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大腸がんファクトシート2024 (37 ページ)

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出典情報 大腸がん対策を推進するための「大腸がんファクトシート」公開(3/27)《国立がん研究センター》
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第4章

大腸がん検診

4.1 大腸がん検診の有効性評価

② 全大腸内視鏡検査の推奨グレード
北欧4か国では全大腸内視鏡1回実施群と通常診療群

件数が多くなるため、免疫法やS状結腸鏡による検診プロ

(無検診)の大腸がん死亡率を比較するRCTが実施されて

グラムよりも全大腸内視鏡のNNSは大きく、不利益が

いる(NordICC研究)。追跡期間10年の中間報告ではITT

大きい。この結果をもとに実施された利益と不利益の

(Intention-to-treat)解析(注2)において統計学的に

対比では「利益はあるが、証拠の信頼性は低く、不利益あ

有意な大腸がん死亡率減少効果は示されなかった。その

り」となり、推奨グレードCと判定された(表2) 。即ち、対策

原因として介入群の応諾率が42%と低かったことが影響

型検診としての実施は勧められない(表3)。

した可能性が挙げられていた6)。

今回の評価はあくまで大腸がん検診のスクリーニング

RCTの次に評価された観察研究ではほぼ一貫して有意

検査としての評価であり、大腸がん診断における全大腸

な死亡率減少効果が示されていた。しかし、観察研究は

内視鏡の性能を評価したものではない。全大腸内視鏡は

様々なバイアスの影響を受けやすい上に、特に全大腸内

大腸がん診断において最も精度が高い必須の検査で

視鏡の観察研究には診療と検診の区別が明確でないと

あり、他の検査で代用できるものではない。また、前がん

いう重大な問題があり、証拠の信頼性は低い。そこで、観察

病変である腺腫の予防的切除ができるという大きな利点

研究による評価を補うためにS状結腸鏡を参照基準と

もある。

した代替指標評価4)が実施された。近位病変の検出増加

しかし、検診のスクリーニング検査として評価を行う

と中間期がんが少ない点では全大腸内視鏡の優位性が

場合、侵襲性の問題から便潜血検査に比べて対象者の

示されたが、検診参加率が有意に劣るため、ITT解析に

受診率が低くなり、ITT解析で有意な死亡率減少効果を

よる大腸がん検出率はS状結腸鏡を上回らなかった。観察

示しにくいと考えられる。将来的には進行中のRCTの

研究と代替指標による評価をもとに全大腸内視鏡は

最終報告が公開された後、全大腸内視鏡の再評価が予定

「死亡率減少効果はあるが、証拠の信頼性が低い」と判断

されている。その間にがん検診目的の全大腸内視鏡に

された。さらに、プログラム全体で実施される内視鏡検査

よる偶発症全国調査や医療資源調査が期待される。

注2 :Intention-to-treat解析(ITT解析)とper-protocol解析(PP解析)
RCTでは無作為化して割付けられた介入群と対照群の間で交絡因子は均等である。この状態で解析を行うのが、ITT解析である。臨床試験
の場合は介入群に割付られた患者のほとんどが治療を受けるが、検診研究の場合、割付日と検診実施日の間にタイムラグが生じ、割付けら
れても検診を受けない人が多く発生する場合がある。特に全大腸内視鏡検査のように前処置を要する検査では、検査を受けない人が多い
ため、ITT解析では効果を過小評価する傾向にある。一方、検査を受けた人だけで比較を行うPP解析では、介入群と対照群の交絡因子の
均等性が欠如してしまっていることから研究の質は低下する。

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