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資料1-2-17診断基準等のアップデート案(第49回指定難病検討委員会資料) (48 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25626.html |
出典情報 | 厚生科学審議会 疾病対策部会指定難病検討委員会(第49回 5/16)《厚生労働省》 |
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325 遺伝性自己炎症疾患
○ 概要
1.概要
遺伝性自己炎症疾患は、自然免疫系に関わる遺伝子異常を原因とし、生涯にわたり持続する炎症を特
徴とする疾患群である。ここでは、成人患者が確認されている疾病のうち、既に指定難病に指定されてい
る、クリオピリン関連周期熱症候群、TNF 受容体関連周期性症候群、ブラウ症候群、家族性地中海熱、高
IgD 症候群、中條・西村症候群、化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群を除いた、NLRC4異
常症、ADA2(Adenosine deaminase 2)欠損症、エカルディ・グティエール症候群(Aicardi-Goutières
Syndrome:AGS)、A20 ハプロ不全症を対象とする。
NLRC4異常症では IL-1βと IL-18 が過剰産生され、発熱、寒冷蕁麻疹、関節痛、乳児期発症腸炎、マク
ロファージ活性化症候群様症状など幅広い症状を呈する。ADA2欠損症では、主に中動脈に炎症が起こり、
結節性多発動脈炎に類似した多彩な症状を呈する。エカルディ・グティエール症候群は重度心身障害をき
たす早期発症型の脳症であり、頭蓋内石灰化病変と慢性的な髄液細胞数・髄液インターフェロン-α・髄液
ネオプテリンの増加を特徴とする。A20 ハプロ不全症はタンパク質 A20 の機能異常により、炎症性サイトカ
インである TNF-α、IL-6、IL-1β等が過剰産生され、反復性口腔内アフタ、発熱、関節痛、消化管潰瘍等の
ベーチェット病類似症状を若年で発症する。
2.原因
NLRC4異常症は NLRC4分子の機能獲得変異により発症する。NLRC4は自然免疫に関わるインフラマ
ソームの構成分子であるが、その機能獲得型変異によりカスパーゼ-1の恒常活性化が起こり、IL-1βと IL18 が過剰産生され炎症が惹起される。ADA2欠損症は ADA2分子をコードする CECR1 遺伝子変異により
発症する常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)疾患である。患者では血漿中 ADA2の濃度が低く、細胞外アデノ
シン濃度の慢性的な上昇が血管炎症を促進する可能性が推測されている。一方、ADA2には成長因子とし
ての作用もあり、出血性脳梗塞の発症には成長因子作用の障害による血管内皮の統合性の低下も影響し
ていると推測されている。エカルディ・グティエール症候群の責任遺伝子としては TREX1 、RNASEH2A 、
RNASEH2B、RNASEH2C、SAMHD1、ADAR、IFIH1 の7つが報告されている。いずれも核酸の代謝や細胞
質内の核酸認識に関与する遺伝子であり、I 型インターフェロンの過剰産生により炎症が持続する。A20 ハ
プロ不全症は TNFAIP3 遺伝子がコードする A20 の機能低下変異(ハプロ不全)により常染色体顕性遺伝
(優性遺伝)形式で発症する。A20 は TNF-αの細胞内シグナル伝達経路上に存在し、このシグナル伝達を
抑制的に制御している分子である。A20 ハプロ不全症においては TNFAIP3 遺伝子のヘテロ接合性変異に
より A20 の半量不全が生じ、TNF-αシグナル伝達の異常が起こり、種々の炎症性サイトカインが過剰産生
され炎症が惹起される。
3.症状
NLRC4異常症では、長期にわたって継続する周期熱、寒冷蕁麻疹、関節痛、乳児期発症腸炎、脾腫・血
球減少・凝固障害といったマクロファージ活性化症候群様兆候など、多彩な症状を呈する。ADA2欠損症で
