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「医療保険制度の将来構想の検討のための調査研究Ⅰ(制度の変遷と将来構想の検討)検討委員会報告書」 (51 ページ)

公開元URL https://www.kenporen.com/press/
出典情報 医療保険制度の将来構想の検討のための調査研究Ⅰ(5/17)《健康保険組合連合会》
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6 .老人 医 療 費 無 料 化と 健 保 連 の 共 同 事 業の 展 開 ( 1 9 7 2 年 ~ 1 9 8 1 年 )
老人医療費の無料化が医療費の急増をもたらした。それが、老人保健制度の創設に向けた議論に結び付いた。一方、被用者保険制度間の財政調整
議論のなか、健保連が独自に展開した共同事業が法定化された。

この10年
年間の主な動き
年月

背 景 、 主 な 動き

1972年(昭和47年)

厚生省が社会保障制度審議会等に2分の1財政調整案を含む財政調整案を提案するも反対答申。2分の1財政調整案を断念。
健康保険法改正案を国会に提出するも廃案に(政府管掌健康保険と健康保険組合による高齢者医療費の共同負担、健保連による
健康保険組合間の相互扶助事業等を含む)

1973年(昭和48年)

老人医療費の無料化(老人福祉法改正、70歳以上の自己負担額を公費負担)。以後、老人医療費の増大を招く。
健康保険法改正(家族給付率5割から7割へ引き上げ。高額療養費制度新設。政府管掌健康保険の定率国庫負担10%+α=保
険料率との連動制導入と累積赤字棚上げ)。第一次オイルショック。国民医療費の大幅な増加も加わり医療保険財政を圧迫。

1974年(昭和49年)

雇用保険法制定。

1977年(昭和52年)

健康保険法改正(特別保険料=賞与の1%=時限措置、政管健保一部免除、健康保険組合は任意。患者一部負担額引き上げ)。
健保連「医療保険に関する基本方針」発表(財政調整に反対。組合方式の健全な発展。医療提供体制整備のための公費投入。診
療報酬に出来高払いと登録人頭払い、包括払いなど複数方式の併用。職域保険と地域保険の二本建て+老人医療保健制度と退職
者医療給付制度の設置。9割給付確保。健康保険組合間の共同事業に健康開発共同事業を追加)。

1979年(昭和54年)

自民党議員による医療保険財政調整法案が国会に提出されるも、各方面の反対で廃案へ。

1980年(昭和55年)

健康保険法改正(家族入院給付率7割から8割に引き上げ。政府管掌健康保険の国庫負担率10%から16.4%に引き上げ=16.4%か
ら20%の間で政令で定める。患者一部負担額の引き上げ。政府管掌健康保険の累積赤字を6年間で償還。健康保険組合間の財政
調整事業=健保連の共同事業(高額医療給付費共同負担事業と財政窮迫組合助成事業)を法定化。被用者保険制度間財政調
整の前提は削除。

1981年(昭和56年)

老人保健法案の国会提出。健康保険組合全国大会で「支払い方式改善の道を閉ざす老人保健法案に絶対反対」を決議。
第二次臨時行政調査会設置(第一次答申。増税なき財政再建。支払い方式改革を含む医療費適正化。老人保健制度早期実施)。

健保連の共同事業の展開











1959年…短期人間ドックなど健康管理事業を実施。
1963年…健保会館の設置。共同事業構想を策定(法定準備金の共同保有、共同疾病基金、共同保健施設事業の3事業)。
1967年…共同利用保養所を実施。
1971年…テレビ番組放映など共同広報活動を実施。健康保険組合共同事業基金設置大綱を策定(財政窮迫組合助成事業、高額医療費等
共同負担事業、健康管理センター等共同設置事業)。
健康保険法附則第8条(当時)「健康保険組合間の財政調整」
1974年…共同事業委員会を設置。
【第1項】健康保険組合の管掌する健康保険の医療に関する給付に要する費
1975年…高額医療費共同負担事業を実施。
用の財源の不均衡を調整するため健康保険組合連合会は政令の定むるところ
1978年…財政窮迫組合助成事業を実施。
により会員たる健康保険組合に対する交付金の交付の事業を行うものとす。
1980年…健康保険法改正で健保連の交付金交付事業(上記2事業)を法定化。
1983年…健康開発共同事業実施要項決定(調査研究・広報、健康管理等の研修、保健婦等の要請、コンサルタントの設置、健康手帳の作成)。

7 .老人 保 健 制 度 と 退 職 者 医 療 制 度 の 創 設 ( 1 9 8 2 年 ~ 1 9 9 1 年 )
経済の低成長化のもと、人口の高齢化と生活習慣病等により医療費の増加が続き、医療保険財政はよりいっそう厳しくなり、国庫補助の拡大も限界に来ていた。
そうしたなか、老人保健制度が創設され、老人医療費無料化が廃止された一方で、被用者保険と国民健康保険の間の実質的な財政調整が始まった。退職者
医療制度も創設され、これらの拠出金負担を通じて、被用者保険が国民皆保険制度を支える役割が大きく拡大した。
この10年
年間の主な動き
年月

