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資料1-2-17診断基準等のアップデート案(第49回指定難病検討委員会資料) (43 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25626.html
出典情報 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第49回 5/16)《厚生労働省》
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320 先天性グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)欠損症
○ 概要
1.概要
糖脂質からなる GPI アンカーは、ほ乳類の細胞においては 150 種以上の蛋白質の膜結合に用いられて
いる。GPI が欠損するとこれらの全ての蛋白質が細胞表面に発現できない。現在までに 27 個の遺伝子が
GPI アンカー型蛋白質の生合成や、修飾に必要であることがわかっている。最近、これらの遺伝子の変異
による先天性グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)欠損症(Inherited GPI deficiency:IGD)が次々と
見つかっており、現在までに 1523 種類の遺伝子による IGD が報告されている。従来 Mabry 症候群として知
られていた、高アルカリホスファターゼ(ALP)血症、精神運動発達遅滞・てんかんを呈する疾患が IGD であ
ることが明らかになっているが、今後もオーバーラップする疾患が見つかってくると考えられる。
2.原因
GPI が欠損すると 150 種以上の GPI アンカー型蛋白質が細胞表面に発現できないので、GPI 生合成遺
伝子の完全欠損は胎生致死になる。IGD は、27 個の GPI 生合成や修飾に関わる遺伝子のうちのどれかが
様々な程度に活性が低下した部分欠損症である。症状は細胞膜上の GPI アンカー型蛋白質の発現低下や
構造異常によって起こり、変異遺伝子やその活性低下の程度により多様な症状を示す。症状のうち、てん
かんの原因の一つとして GPI アンカー型蛋白質である ALP の発現低下が挙げられる。
3.症状
必須症状は、精神・運動発達の遅れで、多くはてんかんを伴う。大田原症候群・ウエスト症候群など乳児
早期発症の難治性てんかんと診断された患者のなかにも見つかっている。他によく見られる特徴として顔
貌異常(両眼解離、テント状の口)、手指・足趾の異常(末節骨の短縮、爪の欠損等)、難聴、その他の奇形
(肛門・直腸の異常、ヒルシュスプルング病、水腎症等)等がある。一部の患者では高 ALP 血症がみられる
ので、診断の良い指標となっている。末梢血顆粒球のフローサイトメトリー検査で GPI アンカー型タンパク
質である CD16 の発現低下があることで診断がされるが、診断確定するが、責任遺伝子の同定のために
はターゲットエクソームあるいは全エクソーム解析による遺伝子解析を必要とする。
4.治療法
IGD にみられるてんかんの原因の1つとして、神経細胞表面に発現する ALP の発現低下によりビタミン
B6 の脱リン酸化がおこらないため、細胞内に取り込めないことがあげられる。細胞内のビタミン B6 が欠乏
すると、神経細胞の興奮を押さえる GABA 合成が低下するので痙攣発作がおこる。リン酸化のないビタミン
B6(ピリドキシン)の投与がてんかん発作に有効な症例がある。その他にも有効な補充療法の開発にむけ
て研究が行われている。
5.予後
遺伝子異常による疾患で、発生初期からの発達異常を伴うので根本治療は今のところない。症状の程
度は軽度の知的障害等から、最重度は多臓器の奇形や難治性てんかん、重度の精神・運動発達の遅れを
呈して新生児・乳児期に死亡する。また胎内死亡の症例も報告されている。最重度の症例以外の多くは成
人期まで生存し、痙攣のコントロール等の対症療法を中心とする長期の療養を要する。

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