は、繰り返す発熱、蔓状皮斑やレイノー症状等の皮膚症状、血管炎による麻痺や痺れなどの神経症状、眼
症状(中心静脈閉塞や視神経萎縮、第3脳神経麻痺など)、胃腸炎症状、筋肉痛や関節痛、高血圧、腎障
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○ 概要
1.概要
遺伝性自己炎症疾患は、自然免疫系に関わる遺伝子異常を原因とし、生涯にわたり持続する炎症を特
徴とする疾患群である。ここでは、成人患者が確認されている疾病のうち、既に指定難病に指定されてい
る、クリオピリン関連周期熱症候群、TNF 受容体関連周期性症候群、ブラウ症候群、家族性地中海熱、高
IgD 症候群、中條・西村症候群、化膿性無菌性関節炎・壊疽性膿皮症・アクネ症候群を除いた、NLRC4異
常症、ADA2(Adenosine deaminase 2)欠損症、エカルディ・グティエール症候群(Aicardi-Goutières
Syndrome:AGS)、A20 ハプロ不全症を対象とする。
NLRC4異常症では IL-1βと IL-18 が過剰産生され、発熱、寒冷蕁麻疹、関節痛、乳児期発症腸炎、マク
ロファージ活性化症候群様症状など幅広い症状を呈する。ADA2欠損症では、主に中動脈に炎症が起こり、
結節性多発動脈炎に類似した多彩な症状を呈する。エカルディ・グティエール症候群は重度心身障害をき
たす早期発症型の脳症であり、頭蓋内石灰化病変と慢性的な髄液細胞数・髄液インターフェロン-α・髄液
ネオプテリンの増加を特徴とする。A20 ハプロ不全症はタンパク質 A20 の機能異常により、炎症性サイトカ
インである TNF-α、IL-6、IL-1β等が過剰産生され、反復性口腔内アフタ、発熱、関節痛、消化管潰瘍等の
ベーチェット病類似症状を若年で発症する。
2.原因
NLRC4異常症は NLRC4分子の機能獲得変異により発症する。NLRC4は自然免疫に関わるインフラマ
ソームの構成分子であるが、その機能獲得型変異によりカスパーゼ-1の恒常活性化が起こり、IL-1βと IL18 が過剰産生され炎症が惹起される。ADA2欠損症は ADA2分子をコードする CECR1 遺伝子変異により
発症する常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)疾患である。患者では血漿中 ADA2の濃度が低く、細胞外アデノ
シン濃度の慢性的な上昇が血管炎症を促進する可能性が推測されている。一方、ADA2には成長因子とし
ての作用もあり、出血性脳梗塞の発症には成長因子作用の障害による血管内皮の統合性の低下も影響し
ていると推測されている。エカルディ・グティエール症候群の責任遺伝子としては TREX1 、RNASEH2A 、
RNASEH2B、RNASEH2C、SAMHD1、ADAR、IFIH1 の7つが報告されている。いずれも核酸の代謝や細胞
質内の核酸認識に関与する遺伝子であり、I 型インターフェロンの過剰産生により炎症が持続する。A20 ハ
プロ不全症は TNFAIP3 遺伝子がコードする A20 の機能低下変異(ハプロ不全)により常染色体顕性遺伝
(優性遺伝)形式で発症する。A20 は TNF-αの細胞内シグナル伝達経路上に存在し、このシグナル伝達を
抑制的に制御している分子である。A20 ハプロ不全症においては TNFAIP3 遺伝子のヘテロ接合性変異に
より A20 の半量不全が生じ、TNF-αシグナル伝達の異常が起こり、種々の炎症性サイトカインが過剰産生
され炎症が惹起される。
3.症状
NLRC4異常症では、長期にわたって継続する周期熱、寒冷蕁麻疹、関節痛、乳児期発症腸炎、脾腫・血
球減少・凝固障害といったマクロファージ活性化症候群様兆候など、多彩な症状を呈する。ADA2欠損症で
は、繰り返す発熱、蔓状皮斑やレイノー症状等の皮膚症状、血管炎による麻痺や痺れなどの神経症状、眼
症状(中心静脈閉塞や視神経萎縮、第3脳神経麻痺など)、胃腸炎症状、筋肉痛や関節痛、高血圧、腎障
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