背 景 、 主 な 動き

1982年(昭和57年)

老人保健法制定(70歳以上の高齢者等を対象に医療給付等を実施。老人医療費無料化の廃止=患者定額一部負担導入)。

1983年(昭和58年)

第二次臨時行政調査会の最終答申(これまで複数回の答申。支払い方式改革を含む医療費適正化。高額医療機器の共同利用等の医療
供給体制の改革。退職者医療制度の創設を提言。民間の活力を活かし、その調整、補完に重点を置く行政へ)。

1984年(昭和59年)

健康保険法改正(被保険者本人定率2割負担=国会承認まで1割負担。特定療養費制度の創設=高度先進医療と選定療養)。
国民健康保険法改正(被用者保険OBを対象とする退職者医療制度の創設。あわせて健康保険法改正で特定健康保険組合制度を導入)。
国民健康保険の国庫負担割合を医療費の45%から給付費の50%へ実質引き下げ。

1985年(昭和60年)

第一次医療法改正(病床規制を含む医療計画制度)。健保連「拠出金増大阻止総決起大会」(加入者按分率拡大阻止に800万人署名)。

1986年(昭和61年)

老人保健法改正(加入者按分率引き上げ=1986年度80%、1987年度から90%、1990年度から100%⇒財政調整の拡大=被用者保険の
拠出金負担増。患者一部負担額の引き上げ。老人保健施設の創設)。健保連ほか関係団体は強硬に反対するも法案成立。

1988年(昭和63年)

健保連「医療保険制度改革の提言」(被用者保険と国民健康保険の二本建て=組合方式推進。老人保健制度は間接税による新税制で負
担する仕組みに再編。家庭医の制度化。高度医療機器の共同利用。老人の慢性疾患の包括的定額払い。老人登録医制度と人数に応じた
支払い)⇒翌年、当面の改革案として、老人保健制度の公費負担3割を5割への拡充を提言。関係団体も同調。
国民健康保険法改正(保険基盤安定制度暫定措置導入。高額医療費共同事業拡充。老人保健拠出金の国庫補助率引き下げ)

1989年(平成元年)

消費税の創設(税率3%)。厚生省「ゴールドプラン」(高齢者保健福祉推進10か年戦略)策定。天安門事件。ベルリンの壁崩壊。

1990年(平成2年)

国民健康保険法改正(保険基盤安定制度の恒久化。国庫補助による財政調整機能の強化)。
老人保健拠出金の加入者按分率100%へ移行⇒健康保険組合財政は急激に悪化。被用者保険財政支援措置900億円。

1991年(平成3年)

老人保健法改正(患者一部負担額の引き上げ。介護に着目した公費負担割合5割への拡充。被用者保険財政支援措置1000億円に増額)。
中医協で薬価算定方式の見直し(バルクライン方式から加重平均値一定価格幅方式に変更)。バブル崩壊。

老人保健制度(1982年
年老人保健法制定当時)
 市町村が実施主体。70歳以上(65歳以上の「寝たきり」者を含む)を対象に
医療給付を実施。無料化を廃止し、定額の患者一部負担を導入。
 給付費の3割を公費負担。7割を老人保健拠出金で賄う。
 老人保健拠出金は被用者保険、国保の保険者がそれぞれの老人医療費と
老人加入率に応じて負担(当初、医療費按分率50%、加入者按分率50%
による実質的な財政調整=共同事業との説明も)。
 40歳以上を対象に保健事業を実施。
⇒ 健保連の主張(当時)・・・〇出来高払い見直しを含む医療費適正化、〇拠
出金負担に歯止めを設けるべき、〇被用者保険と国保の間の財政調整に反対。

退職者医療制度と特定健康保険組合制度(1984年
年法改正当時)
 退職者医療制度では、国保の被保険者のうち、被用者年金加入期間が20年以上等の
者を退職被保険者、その家族を被扶養者として医療給付を実施。
 給付割合は被用者保険と同等の本人8割、家族入院8割、入院外7割。
 給付費に退職被保険者の国保保険料を充当し、それ以外は被用者保険が負担する退
職者医療拠出金で賄う。公費負担なし。
⇒ 健保連の主張(当時)・・・〇被用者保険と国保の間の財政調整に反対、〇退職者医
療は被用者保険の領域で実施すべき(法案修正により特定健康保険組合制度が実現)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 特定健康保険組合は、退職被保険者の要件を満たす者を特例退職被保険者、その家
族を被扶養者として医療給付を実施。給付割合は被用者保険と同等。
 これに要する費用は退職者医療拠出金から控除できる。

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