に
は世界保健機関(WHO)により異種移植を安全に推進するための国際協力の方針が示さ
れ、2009 年の国際異種移植学会では異種膵島移植開始に必要な事項に関する統一見解が発
表された。さらに、2014 年には、国内の「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」
(平成 25 年法律第 85 号。以下「安確法」という。)が施行され、細胞加工を伴う組織移
植も同法の適用となり、異種移植は、最も高いリスクが予想される第1種再生医療等技術
に分類され、厳格な対応が求められることになった。このような背景から、2015 年度に、
臨床応用への進展の可能性が高いブタ膵島を用いた異種膵島移植に焦点をおいた文書改定
が行われた。
一方、2022 年に米国で遺伝子改変を行ったブタ由来の心臓が医療として初めてヒトに移
植され、さらに 2023 年にも遺伝子改変を行ったブタ由来の心臓移植が行われた。2024 年
には遺伝子改変を行ったブタの腎臓が医療としてヒトに移植された。このようなブタ由来
臓器の移植においては、様々な拒絶反応を制御するために複数の遺伝子改変が必須とされ
ている。特に、遺伝子改変として超急性拒絶に関連する Gal エピトープのノックアウトが
必須とされている。一方で、この Gal エピトープのノックアウトやその他の遺伝子改変
は、遺伝子改変を行った動物に内在する感染因子の特性(細胞指向性)を変化させてしま
う可能性があり、そのために種の壁を超えた新たな人獣共通感染症を引き起こすリスクが
指摘されている。本改定では、遺伝子改変を行ったブタ臓器移植の実用化を見据えて、こ
のような新規技術に伴って想定されるリスクのうち、特に感染症について取り上げ、レシ
ピエントやレシピエントの接触者への感染症の伝播リスクに加え、市中での感染伝播など
広く公衆衛生の視点も考慮した改定を行うこととした。
本文書は、公衆衛生学的な見地から、異種移植片に由来して発生する可能性のある感染
症に関する問題を扱うものであり、言い換えると異種移植に起因して出現するかもしれな
い感染症に対して、どのような検査を行うか、また投与後の長期に亘る感染症の発症のモ
ニタリングと共に公衆衛生を含めた安全性確保に資することを目的として、そのリスク管
理の考え方を示したものである。本文書は、異種移植そのものの有効性、倫理性等の確保
及び移植患者における安全性の確保を目的とするものではなく、「安確法」、「感染症の
予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成 10 年法律第 114 号。以後「感
染症法」という。)、家畜伝染病予防法(昭和 26 年法律第 166 号。)、「医薬品、医療
機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(昭和 35 年法律第 145 号。
以下「薬機法」という。)、「臨床研究法」(平成 29 年法律第 16 号)や「人を対象とす
る生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(令和3年文部科学省・厚生労働省・経済産
業省告示第1号)の他、異種移植を実施する際に関わる法や指針が適用される場合につい
ては、これらの法令・指針を前提として、技術的観点から参考として併せて用いることを
念頭に置いて作成した。なお、本指針の異種移植実施に伴う異種移植片由来感染症の発生
リスクの管理の視点から、国外で異種移植を受けた患者等についても、国内で異種移植を
受けた患者と同様な感染因子監視等の対応がなされることが望まれる。このような異種移
植提供機関以外にも求められることが推奨される事項については、別添1に記載した。
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